フレディ・ロビンソンが愛用したのは、同じくジャズファンク・ギタリストであるブーガルー・ジョー・ジョーンズも手にしていた、バーニー・ケッセルのシグネチャーだった。
文=久保木靖
枯れた味わいと無骨さを演出したギブソン・バーニー・ケッセル
マイナー・ペンタトニックを基軸にブーガルー・ジョー・ジョーンズよろしく畳みかけたり、チョーキングを多用した正統派ブルース・ギターを泥臭くくり出したり、オクターブ奏法やスウィープ奏法を織り交ぜたジャズ・プレイをキメたりといった多面を持つフレディ・ロビンソン。
ほかのジャズファンク〜ソウル系ギタリスト同様、そんな彼が愛用していたのもギブソンの箱物だ。
ただし、その多くが手にしていたSuper 400CESやL-5CESとは異なり、フレディはややマニアックなバーニー・ケッセル・モデル一本槍というのが興味深い。1st作『The Coming Atlantis』(1969年)の表ジャケと4th作『Off The Cuff』(1973年)の裏ジャケで確認できるだけでなく、後年の『The Real Thing At Las』(1994年)でも手にしているとう信奉っぷり。
バーニー・ケッセルはその名のとおり、ジャズ・ギタリストのバーニー・ケッセルのシグネチャー・モデルで、RegularとCustomという2つのラインがある。ともに17インチ・ボディ幅で、L-5などより薄い3インチ・ボディ厚の合板ボディ。そして25.5インチ・スケール、ダブル・カッタウェイ、ハムバッカー2基搭載などの基本スペックを持つ。
違いはヘッド・インレイとポジション・マークで、Regularがクラウン/ダブル・パラレログラムであるのに対し、Customはミュージカル・ノート(音符)/蝶ネクタイ型。また、Regularがニッケルのプレート・パーツを使っているのに対し、Customはゴールドということ。フレディが後生大事に使い続けたのは後者Customのほうだ。“Gibson”ロゴがやや細く、トラスロッド・カバーの縁も細いので、1960年代後半の個体と思われる。
最大の特徴であるダブル・カッタウェイは、握り込んだ親指で低音弦を押弦するコード・フォーム(ハイ・ポジション)のためにある。そういった利点のほか、ブルース界の大先輩T-ボーン・ウォーカーや、ジャズファンク路線で先行していたブーガルー・ジョー・ジョーンズらが同モデルを手にしていたことが影響した可能性もあるかもしれない(この2人はともにRegularを使用)。
音色はL-5とES-175の中間くらいの少し枯れた感じで、これがフレディのイナタくもソウルフルな表現にマッチ。コード・カッティングでは、ストラトキャスターでのそれのようなシャープさはなく、ジャズ・ギタリストがコンピングする時のサウンドのままザギザギと刻んでしまう。その無骨さがたまらない!
ちなみにこのバーニー・ケッセル・モデルは、開発に関わった当のバーニー・ケッセルがほとんど使わなかったといういわくつき。また、ボディが似た形状のTrini Lopez Custom Deluxeというのもあるが、ヘッド形状などこちらは別物。
フレディはそのほか、2nd作『Hot Fun In The Summertime』(1970年)のジャケットではフラットトップのアコースティク・ギターを手にしている。ヘッドを見ると、いわゆるフォーク・ギターでなく、クラシック・ギターのように見えるが詳細は不明。撮影のためだけに手にしたものかもしれない。ちなみに、同作では曲によってストラトっぽい響きも聴こえてくる。
3rd作『At The Drive-In』(1972年)のタイトル・チューンでは、自身のブルース・ハープ(多重録音)とともにスティール弦アコースティックでシカゴ・テイストのブルースを披露している。
また、コンピ『Bluesology』(1999年)のCDレーベル部分には、ギブソンES-125とおぼしきエレクトリック・アーチトップを手にする若き日のフレディの勇姿が。同モデルは何度かスペックのマイナー・チェンジ経つつも、ギブソンのアーチトップの廉価シリーズとして常に人気を博していたものだ。
ギター・マガジン2017年3月号
『進撃のジャズファンク』
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