エリック・クラプトンがブラインド・フェイスでの相棒として選んだ、ストラト・ネックのカスタム・テレキャスター エリック・クラプトンがブラインド・フェイスでの相棒として選んだ、ストラト・ネックのカスタム・テレキャスター

エリック・クラプトンがブラインド・フェイスでの相棒として選んだ、ストラト・ネックのカスタム・テレキャスター

エリック・クラプトンが手にした数あるギターの中で、一時期しか姿を現わさなかったテレキャスターがある。彼がブラインド・フェイスでメイン・ギターの1本として選んだ、ストラトキャスターのネックを移植した1964年製カスタム・テレキャスター。その詳細を見ていこう。

文=細川真平 Photo by Michael Putland/Getty Images

ボルトオン・ジョイントの先進性

ギターのネック交換というのは、見た目には大して目立たない場合もあるが、ギタリスト本人にとっては演奏性に大きく関わる重要な“改造”だ。

もちろんこれは、ボルトオン方式を採用しているフェンダー系ギターでは容易だが、セットネック方式のギブソン系ギターではなかなか難しい。

そういう点でも、レオ・フェンダーの先進性を感じてしまう。

御大エリック・クラプトンもかつて、そのネック交換という改造を、テレキャスターに施したことがあった。

1964年製のカスタム・テレキャスターがそれだが、まずはこのモデルの説明からしておきたい。

1950年にデビューした(最初期はブロードキャスターという名だった)テレキャスターだが、1959年になるとストラトキャスターと同様に、メイプル・ワンピース・ネックからローズウッドのスラブ指板が貼られたメイプル・ネックへと仕様変更になる。

同時に、ボディ材にアッシュではなくアルダーを使用し、サンバースト・フィニッシュに白のバインディングを施したバリエーション・モデル、“カスタム・テレキャスター”も登場(ヘッドに“CUSTOM TELECASTER”と記されているので、ここでもそう呼びたい)。

これは、1972年に登場したフロント・ピックアップがワイドレンジ・ハムバッカーの、“テレキャスター・カスタム”とは別のモデルなのでご注意いただきたい(“テレキャスター・カスタム”のヘッドには、“TELECASTER”の下に“CUSTOM”と書かれている)。

余ったストラト・ボディ+テレ・ネックは何処へ?

クリーム時代の1968年に、エリックが64年製カスタム・テレキャスターを手にした姿を、彼らがデンマーク映画『Det var en lordag aften』に出演した時の写真で確認することができる。ただし、メイン・ギターはギブソンSG(サイケデリック・ペインティングの“ザ・フール”)だったために、映像には出てこない。

この時のエリックのカスタム・テレキャスターの特徴は、ネックがストラトキャスターのものに交換されていることだった。ラージ・ヘッドでローズ指板、トランジション・ロゴなので、1966〜67年のストラトのネックだ。

エリックの証言によると、“テレキャスターの音は好きだが、ネックが気に入らなかったので、ストラトのネックに交換した”とのこと。この時代のテレキャスターのネックはCシェイプが基本だが、この個体はどうやらCよりもやや角ばったDに近いネック形状だったようで、それが苦手だったらしい。

このローズ指板のストラト・ネックは、エリックが当時、新品で購入したものの、使用していなかったストラトキャスターから取られたものと思われる。

そして、残り物である元のストラトキャスター・ボディに、余ったテレキャスターのネックを付けた、エリックのものとは逆バージョンのギターは、彼のローディーだったミック・ターナーを経由して、リッチー・ブラックモアの手に渡った。

第1期ディープ・パープルの1968年の2ndアルバム『The Book of Taliesyn(詩人タリエシンの世界)』のイギリス盤の裏ジャケにこのギターが写っているし、また、2009年に発売された映像オムニバス作品『DEEP PURPLE ARCHIVE COLLECTION』に収録された「WRING THAT KNECK」で、リッチーがこのギターを使って演奏するシーンを観ることができる。

だが、このギターはあまり状態が良くなかったようで、リッチーはこれを、バンド・メイトのジョン・ロードに譲るか貸すかし、それをジョンが壊してしまったということだが、詳細は不明だ。

ブラインド・フェイスのデビュー時に、またネックが換えられる

さて、ストラト・ネックを持つエリックのカスタム・テレキャスターが再度登場するのは、クリーム解散後にスティーヴ・ウィンウッド、ジンジャー・ベイカーらと組んだスーパー・グループ、ブラインド・フェイスが1969年6月7日にロンドンのハイド・パークで行なったデビュー・ライブの際だ。

ここではメインで使用されたので、残された映像作品でルックスも音もしっかりと確認することができる。

この時、ネックはクリーム時代のローズ指板貼りのものから、メイプル・ワンピースに換わっていた。

このネックは、一体どこから来たものだろうか?

エリックは1967年に、ロンドンのサウンド・シティというショップで、サンバーストの56年製ストラトキャスターを購入している。

このギターは、ブラインド・フェイスが1969年に解散したあとに彼のメイン・ギターとなり、1970年に発表された1stソロ・アルバムのジャケットにも登場、そしてデレク・アンド・ザ・ドミノス時代にも愛用され、茶色が濃く残った色合いから、“ブラウニー”の愛称で親しまれた。

エリックのギターの中で、“ブラッキー”に次いで有名であり、かつ伝説的な1本と言えるだろう。

実は、ブラインド・フェイス時代のカスタム・テレキャスターに移植されたのは、メイン・ギターになる前のこの“ブラウニー”のネックだった。

間違いなくエリックは、このVシェイプのネックが大好きだったに違いない。

だからこそ、あえてカスタム・テレキャスターに移植もしたし、ストラトをメインで使うようになってからは元に戻して、このネックを通じて数多くの名演を生んだ。

エリックの長いキャリアの中で、ほんの一時期しか登場しなかった64年製“改造”カスタム・テレキャスター。

熱心なファンの方以外は、このギターに対してあまり強い印象がないかもしれない。

だが、『LAYLA』を奏でたギターと同じネックが付いていたと思うと、思わぬ感慨が湧いてきはしないだろうか?

エリック・クラプトン(左)とスティーヴ・ウィンウッド(右)
1969年7月7日、ハイド・パーク・コンサートの模様。エリック・クラプトン(左)とスティーヴ・ウィンウッド(右)。

ギター・マガジン2023年9月号
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