ポール・ビグスビーが手掛けた名品マグナトーン マークⅤ ポール・ビグスビーが手掛けた名品マグナトーン マークⅤ

ポール・ビグスビーが手掛けた名品
マグナトーン マークⅤ

個性的な魅力で多くのギタリストたちを虜にする“ビザール・ギター”を、週イチで1本ずつ紹介していく連載、“週刊ビザール”。今週はアンプで有名なマグナトーンのギターを紹介したい。以前、この週ビザでタイフーンを紹介したが、今回はついにマグナトーン・ギターを代表する“マーク”・シリーズから、マークⅤをピックアップ! ポール・ビグスビーによる傑作をお届けしよう。

文=編集部 撮影=三島タカユキ 協力/ギター提供=伊藤あしゅら紅丸 デザイン=久米康大

Magnatone Mark Ⅴ

名工ポール・ビグスビーによる傑作

2013年の復刻以来、ジェフ・ベックの使用などでも知られるように、やはりアンプのイメージが強いマグナトーン。しかし、1950〜1960年代にかけて、エレクトリック・ギターも世に送り出してきた。今回紹介するモデルを含む“マーク”・シリーズは、名工ポール・ビグスビーが手掛けた、マグナトーンを代表するラインナップだろう。

ただ、今回の機種は、“ビザール”というよりは“レア・バード”。つまり、滅多に見ることができない名器ということだ。数々のラインが混在しているマグナトーン・ブランドゆえ、ビザールのカテゴリーに入るかもしれないが、マークⅣとⅤはタイトルどおり、ポール・ビグスビーの手による“逸品”である。

さて、ブランドの歴史はタイフーンの記事でも簡単に紹介したが、今回は改めてポール・ビグスビー参画にいたるまでの流れを見ていきたい。

マグナトーン・アンプの歴史は、前述記事でも書いたとおり1937年に始まる。初期はディッキーソン・ミュージカル・インストゥルメント・カンパニーとしてアンプやスティール・ギターを製造しており、1940年代にガストン・フェイター・ギター・スタジオに事業が譲渡された。しかし、この時点ではまだ“マグナトーン”というブランド名は生まれていない。

ガストン・フェイター時代は、他ブランドのアンプやギターのOEM生産も手がけており、それらの事業が1946年にアート・デュハメルにわたった。そして、デュハメルは社名を“マグナ・エレクトロニクス・カンパニー”と改め、アンプやギターなどの製品をオリジナル・ブランドとして“マグナトーン”と名付けたのである。

ギター・アンプとしてはフェンダーよりも老舗であるマグナトーンは、西海岸の音楽シーンを中心に、アーティストから愛されていた。ベイカーズフィールド界隈を始め、カントリー業界では多くのギタリストから支持されていたのである。ビグスビー・ギターの愛用で有名なグラディ・マーティンもそのひとりで、彼はマグナトーンのカタログにも登場していた。

そんなつながりがあってか、1955年頃にポール・ビグスビーを迎え入れ、ソリッド・ギター市場に参入することに。そして完成したのが“マーク”・シリーズだった。マークⅢなどのピックアップは、もろにビグスビー製らしい外観で、写真のマークVでもアルミ製エスカッションなどにその面影を感じることができる。

マークVは1956年頃に登場したモデルで、セミ・ホロウ・ボディのスルーネック構造。ポインテッド・ダブル・カッタウェイやピックガードの形状などは、ビグスビーがビリー・バード(カントリー・ギタリストでギブソン・バードランドの開発者のひとり)に作ったシグネチャー・モデルに近いと言えるだろう。

アルニコⅣのピックアップを2基搭載、1ボリューム1トーンというスタンダードな仕様だが、初期のモデルは3ウェイのピックアップ・セレクターがテレキャスター・スタイルのダカウェア製のため、写真の個体は少しあとのモデルだろう(1956〜1957年頃まではボディにジャーマン・カーブが施されていた)。

マグナトーン製のギターはもとより、このマーク・シリーズは生産数も少なく非常に貴重だ。市場で目にしたらチェックしておくことをオススメする。