オベーションの挑戦ブレッドウィナー 1251-6 オベーションの挑戦ブレッドウィナー 1251-6

オベーションの挑戦
ブレッドウィナー 1251-6

個性的な魅力で多くのギタリストたちを虜にする“ビザール・ギター”を、週イチで1本ずつ紹介していく連載、“週刊ビザール”。今回はラウンドバックの革新的なアコースティック・ギターでおなじみのオベーションが1970年代に生み出したブレッドウィナーをご紹介しましょう! オベーションらしい論理的なデザイン、スペックに痺れます!

文=編集部 撮影=三島タカユキ 協力/ギター提供=伊藤あしゅら紅丸 デザイン=久米康大

Breadwinner 1251-6

先進的なアクティブ・サーキットの採用!

オベーションといえば、あのグラスファイバーを使ったラウンド・バックのアコースティック・ギターを思い浮かべるだろう。1965年の設立後、すぐにあの印象的なギターをリリースしたのち、1968年からエレクトリック・ギターもラインナップに加わる。このブレッドウィナーは1972〜1982年に製造されたモデルだ。

まずはブレッドウィナーの解説に入る前に簡単なブランド・ヒストリーをおさらいしておこう。

1945年にチャールズ・カーマンが設立した航空機製造会社であるカーマン・コーポレーション(Kaman Corporation)。ギター愛好家であったカーマンは、その子会社としてオベーションを立ち上げた。

エンジニアである彼はまず、航空機製造で培った技術をギターへ応用することを考える。その結果、最も効率的な音の広がりを持ちながらフィードバックをコントロールできる放射半円形のボディ・バックを採用。その素材として、ヘリコプターのローター・ブレードとノーズコーンに使われていた技術を応用した、ガラス繊維強化プラスチックを選んだ。 竪琴 (たてごと)から取った名称=リラコード(Lyrachord)と名付けた。

そして1966年からコネチカット州ノース・ハートフォードで、初期モデルであるスタンダード・バラディアー(Standar Balladeer)=モデル1111の製造を始めた。

グラスファイバーの耐久性は評判も良く、ジョシュ・ホワイトのシグネチャー・ギター=フォルクローレやグレン・キャンベルのオリジナル・モデルを発売するなど、ブランドの知名度は高まっていき、1969年にはピエゾ素子を使ったプリアンプ内蔵の“エレクトリック・アコースティック・ギター”を発表。コンサートの大音量化に向けて、同社の先進性が認知されていった。そんな時期にエレクトリック・ソリッド・モデルの開発にも着手したのだ。

1972年に生まれたこのブレッドウィナーは、オベーションで初のソリッド・エレクトリック・ギター。オベーションのギター・ヘッドは“Axe=斧”をモチーフにしているが、ブレッドウィナーはボディ形状も斧がモチーフになっている。奇抜な形態でありながら、人間工学的にバランスが取れた絶妙のシェイプで一説にはスティーヴ・クラインが関わっていると言われている。

※ミュージシャンの機材をAxeと呼ぶので、発売当初のアメリカのPRではダブル・ミーニングになっていた。

モデル番号は1251で、カラー・バリエーションごとに“5=ブラック”、“6=ホワイト”、“7=タンジェリン”、“8=ブルー”という枝番が設定された。塗装(というかカバリング)は、オベーションの代名詞=Lyrachordが施されており、樹脂ボディに見える。同機には、兄弟モデルのDeaconという同じシェイプのモデルがあったが、そちらは普通の塗装が施されたマホガニー・ボディだった。

さらに、24フレット仕様で9V電池を2個使用するプリアンプを搭載した、先進的なモデルだった(量産型初のアクティブ回路内蔵型と言われている)。コントロールの構成は、1ボリューム&1トーン、1弦側のトグル・スイッチが3ウェイ・ピックアップ・セレクター、6弦側がミッド・レンジ・スイッチ(=プリアンプのオン/オフ)。ただ、ピックアップ・セレクターは一般とは異なり、フロント側から、“フロント”、“リア”、“ミックス(アウト・オブ・フェイズ)”というちょっと慣れが必要な順番だ。

ピックアップとコントロール部。

ピックアップは広いレンジ感を実現するために4年の研究期間を費やしたシングルコイル。フェイズ・サウンドで音量感が薄くなってしまうのを防ぐため、前述のFETを用いたプリアンプをともに開発したのだだが、1975年頃にはオリジナルのミニ・ハムバッカー仕様の個体が登場する。写真のモデルは1972〜1975年頃の“アーリー・タイプ”と呼ばれるもので、マニア間では人気が高い。

ブリッジはやはり先進的なエンジニアリング・プラスチック製(おそらく歯車などに使用されるポリアセタール)だが、このせいでサスティーンが犠牲になってしまっているのはモヤモヤ・ポイントか?

その未来的ルックスもあってか、マーク・ボラン、XTC、ABBA、トム・モレロ、レニー・クラヴィッツなどがMVなどで持っていることで、その姿を見た人も多いかも知れない。

残念ながら1982年には本モデルは製造中止となり、80年代でほかのエレクトリック・ソリッド・ギターのラインナップも消えてしまう。(この機種も、現在EASTWOODが復刻モデルを出しているが)ビザールなギターがより愛されるようになった現代に、ぜひまたこのようなチャレンジングなモデルを、当時の仕様で復刻してほしいものである。