アコーディオンのエッセンスを盛り込んだ日本生まれのノーマ・ギター|週刊ビザール・ギター アコーディオンのエッセンスを盛り込んだ日本生まれのノーマ・ギター|週刊ビザール・ギター

アコーディオンのエッセンスを盛り込んだ
日本生まれのノーマ・ギター|週刊ビザール・ギター

個性的な魅力で多くのギタリストたちを虜にする“ビザール・ギター”を、週イチで1本ずつ紹介していく連載、“週刊ビザール”。今回はノーマというアメリカのブランドが販売していた1ピックアップのエレキ・ギターをご紹介しよう。情報がほぼないためモデル名などは不明だが、製作を担っていたのは日本のトンボ楽器であることは間違いない。ブランド・オーナーであるストラム&ドラム、トンボ楽器、そして本器も含め、その歴史を紐解くのには“アコーディオン”がひとつの鍵となってくる。

文=編集部 撮影=三島タカユキ 協力/ギター提供=伊藤あしゅら紅丸 デザイン=久米康大

Norma/Tombo 1Pickup

Norma/Tombo/1Pickup

パーロイド・セル貼りの可愛らしいルックス!

本器はストラム&ドラム(Strum and Drum)という楽器の卸売販売会社が1960年代半ばに使っていたノーマ(Norma)というブランド名を冠したものだが、モデル名などの詳細は不明だ。

このストラム&ドラムはドン・ノーブル社(Don Noble And Co,)という会社が母体となっており、イリノイ州シカゴを拠点に世界中からギターを輸入していた。まずはその歴史から紹介しよう。

ドン・ノーブル社を設立したドン・E・ノーブルはシカゴでは有名なアコーディオン奏者であった。そのため、当時アコーディオンを輸入/販売していたイタリア系移民の業者とは仲が良く、その販売ルートについて詳しくなっていく。そして1930年代末から欧州の(おもにイタリアの)楽器を輸入販売に着手し始め、1950年代にはそれを本格化、ドン・ノーブル社を立ち上げることとなる。

1950年代にはヴァンドレ製のギターなどに“ノーブル”という自社ブランドを冠し販売していた。この頃にドンは、実業家のノーマン・サックハイムと知り合い、1960年代初頭には社名がストラム&ドラムに変更される。そして同社は、EKOやアバンティ、ヴァンドレ、ゴヤなど、イタリアのブランドを含むさまざまなギターを輸入するようになっていった。

1965年頃になると、同社は新たなオリジナル・ブランドとして“ノーマ”を生み出し、その名のもとに各種楽器を発売する。このブランド名はサックハイムのファースト・ネーム=ノーマンを女性化したものだが、マリリン・モンローの本名(ノーマ・ジーン)にインスパイアされた部分もあるかもしれない。

初期のノーマのギターはほとんどの場合、アコーディオンやハーモニカの製造で知られる日本のトンボ楽器が製造しており、外装にアコーディオンで用いられるスパークルド・ラメ塗装やパーロイド・セル貼りを用いているのが特徴になっている。

写真の個体もトンボ楽器が手がけたもので、パーロイド・セル貼りが施されており、コンパクトなボディと相まって非常に可愛らしいルックスだ。ハードウェアはテスコのゴールドフォイル・スタイル・ピックアップ、EKOスタイルのアームが付いており、汎用パーツを採用していたと思われる。1ピックアップ仕様だが、3PUのセンター位置に取り付けられており、ハイに特徴がある絶妙なトーンを奏でてくれる。

トンボ・ブランドでもほぼ同じ仕様のモデルが確認できるので、ピックガードのブランド名を差し替えて出荷していたのだろう。

トンボ楽器は、当時のエレキブームを反映して、国内でも自社ブランドでエレキ・ギターを発売していた。世界初のソリッド・ウクレレの“ウクレット”(なんとビルト・イン・アンプ・ケース!!)を発表するなど、かなり攻めた戦略を展開していたが、ブームの終焉とともにギター類の製造からは撤退してしまう。現在はリード楽器の分野で、トップ・ブランドであるのは周知のとおりだろう。

一方のノーマは、ビジネスが大きくなるにつれて、後期のモデルは長野や名古屋のメーカーも製造するようになる。また、リバティ(Liberty)やプレスティッジ(Prestige)などの異なるブランドに同じモデル(ノーマ・ギターに使われていた“N”ポジション・マークのまま)があるので、これらのブランドも同社が保有していたのかもしれない。

1969年に経営が行き詰っていたナショナル・ギターのブランド名も買収する。しかしその直後、ノーマン・サックハイムはモスクワへの旅行中に飛行機墜落事故でこの世を去ってしまう。それをきっかけに、会社は1972年頃に消滅したようだ。