ジェフ・ベックの代表的な愛用ギターを時期別に押さえておこう! ジェフ・ベックの代表的な愛用ギターを時期別に押さえておこう!

ジェフ・ベックの代表的な愛用ギターを
時期別に押さえておこう!

2023年3月13日(月)発売のギター・マガジン4月号は、1月10日にこの世を去ったジェフ・ベックの追悼総力特集。ギタマガWEBではその導入として、まだ彼を詳しく知らないギタリストのために、押さえておくべき基本的な情報をまとめていく。今回は多くのギタリストが影響を受けてきた彼の使用ギターの変遷を、象徴的なモデルに絞って紹介していこう。

文=近藤正義 Photo by Larry Hulst/Michael Ochs Archives/Getty Images

ジェフ・ベックの愛用ギター略史

ジェフ・ベックはフェンダー派かギブソン派か? ということになれば、やはりフェンダー派ということになる。

フェンダー・エスクワイアのイメージも強いヤードバーズ時代の初期には、テレキャスターを愛用。60年代の中頃にエリック・クラプトンの影響でギブソンのレス・ポールへと持ち替え、第1期ジェフ・ベック・グループの初期まで使用した。

しかし、ジミ・ヘンドリックスなどの影響もありフェンダー・ストラトキャスターにチェンジ。第2期ジェフ・ベック・グループを経てベック・ボガード&アピス(B,B&A)になってからしばらくして、“トリオ編成ならハムバッカーのギターのほうが良いだろう”ということで、再びレス・ポールを手にするようになった。

続く70年代半ばにはレス・ポール、ストラトキャスター、テレギブ(=セイモア・ダンカンによって改造されたテレキャスター)を使い分けている。その後はアームを使う奏法を行なうため、ストラトキャスターが絶対的なメインとなっていった。

それでは、ジェフ・ベックのキャリアを彩った主要な愛器を、個別に紹介していこう。

1954 Fender Esquire
ヤードバーズ期のエスクワイア

ヤードバーズ時代に使っていた54年製のフェンダー・エスクワイア。ウォーカー・ブラザーズのジョン・ウォーカーから購入したものだ。その時点でボディにストラトキャスターのようなコンターを入っていたそうだ。入手後、ピック・ガードをブラックに変更したりネックを交換したりなどの改造を施してある。それまで使っていたテレキャスターは、ジミー・ペイジに譲渡。

Fender Stratocaster
第2期ジェフ・ベック・グループ時の“フランケン・ストラト”

“フランケン・ストラト”とジェフ・ベック
Photo by Blick/RDB/ullstein bild via Getty Images

69~76年頃、使っていたフェンダー・ストラトキャスター。『ベック・オラ』の時期から、第2期ジェフ・ベック・グループで使われていた。ホワイトのストラトは第2期ジェフ・ベック・グループの末期に登場したと思われる。

ビート・クラブの映像ではスモール・ヘッドでメイプル指板のネックが付いている。ボディの塗装は剥がされ、カットされた謎のピック・ガード、ジャズマスターのツマミではないかと言われたボリューム・ノブなど寄せ集め感満載。

その後、ラージ・ヘッド、2ストリングス・ガイド、ローズ指板という70年代中期のネックが取り付けられ(3点留めだったネックを無理やり4点留めのボディに取り付けたのか?)、『WIRED』リリース後のヤン・ハマー・グループにジョイントしたツアーで再登場。ファンの間でも密かに人気のあるストラトキャスターだ。

1954 Gibson Les Paul Model
『ブロウ・バイ・ブロウ』の象徴的なオックスブラッド

“オックスブラッド”とジェフ・ベック
Photo by Robert Knight Archive/Redferns/Getty Images

ジェフ・ベックのレス・ポール・モデルとして認識されている、オックス・ブラッドというカラーにリフィニッシュされたギブソン・レスポール・モデル。54年製の個体をベースに、ピックアップをオープン・ハムバッカーに交換している。

B,B&Aの中期、ツアー中にメンフィスで入手した時からこの仕様になっていたとのこと。『ブロウ・バイ・ブロウ』のツアー(1975年)まで使用していた。

Fender Telecaster “Tele-Gib”
名曲「哀しみの恋人たち」を奏でた通称“テレギブ”

“テレギブ”とジェフ・ベック
Photo by Larry Hulst/Michael Ochs Archives/Getty Images

ギブソンの音がするテレキャスターということで、通称テレギブ。セイモア・ダンカンによりモディファイされた、テレキャスターである。ハムバッカーを2基搭載してあり、“ギブソンのような音の出るフェンダー”として気に入っていた。

名曲「哀しみの恋人達」のレコーディングで使われ、70年代後期のライブでもよく使われていた。81年の『THE SECRET POLICEMAN’S ROCK CONCERT』でも、このギターで「哀しみの恋人達」を弾く映像が残されている。

Fender Stratocaster (Schecter Assembly)
シェクター・アッセンブリーのストラトキャスター

ピックガードごとシェクターのアッセンブリーに取り替えてある、フェンダー・ストラトキャスター。ホワイトのボディにブラックのピックガードというクールなルックスと、3つのミニ・スイッチ(2点スイッチ×1、3点スイッチ×2)でピックアップの接続を切り替えるという特殊な回路。

このギターはスタンリー・クラークと来日した78年のツアーで注目され、日本では多くのメーカーがこのギターのコピー・モデルを製作した。

Fender Stratocaster (Yellow)
シグネチャー・モデルの原型となるイエロー・ストラト

86年に軽井沢で開催されたサンタナやスティーヴ・ルカサーと共演したコンサートと、引き続きジェフ・ベックだけで行なわれたジャパン・ツアーで登場した、イエローのフェンダー・ストラトキャスター。このイエローのギターには89年の“ギター・ショップ”トリオ(アルバム『ギター・ショップ』のメンバー、テリー・ボジオ/d、トニー・ハイマス/k)の時期まで発展段階があるので、1本ではない。

最初に軽井沢でお目見えしたのはセイモア・ダンカンが組み立てた、黄色いだけでごく普通のストラトキャスター。その後、フェンダーがストラト・プラス、ストラト・ウルトラなどのシリーズを製作していく途中、その仕様が反映されていく。

レースセンサー・ピックアップの搭載、2点支持のブリッジ、22フレット仕様、ウイルキンソンのローラー・ナット、シュパーゼルのペグなどが次々に装備された。89年にジェフが使っていたイエロー・ストラトキャスターは、のちに発売されるジェフ・ベック・シグネイチャー・モデルのプロトタイプと言ってもよいだろう。

Fender Stratocaster (Surf Green)
90年代を彩ったサーフ・グリーン・ストラト

“サーフ・グリーン・ストラト”とジェフ・ベック
Photo by Derick A. Thomas; Dat’s Jazz/CORBIS/Corbis via Getty Images

90年のツアーで時おり確認され、95年のサンタナとのジョイント・ツアーの頃から大々的に登場したサーフ・グリーンのフェンダー・ストラトキャスター。一般販売されたシグネイチャー・モデルとの違いは、リア・ピックアップがシングルであること。

今後しばらくレースセンサー・ピックアップの搭載、2点支持のブリッジ、22フレット仕様、ウイルキンソンのローラー・ナット、シュパーゼルのペグが、ジェフ・ベック・ストラトの標準装備となる。

Fender Stratocaster (Olympic White)
生涯の象徴的な存在となるホワイト・ストラト

“ホワイト・ストラト”とジェフ・ベック
Photo by Jim Steinfeldt/Michael Ochs Archives/Getty Images

リトル・リチャードと呼び愛用していた、サーフ・グリーンのフェンダー・ストラトキャスターのボディが破損してしまったため、お気に入りだったネックをホワイトの別ボディに移植した。このような経緯で、99年より白いストラトキャスターが登場。

この時点でピックアップがホット・ノイズレス・ピックアップに交換され、ネックとボディのジョイント部分のヒールがカットされたモデルへと発展する。以降、ストラトキャスターはホワイトのモデルのみとなり、複数本が存在する。

Fender Stratocaster (Reverse Head)
ジミヘン愛を再確認するリバース・ヘッド

2014年の、ZZトップとのツアーからリバース・ヘッドのモデルを使うようになる。細部の仕様は変わっていないが、ビルダーの違いなどにより複数本が存在している。しかし、2022年よりメイン・ギターはノーマル・ヘッドの個体となり、「リトル・ウィング」を演奏する際にリバース・ヘッドを使用するようになった。

『ギター・マガジン 2023年4月号 (追悼大特集:ジェフ・ベック)』

定価1,595円(本体1,450円+税10%)