ジミ・ヘンドリックスがウッドストックへ持参した1967年製ギブソン・SGカスタム ジミ・ヘンドリックスがウッドストックへ持参した1967年製ギブソン・SGカスタム

ジミ・ヘンドリックスがウッドストックへ持参した
1967年製ギブソン・SGカスタム

ジミ・ヘンドリックスとギブソンの関係を紐解く特集『ジミ・ヘンドリックスとギブソン〜天才ギタリストが老舗ブランドに求めたもの〜』。今回紹介するのは、ジミが使用している映像もいくつか残っている、ラージ・ピックガードの白い1967年製SGカスタム。最も長く使用されたギブソン製ギターだ。

文=fuzzface66 Photo by Jan Persson/Redferns/

ウッドストックの会場にも控えていたSGカスタム

ホワイト・ボディにゴールド・パーツが眩しいラージ・ピックガード仕様の1967年製SGカスタムは、ジミのギブソン・ギターとして4本目に確認できるモデルである。SGシリーズの最高級機種である本モデルは、ハムバッカー・ピックアップが3基搭載され、ロングアームのヴァイブローラが装備されている。

ジミがこのSGカスタムを使い始めたのは、1968年10月後半にハリウッドのTTGスタジオで行なわれた一連のレコーディング・セッションからと思われる。同じタイミングで、ラージ・ヘッドの黒いストラトキャスターやアコースティック社製のセミホロウ・ギター“ブラック・ウィドウ”も使用されており、いずれも同じ時期に入手したのかもしれない。

SGカスタムを弾くジミ・ヘンドリックス
デンマークのファルコナー・センターでのステージでSGカスタムを弾くジミ・ヘンドリックス。

1968年11月からはステージでもSGカスタムが使われ始め、当初はこれまでのギブソン・モデル同様、おもにブルース・ナンバー「Red House」で多用されていた。

ハムバッカーが3基搭載されたSGカスタムならではの独特なフェイズ・サウンド(3点スイッチを真ん中にすると逆位相のセンター+リアのフェイズ出力となる)がお気に入りだったのか、ブルース曲ではフェイズ・ポジションを好んで使用していた印象がある。また、ほかのギブソン・モデルが音源だけだと特定が難しいのに比べて、このSGカスタムは一聴してわかるほどに個性的なサウンドを放っている。

この頃の音源としては、映像にも残されている1969年1月9日ストックホルムのコンサート・ヒューゼ公演のものが有名だが、ジミは終始機嫌が悪そうで、いまいち乗り切れていない。それよりは、同年2月18日のロイヤル・アルバート・ホール公演でのプレイのほうが、まだ彼の熱気が感じられる(こちらも全体的なショウの出来映えはあまり良くなく、有名な24日公演に比べてメンバーとの結束感がいまひとつではあるが……)。

そして、1969年4月から始まったジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの事実上ラストとなるツアーの頃になると、最初の数ヵ所のみステージで使用されたものの、ほどなくしてローテーションからはずれてしまう。

しかし、6月にエクスペリエンスが解散し、来たるウッドストック公演へ向けて編成した“ジプシー・サン・アンド・レインボーズ”でのセッション・ワークから、再びSGカスタムを手に取る機会が増える。8月18日の本番こそ、あの有名な貼りメイプルの白いストラトキャスターがプレイされたが、サブとしてSGカスタムも会場に用意されていた。

SGカスタムで頻繁にプレイされた「Izabella」

1969年9月に入ってからは、レコーディング・セッションやクラブ・ギグ、テレビ出演などで頻繁にSGカスタムを使用している様子が確認できる。この頃に共通しているのが、すべてで「Izabella」をプレイしているということだ。

まず、9月8日にはABCテレビの『ザ・ディック・キャベット・ショウ』で「Izabella」と「Machine Gun」をメドレー形式で披露(生放送で予定にないメドレーだったのか、慌てたスタッフがジミたちに何か訴えているような様子が一瞬映っている)。

9月10日、ザ・サルヴェーションでのジプシー・サン・アンド・レインボーズ最後のステージでは「Izabella」と、タイトルのないバラードの2曲をプレイ。

9月23日にはレコード・プラントで、8月にヒット・ファクトリーにてレコーディングした「Izabella」のベーシック・トラックに、リードをオーバー・ダブしている(音からするとベーシック・トラックの段階からすでにSGカスタムでプレイしているようにも聴こえるが……)。

と、このように、その後も晩年までレコーディング・セッションがくり広げられていく「Izabella」への取り組みが、この時期にSGカスタムからスタートしているのである。

2019年にFenderからリイシューされたウッドストック50周年ストラトキャスターにこの名前は取られてしまったが、筆者はこのSGカスタムこそ“Izabella”の名に相応しいモデルではないかと感じている。

このあとバンド・オブ・ジプシーズ期に入ったあたりから、このSGカスタムはすっかり見かけなくなる。だが結果的に、ジミが手にしたギブソンの中で、最も長く使用されたモデルとなった。

そして、ジミの死後、1985年にハード・ロック・カフェに売却され、各国の店舗で展示が行なわれたという(ただし、右利きプレイヤーが使用していた痕跡があるため、ジミが使用した現物かどうかは疑わしいとの指摘も)。

また2020年には、ギブソン・カスタムから限定150本で、エイジド加工が施されたリイシュー・モデルがリリースされている。