花弁シェイプ!?ヴィクトリア サーフ・ライダー 花弁シェイプ!?ヴィクトリア サーフ・ライダー

花弁シェイプ!?
ヴィクトリア サーフ・ライダー

個性的な魅力で多くのギタリストたちを虜にする“ビザール・ギター”を、週イチで1本ずつ紹介していく連載、“週刊ビザール”。今週はヴィクトリアというブランドのサーフ・ライダー。チューリップのようなシェイプが可愛らしいモデルで、ピックアップ・レイアウトも独特な1本。ところで、このブランドの名前は聞いたことがあるだろうか?

文=編集部 撮影=三島タカユキ 協力/ギター提供=伊藤あしゅら紅丸 デザイン=久米康大

Victoria Surf Rider

世界的需要を得た全音の輸出向けギター

これは“サーフ・ライダー”というモデルで、手がけたのは全音ギター製作所。写真の個体にはないが、ヘッドには“VICTORIA”という四角いロゴ・プレートが付けられた。

全音がエレキ・ギターの販売を始めたのが1962年のこと。そこまでの経緯はZES-120の記事をご参照いただきたい。そして1967年には同社の代表ブランドである“モラレス”が誕生するのだが、このモデルはその間の1964〜1966年頃に生産されていた。

エレキ・ブーム中の国内工房は、その作りの良さと高いコスト・パフォーマンスで海外へも輸出されたことは周知のとおりだろう。全音もその例に漏れず、世界各国に数多くのギターを輸出していた。1965年に栃木県足利市の教育委員会の働きかけで始まった“エレキ禁止令”によって国内需要がかげりを見せてもギターの輸出は変わらず好調だったほどである。

全音が輸出向けブランドとして使っていた名前には“SHOGUN”や“TONOSAMA”といったものがあり、この“VICTORIA”もそのうちのひとつだった。

デザイン的には、チューリップ・シェイプでありながらボディ・エンド部はフェンダーのスウィンガーのような逆Rのえぐりが同居しており、かなり微妙なラインである。また、3分割されたピックガードはそれぞれ異なるマテリアルで、ロータリー・スイッチ部分はゴールド・サテン仕上げの薄い金属板、ピックアップ・マウント部は3プライのアクリル、ボリューム&トーン・ノブ部はグヤトーンなどに見られる立体プレスされたメタル、というなかなか不可解な仕様だ。

ピックアップ・セレクター・スイッチは、 OFF/LOW(フロントのみ)/MIX(すべてのピックアップ)/HIGH(センター+リア)の4ウェイ・スタイル。また、ミドルPUは逆位相で、ブリッジPUと合わせてハムバッカーになるよう一緒に配線されている。(つまり実質的には2PU)。これにプラスしてSOLOおよびRTHM(リズム)スイッチがあるので、仕様的には6通りのバリエーションが得られる。ピックアップは、かなりマイクロフォニックを拾うようで、高域がリンギングしているような独特な音質。さらにハムバッカーとはいえ、コイル間隔が離れているので、こちらも独特な音である。

デザイン、ハードウェア、仕様ともに独自のものを狙い、“攻めた”モデルがこのサーフ・ライダーだった。

現在エアラインなどを所有しているEASTWOOD GUITARSがカスタム・モデルとしてこのサーフ・ライダーをリイシューしているため、そちらで知っている人も多いかもしれないが、そのルーツは全音であったのだ。