永井“ホトケ”隆がブルーズ・ザ・ブッチャーの新作『Feel Lke Going Home』で使用した、ギターとエフェクターを撮影した。それぞれのエピソードとともに紹介しよう。
文/写真=福崎敬太
永井“ホトケ”隆の使用機材
Fender Custom Shop/Muddy Waters Tribute Telecaster
塩次伸二に背中を押され購入した、ブルース巨人のシグネチャー
現在不動のメイン・ギターは、2000年に世界限定100本で生産されたフェンダー・カスタムショップのMuddy Waters Tribute Telecaster。現在は同じモデルを2本所有しており、1本目に入手した個体は、取材時にはメインテナンス中だった。
最初の1本目とは、大阪の三木楽器で出会った。しかし、ES-335を入手したばかりだったこともあり購入を迷っていたそう。そこで故・塩次伸二に相談したところ、こう言われたという。
“ホトケ、ギターは女と一緒や。出会いや。この出会いをなくしたら、もう二度とそういうギターとは会えないかもしれないから、とりあえず買え。いいギターは売ることができるし、いいギターを買ったほうが練習する”
その言葉を受け購入を決めた永井は、すぐに知人に電話をして手付金を肩代わりしてもらい、翌週に大阪へ出向き入手することができたそう。
『Feel Like Going Home』のレコーディングも、スライドの曲以外はその1本目を使用。取材時には、まったく同じ仕様のサブ器である本器を持ってきてもらった。
St. Blues/’61 South
パワフル・サウンドのスライド専用ギター
スライド専用としているセイント・ブルースの’61 South。レコーディングでは「Honey Bee」と「I Feel Like Going Home」で起用された。
背面にはシールが貼ってあり、そこにオープンE(6弦からE、B、E、G♯、B、E)と、オープンA(6弦からE、A、E、A、C♯、E)のチューニングが書いてあった。しかし、「I Feel Like Going Home」はオープンGで、カポを2フレットに装着して演奏している。
入手した当初はレギュラー・チューニングの押弦プレイで使おうとしたが、弾きづらかったようで断念。しかし、“P-90も付いているし、パワーもあるから使わないのはもったいない”と思い、スライド・ギター専用にしたそうだ。エルモア・ジェームズの楽曲で爆音にしてプレイするのがお気に入りとのこと。
弦高はそこまで高くないが、“もう少し上げようかな”と思案中。弦も現在はラベラの1弦=.011からのセットを張っているが、.012からのセットに変更を検討しているそうだ。
ピックアップはおもにフロントをチョイスする。
Pedals
レコーディングでも使用した、Malekko Heavy Industry/TREM(トレモロ/写真左)、Trial/B-1(クリーン・ブースター/右)。ブースターは音質が変わらないで音量のみを上げてくれるものを選んだという。
また、マジック・サムやスリム・ハーポを引き合いに“ブルースにはトレモロが合う”と語っており、さらに“オジさんはトレモロが好き”というエピソードとして、こんな話を聞かせてくれた。
“シェクターでギターを作ってもらったことがあって。その時にシェクターに遊びに行ったら、“ホトケさん、これ使います?”って言ってトレモロを持ってきてくれたんです。“お! トレモロじゃん! もらえるの?”って聞いたら、“持っていって下さい”って。
それで、もらえることになったんですけど、“色んなギタリストに「これ、どうですか?」って言って出しましたけど、持っていくって言ったのは、ホトケさんと忌野清志郎さんだけです”って言われて(笑)。
やっぱりオジさんはトレモロが好きなんですよ(笑)”
また、今回アンプは撮影できなかったが、レコーディングで使用したのは、フェンダーのConcert。ギター・テックを務める木菱讓氏が所有しているもので、1980年代のフェンダーにポール・リベラが在籍していた時期の個体とのこと。なお、木菱氏が来られないライブの時などは、自身のフェンダーHot Rod Deluxeを使用する。
作品データ
『Feel Like Going Home』
blues.the-butcher-590213
P-VINE/PCD-18904/2023年6月28日リリース
―Track List―
- I Feel Like Going Home
- Honey Bee
- Gone To Main St.
- Tell Me Mama
- Can’t Hold Out Much Longer
- Why Are People Like That
- Baby, Please Don’t Go
- Trouble No More
- Last Night
- Forty Days & Forty Nights
- Walking Thru The Park
- Too Late
- Mannish Boy
―Guitarist―
永井“ホトケ”隆