Gear|ビリー・バトラーの愛器 |Gibson Super 400C & L-5S Gear|ビリー・バトラーの愛器 |Gibson Super 400C & L-5S

Gear|ビリー・バトラーの愛器 |Gibson Super 400C & L-5S

濃厚なR&B〜ファンキーなテイストを持ちながらも、その根底にはスウィング・ジャズがあるビリー・バトラー。セッション・ミュージシャンとしてのキャリアも長く、そのプレイ・スタイルはまさに“ヴァーサタイル”。それゆえ、溢れ出るインスピレーションを開花させるべくさまざまな機材を導入していたが、ここではメインである2本のギブソン・ギターを中心に見ていこう。

文:久保木靖

ヴァーサタイルなプレイを支えた対象的な2本

 濃厚なR&B〜ファンキーなテイストを持ちながらも、その根底にはスウィング・ジャズがあるビリー・バトラー。セッション・ミュージシャンとしてのキャリアも長く、そのプレイ・スタイルはまさに“ヴァーサタイル”。それゆえ、溢れ出るインスピレーションを開花させるべくさまざまな機材を導入していたが、ここではメインのギター2本を中心に見ていこう。

 まず、バトラーがリーダー作デビューした頃は、ジャズファンク・ギタリスト御用達とも言えるギブソンの箱物、Super 400の使用が見て取れる。とは言え、『Yesterday, Today & Tomorrow』(1970年)のジャケ写や当時のほかの写真から、エレクトリック・モデルのSuper 400CESではなく、アコースティック・モデルのSuper 400Cにディアルモンド製フローティング・ピックアップRhythm Chief 1100を装着してエレクトリック化したものと確認できる。

アコースティック・モデルのギブソンSuper 400C。ピックアップは搭載されていない。
Studio still life of a 1939 Gibson Super 400C guitar, photographed in the United Kingdom. (Photo by Nigel Osbourne/Redferns)
『Yesterday, Today & Tomorrow』のジャケット写真。手にするギターは前述のSuper 400Cだが、フロントに白いピックアップが増設されているのがわかる。

 1934年に登場したSuper 400は、“キング・オブ・ジャズ・ギター”とも称されるギブソン製アーチトップ・ギターの最上級品で、音量を稼ぐ目的で作られた18インチという大きなボディ・サイズが特徴(当時はまだエレクトリック・ギターの発明前)。スプリット・ブロック型ポジション・マーク、ダイアモンド・スプリットのヘッド・インレイ、ネックエンド部のとんがりなどの外形上の特徴を持つ。

 バトラーが手にしているカッタウェイ付きモデルは1939年の登場だが、おそらく「Honky Tonk」の印税がたんまり入った1950年代後半〜1960年代前半にかけて入手したものであろう。

 ちなみに、Super 400C入手前の古い写真ではエピフォンのノン・カッタウェイ・モデルを手にしており、そちらにはディアルモンド製FHCとおぼしきピックアップが装着されている。このブランドのピックアップ・システムに馴染んでいたことが、アコースティック・モデルのSuper 400Cの購入へとつながったのかもしれない。

 そしてもう1本、バトラーはなかなかレアな逸品を愛用していた。それは、『Guitar Odyssey』(1974年)や『Don’t Be That Way』(1976年)のジャケ写で見ることのできるギブソンL-5Sだ。銘器L-5のソリッド版として1972年に登場したモデルで、シングル・カッタウェイの3プライ・メイプル・ソリッド・ボディ、5ピース・メイプル・ネックといった基本構造にブロック・インレイ付きのエボニー指板、ホロウ・ボディのL-5同様のテイルピースが採用されている。

『Guitar Odyssey』のジャケ。左がバトラーで、手にするのはギブソンL-5S。
『Don’t Be That Way』のジャケ。こちらも同じくギブソン L-5S。

 バトラーのものはローインピーダンスの大型ピックアップを搭載したチェリー・サンバーストの初期モデル。オルガン奏者との演奏も多かったバトラーがハウリングに悩まされていたであろうことは容易に想像がつくし、そう考えれば、箱物から一転ソリッドを手にしたのも頷ける。

 プロトタイプと思われるブロンド・フィニッシュのモデルを手にしている写真もあるため、もしかしたら、この頃にはエンドース契約があったのかもしれない。ちなみに、L-5Sはパット・マルティーノやキース・リチャーズが手にしたことでも知られている。

 そのほか、ナイロン弦やスチール弦のアコースティック・ギターの使用もあるが、残念ながらモデルは特定できず。また、ベース・ギター(ギターの1オクターブ下の6弦楽器)の活用は特筆すべきことだ。バトラーが使ったのは、おそらく1961年に発表されたフェンダー製Bass VI。バップ・フレーズを弾くなど、この楽器をギター的に使った演奏として、バトラー以外ではウェス・モンゴメリーの『Movin’ Along』が知られている。

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