ジミー・ポンダーの愛器 |Gibson Super 400C ジミー・ポンダーの愛器 |Gibson Super 400C

ジミー・ポンダーの愛器 |Gibson Super 400C

ビリー・バトラーなど多くのジャズファンカーたちと同様、ジミー・ポンダーもまたギブソン・スーパー400を愛用していた。代表作の裏ジャケなどにその姿を確認することができる、ナチュラル・フィニッシュの個体が長年の相棒だった。

文=久保木靖 Photo by Deborah Feingold/Getty Images

ウォームなトーンを実現したギブソンSuper 400C

 ジミー・ポンダーは、ウェス・モンゴメリーの影響を強く受けた、ジャズに軸足を置いたプレイが信条だ。日常生活では左利きだが、ギターを弾く際は右利き。一般的な右利き用のギターを弾く。手は大きく、指板をところ狭しと駆け巡る左指と右手親指からウォームなサウンドを生み出していた。

 そんなポンダーが手にしたギターで最も印象深いのは、ナチュラル・フィニッシュのギブソンSuper 400Cだ。

 とは言っても、エレクトリック・モデルのSuper 400CESではなく、カッタウェイ付きのアコースティック・モデルにハムバッカーをマウントしたもの。これは別記事で紹介したビリー・バトラーと同様だが、ポンダーの場合はフローティングではなく、直付け。ただし、コントロール・ノブ(バレル・タイプ)とジャックは、ジョニー・スミス・モデルのようにピックガードに配置されている。

 1934年に登場したSuper 400は、ギブソン製アーチトップ・ギターの最上位モデルで、音量を稼ぐ目的で作られた18インチという大きなボディ・サイズが特徴(当時はまだエレクトリック・ギターの発明前)。スプリット・ブロック型ポジション・マーク、ダイアモンド・スプリットのヘッド・インレイ、ネックエンド部のとんがりなどのデザインが施されている。

 ポンダーの個体は、4th作『All Things Beautiful』(1978年)の裏ジャケットで初めて登場することから、1970年代後半に改造、もしくは改造されたものを入手したと考えられる。その後、『Mean Streets – No Bridges』(1987年)のジャケットでは、ノブが黒いトップハット・タイプに付け替えられていた。

『Mean Streets - No Bridges』ジャケ写

 Super 400Cにスイッチする前、つまり、1st作『While My Guitar Gently Weeps』(1973年)から3rd作『White Room』(1977年)の頃は、それらのジャケットに写り込んだ(もしくは描かれた)ギターから、サンバーストのギブソンES-175がメインだったと推察される。デビューから数年は比較的安価で汎用性の高いES-175で活動したが、自信を付け、ある程度金銭的な余裕が出たところでSuper 400Cの入手に至ったのだろう。その際に頭にちらついたのが、憧れだったケニー・バレルやジョージ・ベンソンといった同モデル使いの名手だったのではないか。

 そして、そのままSuper 400Cを生涯使い続けるかと思いきや、『James Street』(1997年)のリリースと同時に、D’Leco製のカスタムメイド・ギター、その名もジミー・ポンダー・モデルが発表された。

D'Leco製のカスタムメイド・ギターを抱えるジミー・ポンダー。
D’Leco製のカスタムメイド・ギターを抱えるジミー・ポンダー。

 美しいナチュラル・フィニッシュのフル・アコースティック・モデルで、fホールの代わりに美しい手彫りの葉が彫られている。また2つのハムバッカーがフローティングで取り付けられているのも特徴だ。

 D’Leco Guitarsはオクラホマシティ在住のジェームス・デイルとモーリス・ジョンソンによって設立された小さなブランドで、韓国のSamick Guitarsと共同開発したチャーリー・クリスチャンというモデル・ラインが有名。

 このブランドにギター製作の話を持ちかけられた際、ポンダーは、“おい! 俺のSuper 400Cに勝てるものはないぜ”と言ったらしいが、1年半後に完成したものを見て、その完成度に衝撃を受けたという。『Guitar Christmas』(1998年)や『Ain’t Misbehavin’』(2000年)のジャケットに大写しになっているのを見れば、ポンダーがこのギターをいかに気に入ったかが伝わってくるではないか。

『Guitar Christmas』ジャケ写

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