次世代のスライド・マスターとして注目を集めるジョーイ・ランドレス。アメリカーナを主軸としたトラディショナルなサウンドを作る彼だが、無類の機材フリークでもある。彼の自慢のアンプ&エフェクター・コレクションを見ていこう。
文=福崎敬太 写真=本人提供
Joey’s Amplifiers
レコーディング時のファースト・チョイスで、メイン・アンプのトゥー・ロックBloomfield Drive。スピーカーはおもに中央の2×12キャビネットを使っているが、クリーン・サウンドの時は写真左のエレクトロ・ボイス製EV-12Lを搭載したキャビネットを選択する。ブラザーズ・ランドレスの『Come Morning』でもこのアンプ・セットが活躍した。
ジョーイが送ってくれた自宅のアンプ・コレクション。左上の1966年製フェンダーDeluxe Ampはブラザーズ・ランドレスの初期にツアーで使用していたもので、『Come Morning』のレコーディングでも登場。左下は10インチ2発でブラウン・トーレックスのフェンダーSuper Amp同様の仕様だが、コントロール・パネルにはConcert Amp(ブラウン・フェイス期のConcertは通常10インチ4発)と書かれている謎の個体だ。
右列上段はスプロのリバーブ・ユニット=600R Deluxe、中段はフェンダーDeluxe Amp。下段の1960年製Super Ampは『Come Morning』のレコーディングで登場したもの。こちらは長年ツアー用アンプとして活躍していたが、スピーカーの経年劣化が心配になり、現在はスタジオでのみ使用しているそうだ。
アンプのセッティングについては本人のコメントで紹介しよう。
最大限にオープンなサウンドにさせるのが好きで、そんなにEQをいじっていないんだ。ハイやミッドはだいたい12時にしていて、ローを調節することはあっても“部屋のサイズに応じて調整する”という意味合いが強いかな。ライブ感があったりブーミーな部屋だったら、ローを少し控えめに設定することで、全体のサウンドの中でコントロールしやすくなるよ。
ラウドにプレイするのはあまり好きじゃないから、ゲインは高めにしても、マスター・ボリュームは控えめだね。Bloomfield Driveみたいに出力を切り替えられるアンプなら50Wでアグレッシブに鳴らすよりも、100Wでヘッドルームのある状態が好きだ。これは僕がシンガーでもあるから、ボーカルをきちっとモニタリングできる音量を大切にしているというのもある。
──ジョーイ・ランドレス
Joey’s Pedals
【Pedal List】
①DanDrive Pedals/Optimus Machine Custom(オーバードライブ)
②Jackson Audio/Golden Boy(オーバードライブ)
③Analog.man/Maxon OD9 Mod.(オーバードライブ)
④Mythos Pedals/Mjolnir(オーバードライブ)
⑤Chase Bliss/Condor(EQ/プリアンプ)
⑥Chase Bliss/Habit(エコー)
⑦Chase Bliss/Thermae(ディレイ)
⑧Chase Bliss/blooper(ルーパー)
⑨Chase Bliss/CXM 1978(リバーブ)
⑩自作エクスプレッション・ボックス
⑪Mythos Pedals/Mjolnir(オーバードライブ)
⑫SM Fuzz/SM Octave Fuzz Pedal(オクターブ・ファズ)
⑬Fairfield Circuitry/Randy’s Revenge(リング・モジュレーター)
⑭BOSS/VB-2w(ビブラート)
⑮JAM Pedals/RetroVibe mk.2(ビブラート)
⑯Empress Effects/Echosystem(エコー)
⑰Ernie Ball/VP JR Mod.(w/Sonic Research ST-300)
⑱Morningstar FX/MC8(MIDIコントローラー)
⑲The GigRig/G3(プログラマブル・スイッチャー)
意外にもシステマチックに組み上げられたジョーイのペダルボードは、左上に入出力がまとめられている。大まかなシステムとしては、各コンパクト・エフェクターをコントロールするスイッチャー⑲で2系統に分かれ、ステレオで⑯に入力、⑯に接続したエクスプレッション・ボックス⑩の2つのホイールで、2系統のボリュームをコントロールしている形だ。⑨などのMIDI信号は⑱で制御している。
詳細な接続順は不明だが、ポイントとなるペダルについて解説していこう。
まず注目は、⑥〜⑨に並んだチェイス・ブリス製ペダル。ジョーイは同社製エフェクターの大ファンで、『Come Morining』で聴けるディレイはほとんど⑦によるものだそう。
ドライブ系も豊富で、質感によって細かく使い分けている。オーバードライブ・サウンドは、シグネチャー・ペダルの②や④が特に活躍する。レコーディングのファズ・サウンドは、⑫以外にもキング・トーンのVintage Fuzz、ミトス・ペダルズのHigh Road Fuzz、Isle of ToneのHaze 67 Fuzzなども起用した。
カスタムされたペダルもいくつか確認できる、個性的なボードだ。
ちなみに『Come Morning』の制作で最も活躍したのは、本ボードには入っていない(サイズ的にも入らない)ベンソン・アンプのTall Bird(リバーブ)とのこと。真空管で駆動するスプリング・リバーブで、“アルバム全体で使っていて、かなりゴージャスなサウンドになったね”と語ってくれた。
さて、ペダル・コレクションの写真も送られてきたので、掲載しよう。数も膨大なため、詳細な解説は割愛させていただく。
やはり歪み系が多いが、どういう使い方が好みかを聞いてみた。
回路のタイプでいうと実は僕はブルースブレイカーみたいなのも好きで、けっこう頻繁に使っている。ケンタウルス系のペダルに関しては、少し毛羽立った感じのサウンドにしているね。トーンを絞り気味に、そしてゲインを高めにしてアンプを強烈にプッシュさせるような使い方が好きなんだ。
ファズはハイゲインなサウンドのために使っていて、ブルースブレイカー系やケンタウルス系と組み合わせて、様々なゲイン・ステージを作るような使い方をすることが多い。バラエティ豊かなゲインを作り出したくて、完璧なクリーンから強烈なファズまでを使い分けたいと思っているんだ。
ツアーをする時も4~5台のファズを持っていくようにしていて、オーディエンスには気づかれないかもしれないけどその時の気分で使い分けている。異なるフィーリングが得られることで、いつもと異なるプレイが促されてフレッシュに保っていられるんだ。まるで“今日はどのジーンズを履いて出かけようかな?”くらいに気軽に選んでいるよ。
──ジョーイ・ランドレス
作品データ
『Come Morning』
The Bros. Landreth
輸入盤/2022年5月13日リリース
『All That You Dream』
Joey Landreth
輸入盤/2021年11月26日リリース
―Guitarist―
ジョーイ・ランドレス