ムーンライダーズのリード・サウンドを司る白井良明(g)が、新作『Happenings Nine Months Time Ago in June 2022』で使用したギター&ペダルボードをご紹介しよう。2022年に導入したレス・ポール・スペシャルや、各エフェクターの詳細なセッティングなども解説しているので要チェック。
取材/文=伊藤雅景 ギター写真=星野俊 ボード/レコーディング・ブース写真=本人提供
白井良明の使用ギター
Gibson Custom Shop/Les Paul Special Single Cut Ultra Light Aged T.V.Yellow
シビアなピッキングを求められる“暴れ馬”
2022年3月13日に開催された、ムーンライダーズの16年ぶりの日比谷野音ライブ「moonriders LIVE 2022」の直前に入手した1本。ギブソン・カスタムショップのエイジング・チーム=マーフィー・ラボが手がけた、1957年製レス・ポール・スペシャルのリイシュー・モデルだ。
“暴れるけど太くて芯があるサウンド”だという本器は、白井曰く“弾いたニュアンスがはっきり出ちゃうから、なんとなくの気分で弾けないギター”とのこと。メインで使用するピックアップはフロント・ポジションで、カッティングの際はセンター、リアはごくたまに、という使い分けだ。また、ボリューム&トーンは目盛りの付近が基本で、使用するアンプによってその都度微調整している。
使用弦はダダリオのNYXL Regular Light(.010-.046)で、レギュラー・チューニングにセットアップされている。使用ピックはブルー・チップ・ピックス(BlueChip Picks)のティアドロップ型=TD35で、ピック上部の丸い縁で弾くことが多いという。“そうすることで、弦が軽くミュートされ、低音成分がよりはっきり発音される”と白井談。
Bill Lawrence/Custom Order Model
アロハ・シャツの柄がクールな通称“江戸ラト”
1995年に白井を中心に結成されたプロジェクト“SURF TRIP”で使用するのにふさわしいギターを求めて、ビル・ローレンスにオーダーした1本。ヘッドには白井が本器に命名した“Surf Jazz Master”の名が刻まれている。通称は“江戸ラト”。
このモデルは“SURF TRIP=夏をテーマにしたプロジェクト”というところから着想を得ており、波の形状を模したボディ&ヘッド・シェイプ、アロハ感のあるデザインなど、どこを切り取っても“夏感満載”な見た目になっている。ちなみにボディのデザインには、実際に白井が持っていた本物のアロハ・シャツが使用されている。
ピックアップ構成は、フェルナンデス製サステイナー・ドライバー(CD-100F)と、フェンダー製Lace Sensor Gold×3基の組み合わせ。コントロール類はマスター・ボリューム+マスター・トーンの2つが機能しており、トーンの1つはダミー。ブリッジ右下に見えるスイッチは、サステイナーの音色切り替えスイッチだ。なお、使用弦とチューニングはレス・ポール・スペシャルと同様。
白井良明のペダルボード
【Pedal List】
①Beyond/Beyond Tube Buffer+(バッファー)
②Xotic/Compressor(コンプレッサー)
③BOSS/PS-6(ハーモナイザー)
④One Control/Minimal Series AB BOX(ライン・セレクター)
⑤RMC/RMC-11(ワウ・ペダル)
⑥BOSS/FV-500H(ボリューム・ペダル)
⑦strymon/FLINT(リバーブ/トレモロ)
⑧SOUNDHIGH/modified effector typeA(オーバードライブ)
⑨XTS/Pegasus Boost(ブースター)
⑩VOODOO LAB/Pedal Power 2 Plus(パワーサプライ)
⑪BOSS/TU-3s(チューナー)
白井が新作のレコーディングで使用したペダルボード。①〜⑨までが番号順に接続されており、⑨のアウトからアンプのインプットへと向かう。
まず、先頭のバッファー①とコンプレッサー②は常にかけっぱなしの状態。①は“音がスッキリしつつも存在感が出る”そうだ。②はトグル・スイッチをLOWにして、VOLUMEを12時、BLENDを3〜4時の間で調整している。
ハーモナイザー③は、サイレンのような発振音を作る際に使用。ライン・セレクター④のループには、ボードの外に配置したペダルをインサートしている(下写真参照)。
ギターの信号は、上画像の⑫、⑬を通過しライン・セレクター④に戻る。④のアウトからはワウ・ペダル⑤、ボリューム・ペダル⑥と続く。
リバーブ/トレモロ⑦は、自然なリバーブと、強烈な波形のトレモロを楽曲によって使い分けている。リバーブ・チャンネルはMIX=9時、DECAY=13時、COLOR=15時で、トグル・スイッチは60’s。トレモロ・チャンネルはその都度各種ツマミを調整している。
そのうしろのオーバードライブ⑧はLEVEL=11時、GAIN=13時、TONE=9時の設定。ブースター⑨はかけっぱなしの時もあるが、ギター・ソロで踏むこともあるそうだ。なお、ライブでは⑨の位置がIbanez/TS9(オーバードライブ)に入れ替わることもあるとのこと。
作品データ
『Happenings Nine Months Time Ago in June 2022』
ムーンライダーズ
コロムビア/COCB-54351/2023年3月15日リリース
―Track List―
- Ippen No Shi (Session3)
- SKELETON MOON (Session1)
- Work without Method (Session4,Ver2)
- Stairway to Peace (Session8)
- Chamber Music for Keytar (Session4)
- Jam No.2 in Z Minor and Major (Session10)
―Guitarists―
白井良明、鈴木慶一