通常のライブでは、超巨大なペダルボードとアンプ3台(ドライ・サウンド用のDeluxe Reverb、ウェット・サウンド用のPrinceton Reverb×2台)という大がかりな機材を使用する鈴木茂だが、ローディが同行しない地方ライブの際に活躍するのが“旅用ボード”と呼ぶミニ・ペダルボードである。しかし、ミニと言えども一切の妥協はナシ。ボードの全貌を解説していこう。
取材・文=小林弘昂 機材写真=小原啓樹
Pedalboard
ステレオ・アウト前提の“旅用”ボード
必要最低限のペダルを詰め込んだという鈴木茂のミニ・ペダルボード。基本的に飛行機での移動の際にこのボードとギターを持ち運び、アンプは現地で2台レンタルするそうで、JC-120とTwin Reverbの組み合わせになることが多いそうだ。ギターからの接続順は①〜⑦の番号どおり。⑤PitchFactorからステレオ出力になり、⑥VP JRを通過して⑦TIMELINEから2台のアンプへ分岐。
①ROSS Compressorは常に踏みっぱなしで、歪ませる際やサステインを伸ばす際は②ROSS Compressorもオンにする。②のOUTPUTツマミは12時が基本だが、写真のように3時方向にまで上げることもあるそうだ。“ディストーションやオーバードライブなんかを使うと、強く弾いても、弱く弾いても、同じように歪んじゃう。でも、コンプやアンプ本体で歪ませると、弱く弾いた時にはクリーンな音が出るし、強く弾けばクランチになる。その変化がおもしろいんですよね”とのこと。
③ODー1はハイフンが“-(半角)”ではなく“ー(全角)”表記の初期型。ODー1は70年代後半から使用しており、これまでに4〜5台ほど手に入れたという。このボードでは“完全に歪ませる用”だそうで、クランチを担当。歪みの段階としては、【1】①ROSS Compressorのみ、【2】①ROSS Compressorと②ROSS Compressorの組み合わせ、【3】①ROSS Compressorと③ODー1の組み合わせ、そして【4】①ROSS Compressorと②ROSS Compressorと③ODー1の組み合わせ、の4段階となる。
⑤PitchFactorはMicroPitchモードを使用。本人曰く“僕はあんまりコーラスが好きじゃなくて。コーラスって、うねりが強すぎちゃうんですよ。だからコーラスの代わりにこれで±7セントくらいの揺れ方にして、ちょっとダブル・トラッキング的な音にするんです”とのこと。
⑥VP JRはステレオ・イン/アウト仕様のもので、F-Sugarにてモディファイが施されている。モディファイ内容はボリューム・ポットの交換で、MONO側のポットはCLAROSTAT(クラロスタット)へ。STEREO側は国産のものへ変えているそう。“このボリューム・ペダルはJRでサイズが小さいから、大きなボリューム・ポットが使えないんですよ。だからSTEREO側には小さくて薄い国産のポットを使いました。11Kくらいの抵抗値ですね”と語ってくれた。
最後の⑦TIMELINEは、おもにDIGITALモードで使用。ディレイ音にモジュレーションをかけられるところが気に入っているそうだ。
ボードにはカポタストやスライド・バーを始め、ドライバー、イヤホン、そして弦(Ernie Ball製Hybrid Slinky #2222/.009〜.046)も入っていた。