フェンダーはこれまで長きにわたりビンテージ・コンセプトのギターを作り続け、特には1950~70年代という、革新の時代における音を常に伝えてきた。その音を愛し、欲するプレイヤーのためにである。
今回、その“ビンテージ・サウンド”が装いを新たにし、再び誕生することになった。それが“アメリカン・ビンテージ2”(American Vintage II)なるシリーズだ。本記事では、この“ニュー・ビンテージ”の正体を明らかにしていく。
試奏者には今なおロック界のカリスマ的存在であり続ける男、浅井健一を迎えた。本記事では彼の試奏インプレッションをお届けする。気になったモデルがあれば、別記事の全モデル解説をチェック!
コメント取材=辻昌志 人物撮影=岡田貴之 機材撮影=星野俊(1977 Telecaster Customを除く)
※本記事はギター・マガジン2022年12月号の特集『FENDER AMERICAN VINTAGE II feat. KENICHI ASAI:浅井健一が弾くフェンダーの”ニュー・ビンテージ”』の一部を抜粋・再編集したものです。
American Vintage II 1951 Telecaster
気持ち良いくらいシンプル。
(ネックが)太い。でも、これもアリだよね。弾きにくさもないし、慣れればバレー・コードでも全然いける。このカラーは若い時には絶対惹かれなかったけど、年齢が上がると、こういう感じが好きになってきてるんだわ。めちゃくちゃ良いよね。ピックアップの音は、気持ちが良いくらいそのまま。フロントは暖かいし、センターは中間の音だし、シンプルでいいね。ライブでも全然使えると思うよ。オススメです。
American Vintage II 1963 Telecaster
厚みがあって、凄くきれい。
音が太いね! ボディがアルダーなんだね。こっちのほうが音は好きかも……うん、めちゃくちゃ良い。音に厚みがある気がするし、凄くきれいだよね。あと、俺は手が小さいからこのネック(Cシェイプ)のほうがしっくりくる。色は1951テレキャスターのほうが好みかな。これに白があったら買いたいね(笑)。(ボリューム・コントロールの追従性は?との質問に)……最高。自分のオールド・グレッチよりも操作しやすいよ。
American Vintage II 1972 Telecaster Thinline
大人な感じの指弾きに合うね。
さぁ、これはどんな音がするのか!……(しばらく弾いて)暖かい音だね。これはこれで、魅力がある。シンラインは初めて弾いたんだ。ルックスは凄くカッコ良い。この歳になると、こういうのが趣味になってくるね。センスが良いデザインだと思う。あとは大人な感じの指弾きにもピッタリな感じだよね。歪ませても十分イケる音だと思う。このぐらいのポテンシャルだったら、ライブ、レコーディングで絶対使えると思うよ。
American Vintage II 1975 Telecaster Deluxe
気合い入っとるヤングにいいよ。
(激しく歪ませた音で弾いて)やっぱりこうしたくなるね(笑)。何でやろ? そういうオーラをもっとんやないかな。音はめちゃんこ良いよ。ボディはアルダーなんだ。やっぱりちょっとずつ違う音だよね。シンラインのほうは暖かみがあって、これは……厳しい感じ。厳しい世界を乗り越えて行くような(笑)。気合い入っとるヤングにいいんじゃないかな。俺も若い頃だったら、今弾いた4本の中だとコレを買っとったかもね。
American Vintage II 1957 Stratocaster
ジミヘンにもなっちゃうよね。
音が澄んだ感じがする。ボディの形が違うから音も変わるんだね。色は自分には明るすぎるけど、音はめちゃめちゃ良いと思うし、あと異様に弾きやすいわ。……(ヴァン・ヘイレン「Eruption」のタッピングをしながら)意外だったでしょ? これがやりたくなった(笑)。あとはやっぱり、ジミヘンにもなっちゃうよ。こういう音が合うんだね。弾きやすくて、音も粘りがあって、さすがストラトって感じだよね。
American Vintage II 1961 Stratocaster
ライブで使うならこの色。
コレも凄く良いよ。さっきの1957ストラトキャスターに比べると、音がハッキリとした感じだね。カラッとしているような音だわ。自分としては、前のストラトのほうが音は好きだったかな。付いているピックアップも違うから、その差は出てるんだろうね。このあたりは人それぞれの好みだと思うよ。でもルックスでいくとこの色(オリンピック・ホワイト)が一番好きなんだよね。ライブで使うとしてもこの色がいいな。
American Vintage II 1973 Stratocaster
3つストラトの中では一番好き。
ちょっとボディが重いんだね。ライブは絶対軽いほうがいいけど(笑)、これもこれでザ・ストラトって感じだね。好き嫌いで言えば、3本のストラトの中では一番好きかな。……いや、気のせいだろうか(笑)? でも、音はこっちだわ。弾きやすさは断然1957ストラトだけど、かといってコレに弾きにくいところはないよ。ハーフ・トーンはちょっとカポっとした音になるし、どのセレクター位置でも音は全部良いね。
American Vintage II 1966 Jazzmaster
土屋昌巳先生の音がするよ。
やっぱ全然音が違うね。音が深い!……うん、深みがある気がするよ。俺も改造したジャズマスターを持っとるけど、コレはこのまま使える音だね。(しばらく弾いて)土屋昌巳先生の音だわ(笑)。うん、こういう音してたもん。すげぇわ。ジャズマスターの勝ちかも(笑)。いや別に勝ち負けはないけどね。……この音の気持ち良さは何だろうね? あ、弦のテンション感がゆるいんだ。それがデカイんだわ。これは好きだなぁ。
総評:浅井健一が感じた“オールド”らしさ
モデル紹介の最後は、浅井健一による総評をお届け。自身もビンテージのストラトキャスターを所有する彼が、このシリーズを弾いて感じた魅力とは?
取材=辻昌志
この時代の楽器が持つ飛び抜けた魅力を感じたよね。
ロック・キッズはフェンダーを買うように!
今日はお疲れさまでした。まずは試奏した感想から聞かせて下さい。
めちゃくちゃ良いよ。ロック・キッズはフェンダーを買うように!
(笑)。
オススメ。グレッチも良いけどね。
キッズのみならず、上の世代でもじっくり楽しんで弾けそうなモデルもありましたね。
それだとジャズマスターかシンラインのテレキャスターかな。音に深みがあるからね。年齢が上がってくると激しくガンガン弾かんし、最近は自分も指で弾くほうが好きになってきてるんだわ。徐々に変わっていくもんなんだね。
浅井さんが本シリーズで特に気に入ったギターは何ですか?
音はね、1963テレキャスター、1957ストラトキャスター、1966ジャズマスター。この3つが弾いてて“オワ~”って思ったよね。ルックスはこの1961ストラトキャスターが良いね。
浅井さんは歌いながら弾くことが多いと思うんですが、もしギター・ボーカルを本シリーズのギターでやるならどれを選びますか?
テレキャスター・デラックスかな。頑丈そうだからね。音も良いし。
そもそもですが、フェンダー・ギターとの最初の出会いは?
10代の時に買った日本製のジャズマスターだね。8万くらいで買ったやつ。ルックスがカッコ良くてさ、それで買ったんだよ。当時はストラトかレス・ポールを持つのが普通だったから、違うところにいきたかったんだね。
ビンテージを復刻した本シリーズですが、普段もビンテージ・ギターを使っている浅井さんとして、感じ入るものはありましたか?
やっぱり、この時代の楽器が持つ魅力や雰囲気を感じたよね。オールドらしさを感じるというか、音も実際に良かったし。……例えばアメ車もそうじゃん。あの頃はコストを考えずに、良いものを作ろうって動いとったわけでしょ。そのあとは、やっぱり利益を出さなきゃってことで変わっていくけど。楽器も同じで、だからこの時代のものはダントツで飛び抜けているんじゃないかな。そういうことだわ。
浅井健一 プロフィール
あさい・けんいち○1964年12月生まれ。BLANKEY JET CITYのギター&ボーカルとしてデビュー。自身の音楽レーベル“SEXY STONES RECORDS”を主宰しながら、現在はソロ名義、SHERBETS、浅井健一& THE INTERCHANGE KILLS、AJICOなど多岐にわたり活動中。最新作は「UK」(SHERBETS、アリオラ/BVCL-1236)。