エムドゥ・モクターの使用機材は? エムドゥ・モクターの使用機材は?

エムドゥ・モクターの使用機材は?

エムドゥ・モクターのサウンドはどのような機材から、生み出されているのか。本人が送ってくれた写真、YouTubeなどにアップされている動画などから、使用機材を探っていこう。

文=福崎敬太 写真=本人提供

先に公開したインタビュー記事で語っているとおり、彼はスタジオに籠ってのレコーディング作業などはしない。ツアー中にライブで受けたインスピレーションを表現しているということで、ステージ機材が『Afrique Victime』で使用したものと考えて基本的には問題ないだろう。ここでは、本人提供の写真や公開されている動画などから愛用機材を紹介していきたい。

まずは本人が送ってくれた機材写真を掲載しよう。

Mdou’s Pedalboard

まずはペダルボード。接続順は写真右から順に、TCエレクトロニック/polytune2(チューナー)→BOSS/PH-3(フェイザー)→アースクエイカーデバイセス/Acapulco Gold(ディストーション)→チャンピオン・レシー・エフェクツ(Champion Leccy Effects)/Rocktar Fuzz(ファズ)→BOSS/DD-6(ディレイ)と進み、ステレオで出力される。

Rocktar Fuzzはエムドゥ・モクター自身が開発に携わったオリジナル・モデルだ。普段はニューヨークで活動する、バンドのベーシスト/プロデューサーであるマイキー・コルトンが、エムドゥのために親交のあるフィラデルフィアのハンドメイド・ブランド=Champion Leccy Effectsに声をかけ、共に開発を進めた。ヴァン・ヘイレンにインスパイアされたサウンドで、シンプルなコントロールが魅力とのこと。

ディレイの設定は固定用テープをはずした写真を送ってくれた。300msモードで、ディレイ・タイムは1時、フィードバックは10時、エフェクト・レベルは11時というセッティング。

Roland/JC-120

エムドゥはメイン・アンプとして、ローランドJC-120を2台使い。前述のDD-6から信号を分岐して振り分け、それぞれチャンネル2のHIインプットに入力する。DD-6のインプットはA側に入力しているので、ディレイ使用時にはパンニング効果が得られるようになっている。

2台のセッティングはそれぞれ微妙に異なっており、
ボリューム/トレブル/ミドル/ベース/ディストーション/エフェクト、の順に
左Ch.=12時/1時/9時半/フル/ゼロ/コーラス
右Ch.=12時/12時/12時/ゼロ/9時/コーラス

という設定。

また、ライブによっては片方(おもに右Ch.側)を、フェンダーのDeluxe ReverbやMustang IVなどにしている時もある。

なお、記事上部のメイン画像で本機の右側に写っているフェンダーのツイン・リバーブは、もう1人のギタリスト=アモウド・マダサネが使用しているもの。

ギターは何を使っている?

ギターの写真を入手することはできなかったが、基本的にはレフティ仕様のフェンダー・ストラトキャスターが彼の愛器である。考察に入る前に、本人の使用ギターに関するコメントを掲載しておこう。

俺が持っているのは、フェンダーのストラトキャスターと、正直言ってブランドがわからないアコースティックギター。

さて、このように情報はほぼゼロ、と言っても良いのだが、諦めずに調べていこう。

まずは、ブランドがわからないアコギについて。本特集のインタビュー記事に掲載した画像で持っている1本は、フランスの楽器店=Woodbrassのプライベート・ブランドであるバード・インストゥルメント(Bird Instruments)のDG1CEというモデル。話題となった米NPRの『Tiny Desk Concert』でも使っているので、観たことのある人も多いかと思う。

エクストリームのEQ7545プリアンプを搭載したドレッドノート・シェイプのエレアコで、スプルース・トップにアガチス・サイド&バックという材構成。エムドゥは右利き用のモデルを反転させて使っている。

そして、映画『Akounak Tedalat Taha Tazoughai』の1シーンでもアコースティック・ギターが登場するが、こちらは詳細不明。

映画で使用しているエレキ・ギターとしては、黒いフェンダー・ストラトキャスターがある。本特集の奏法分析記事で使用した以下の写真でも、このギターが確認できる。

これは彼を見出した米レーベル=サヘル・サウンズのクリストファー・カークリーが贈った1本だろう。動画や写真を拡大してみると、ヘッド周りの仕様から2000年代のメキシコ製モデルだとわかった。改造点の有無などは不明だ。

そして現在のメイン・ギターとして活躍するのが、白いストラトキャスター。こちらは2018年頃から使用しているようで、当時の新品らしい状態やボディの形状から推測するに、American Original ’50s Stratocasterでほぼ間違いないだろう。2019年になるとフロント・ピックアップが交換されるが、詳細はわからずじまいだった。そのピックアップは以下の最新アーティスト写真で確認されたし。

そして最後に、もう1本。記念すべき初作品である『Anar』のジャケット写真で抱えている1本もチェックしておきたい。画質が悪くて断定はできないが、フランスのLAGギターズがラインナップするArkane A66あたりがヘッド形状などを考えると近しいモデルに見える。こちらは引き続きリサーチを進めていこう。

作品データ

『アフリク・ヴィクティム』
エムドゥ・モクター

Beat Records/Matador Records/OLE1614CDJP/2021年5月21日リリース

―Track List―

01. Chismiten
02. Taliat
03. Ya Habibti
04. Tala Tannam
05. Untitled
06. Asdikte Akal
07. Layla
08. Afrique Victime
09. Bismilahi Atagah
+日本盤ボーナス・トラック

―Guitarists―

Mdou Moctar、Ahmoudou Madassane