代理店業務とリペア・ショップを兼ね、また巷で話題の自動ギター・スキャン調整機“PLEK”を取り扱っている数少ない東京の工房、スリーク・エリート。ベーシスト界隈では数多くのハイエンド・ブランドを輸入する代理店として有名だが、GM読者にはまだよく知らない人も多いだろう。今回は代表の広瀬創へのインタビューを交え、スリーク・エリートという存在をちょっと深掘りしてみた。
取材・文:関口真一郎 撮影:小原啓樹
※本記事はギター・マガジン2022年3月号から一部抜粋/再編集したものです。
INTRODUCTION
スリーク・エリートを知る4つのトピック
INTERVIEW:広瀬創
〜世界の良質な楽器を手の届きやすい適正な価格帯で提供したい。

優れた楽器を、
ベスト・コンディションで。
まずはスリーク・エリート設立の経緯から聞かせて下さい。
設立は1999年です。それまでベーシストとして活動していたんですが、ベース・ブランドのKen Smithに興味を持って、その輸入代理店を始めることになったのがきっかけですね。当時、Ken Smithの国内販売価格はかなり高額で、なかなか手の届きづらい楽器だったんですが、なるべく中間手数料を抑えながら、そうした優れた楽器をベスト・コンディションで日本の市場に送り出したいという思いから会社を立ち上げました。
現在のおもな事業内容というと?
輸入代理店業務とリペア、それと国内におけるPLEKの管理ですね。現在では修理業務の比重が高まっていますが、当初、リペアは外部のリペアマンに依頼していたんです。しかし、スケジュールがコントロールできないこともあって自社で行なうようになりました。ずっとベースの修理が中心でしたが、今ではギターとベースが半々くらいになっていますね。アコースティック・ギターの依頼も多いです。

スリーク・エリートは国内では早い段階でPLEKを導入したことで知られ、現在では国内のPLEKにおける総本山的な位置づけになっていますが、もともとPLEKを導入したいきさつは?
PLEKを活用すると、メーカー側でどのような調整を行なっているかが、より正確につかめるんですね。どんなに質の高い楽器でも自然材料で製作されている以上、どうしても環境に応じて材は動きますので、こちらに届いた段階でメーカー基準に照らし合わせた修正をしっかりと行なった上で楽器店に納品したいという思いがありました。そうしたひと手間を加えることで、輸入代理店としての存在意義が高まると思いましたし、ユーザーとメーカーとの距離を近づけることができるんじゃないかと。それに弾き心地の好みというものは、弾き手によって様々ですよね。しかしPLEKを使えば、その時点での楽器の状態をはっきりと数字やグラフに表わすことができるんです。それを参照しながらユーザーの要望に合わせた事細かな対応ができますし、非常に客観的でフラットな見地からのリペア提案も行なえるようになりました。
現在、多く持ち込まれるリペア・オーダーは?
リフレットですね。フレットのすり合わせではなく、なぜリフレットが必要なのかという根拠がPLEKではっきりと示せていることも大きいと思います。事前にシミュレーションや作業結果を数字やグラフでお見せできますので、現状や仕上がりについて納得されたうえでご依頼いただけますし、こちらも安心なんです。中にはもとの弾き心地に戻したいという方もいらっしゃいますが、逐一データを残していますので、そうしたことも可能です。
全国からリペア依頼が殺到しているそうですが、工房内にはリペア待ちの楽器が溢れていますね。
おかげさまでリペアの件数は年々増えています。最近ではコロナ禍ということもあって、この機会にメインテナンスに出しておこうという方も多いように感じますね。このように依頼が増えるのは大変嬉しいんですが、何よりもありがたいのは、そうした様々な楽器のデータが貴重なアーカイブとして残っていくことです。数をこなせばこなすほど、メーカーごとの考え方やコンセプトの違いがわかってきますし、そうして得られた知識や経験、データを生かしながら、今後のお客様に対してより質の高いリペア提案をすることができる。それもPLEKの強みの1つですね。
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自分だけの音や楽器を求めている熱心なユーザーに向けて、真に良質な製品を取り扱っていきたいというスリーク・エリート。ここでは本誌読者にオススメしたい注目ブランドの中から3モデルを厳選、広瀬に紹介してもらった。
広瀬:まずはMayones(メイワンズ)ですね。1982年に創業したポーランドの楽器メーカーで、当社では2010年から輸入代理を始めました。こちらはAquilaの2ハム・モデルですね。Aquilaはスタイリッシュなデザインが特徴で、基本仕様はSSHレイアウトだったんですが、2ハムの需要もあるのでは? と先方と話をする中で、2021年に新しく登場したモデルです。
Mayones/Aquila Elite S

続いて紹介したいのは、ロシアのLepsky。まだ取り扱いを始めて2年ほどだ。
広瀬:日本ではあまり知られていないと思いますが、Lepskyはロシアの新興ブランドです。こちらはそのGravityというモデル。作りの精度が非常に高く、取引先の楽器店の方もその精度の高さには驚いていましたね。ピックアップはロシア製のARB。ブリッジはサドルが樹脂素材のSchaller Hannesで、弦はボディ裏通しになっています。最近ではロシアの新興ブランドが伸びてきていますね。
Lepsky/Gravity 6

また、上記ブランドとは一風異なったネオ・ビザールなギターも取り扱っている。
広瀬:Reverendはアメリカのギター・ブランドで、取り扱い始めて4〜5年です。こちらはChargerというモデルで、ネオ・ビザール風のユニークなスタイルが特徴ですね。ピックアップ・セレクター側のノブはボリュームとトーンで、ボディの低音弦側に付いているノブはベース・コンターという、もう1つのトーン・コントール。より幅広いサウンド・バリエーションが得られるようになっています。ルックス的にもそうですが、グランジやロック向きのサウンド・キャラクターですね。
Reverend/Charger HB

スリーク・エリート取り扱いブランド一覧
- Alembic
- Alleva-Coppolo
- Bag End
- Babicz
- Benavente
- Brubaker
- Celinder
- Citron
- D’Alegria
- Daniel Fernandez Luthier
- Dingwall
- F Bass
- Hipshot Products
- Häussel Pickups
- Ken Smith
- Ken Smith Design Brooklyn
- Kent Armstrong
- Knooren
- KR Guitars
- Laurus
- Mayones Basses
- Mayones Guitars
- Meridian Guitars
- Miura guitars
- Moody Leather Straps
- Noll Electronic
- Nordstrand Guitars
- Reverend
- R.Cocco Senior Handmade Strings
- TecAmp of Germany
- THG Knobs
- Veillette Guitars
- Villex Pickup
- Zakrzewski
製品やサービスに関する問い合わせは、スリーク・エリートまで。
TEL:03-6383-2968
メール:sleekelite@muf.biglobe.ne.jp
公式HP:https://sleekelite.com

ギター・マガジン2022年3月号
『ギタリスト 布袋寅泰のすべて』
本記事はギター・マガジン2022年3月号から一部抜粋/再編集したものです。特集は『ギタリスト 布袋寅泰のすべて』。昨年デビュー40周年、そして今年2月1日に60歳を迎え、新作『Still Dreamin’』をリリースした布袋寅泰を、140ページにわたる大ボリュームで特集しました! 本記事で紹介した1本を始め、貴重なゼマイティス・コレクションなど、愛器25本を紹介した「HOTEI’S 25 GUITARS」は必見!