ドミコの新たなミニ・アルバム『肴』でインタビューした際、最新のペダルボードと愛器であるダイメルのギターを持参してもらった。彼らの大きな魅力である、ライブでのサイケデリックなギター・アンサンブルを生み出す、最新機材を見ていこう。
文/写真=福崎敬太
Deimel Guitarworks/Firestar Black Ash
不要なコントロールを排除したライブのメイン器
長らくライブのメイン器として使用している、ドイツ・ベルリンのブランド=ダイメル・ギターワークスのFirestar Black Ash。カーティス・ノヴァク(Curtis Novak)のJMタイプ・ピックアップを2基と、ボディ内部にピエゾ・ピックアップを搭載している。
ボディ1弦側ホーン部にある3つのスライド・スイッチは、ピエゾのオン/オフ、ローカット、2ピックアップのシリーズ接続という機能を持つが、“事故ったことがあって”すべてバイパスしているそうだ。
ライブが多く、毎回交換するのが大変なため、弦はエリクサーのNANOWEB Custom Light(.009-.046)を張っている。
Pedalboard
【Pedal List】
①Formula B Elettronica/Qfilter(エンベロープ・フィルター)
②One Control/Xenagama Tail Loop(スイッチャー)
③TC Electronic/Shaker Mini Vibrato(ビブラート)
④Hologram/Microcosm(グラニュラー/ディレイ/ルーパー)
⑤Bananana Effects/Aurora(ディレイ)
⑥GFI SYSTEM/Specular Tempus(リバーブ/ディレイ)
⑦Eventide/PitchFactor(ハーモナイザー/オクターバー)
⑧Fulltone/True-Path ABY(ライン・セレクター)
⑨One Control/White Loop(スイッチャー)
⑩Origin Effects/Revival Drive(オーバードライブ)
⑪September Sound/Mini Fuzz Neo Classic Hi-G(ファズ)
⑫Dr. Scientist/Reverberator(リバーブ)
⑬Ceriatone/Centura(オーバードライブ)
⑭Blackstrap Electrik Co./Hatchjaw(ファズ)
⑮Line 6/DL4 MkII(ディレイ)
⑯DigiTech/Drop(ピッチ・シフター)
⑰TC Electronic/PolyTune(チューナー)
分厚いアンサンブルを創出するライブ用ボード
2人編成でサイケデリックな音像を生み出すための、ライブ用ペダルボード。ルーパーを駆使して複数のパートが演奏されるため、出力が分けられているなど、シグナル・チェーンも複雑になっている。まずは、その全体像から見ていこう。
ギターからは、ペダルボード裏にあるハンドメイド真空管バッファー(下写真右)に入力される。
そこからエンベロープ・フィルター①へと続き、スイッチャー②(③〜⑤をループに接続)、⑥、⑦、ライン・セレクター⑧へと向かう。
⑧で分岐した信号をそれぞれA、Bとすると、それらがボード裏に設置された2台のスプリッターで4系統に分かれることになる。ここでは各系統をA1、A2、B1、B2と呼ぶことにする。
そのうちA2、B2がミキサー⑳でブレンドされ、ジャンクション・ボックス㉑を経由してベース・アンプへと出力される。
そしてA1はボード表へと戻り、歪み⑩〜⑫を経由したのち、ジャンクション・ボックス㉑からメサ・ブギーのアンプ、Lone Star Specialへ。
B1の信号は歪み⑬⑭をとおり、ルーパーとして使っている⑮、ピッチシフター⑯、ジャンクション・ボックス㉑と経由したのち、トーン・キングのRoyalist 45へと送られている。
◆
ここからはそれぞれの使い方を見ていこう。
まず信号の入口となるボード裏の真空管バッファーは、入力信号にチューブらしさを付加してくれるもの。ツマミを変更することはないため裏に配置し、ジャンクション・ボックス的な役割も果たしている。
続くエンベロープ・フィルター①は低域側に掛かるよう設定しており、“ハイ・ポジションを弾いても耳に痛くない、どのフレーズでも掛かってくれる”セッティングにしている。
スイッチャー②は空間/モジュレーション系をコントロール。筐体の色に合わせたスイッチ・キャップをつけているのがこだわりで、Loop 3のキャップは隣の⑦PitchFactorのスイッチを踏んだ際に同時に踏んでしまわないよう、ストッパー兼目印として設置している。
ディレイ⑥は2つのサウンドを瞬時に切り替えられるのがお気に入りで、Aチャンネルがエンベロープ・フィルターが掛かったロング・ディレイ、Bチャンネルがトレモロが掛かったリバーブに設定。
ピッチシフター⑦はライブの必須品で、ベース音を出す際にオクターバーとして使用する。さらに、アルぺジエイターやクリスタル系のリバーブ・サウンドを出す際にも踏んでいる。
歪み系は前述のとおり2系統に分かれており、それぞれキャラクターの違うアンプへと送られている。また、ルーパー⑮に送る側(アレンジのベースになるフレーズ)と、そうでないもので、どちらでも同じ用途をカバーできるようにしている。
ある程度重心の低いサウンドの際は、オーバードライブ⑩または⑬を選択、どちらのチャンネルでもソロを弾けるように、ファズ⑪または⑭を選択する。“最もうるさくしたい時”には、両チャンネルを同時に鳴らすこともあるそうだ。
マルチ・ディレイの名機⑮はルーパーとして使用。アンサンブルの根幹を担う、最重要の1台。そのうしろにあるピッチシフター⑯と組み合わせることで、ライブ中に転調することも可能にした。
作品データ
『肴』
ドミコ
EMI Records/PRON-1062/2023年9月27日リリース
―Track List―
- 不眠導入剤
- てん対称移動
- なんて日々だっけ?
- のらりつらり
- プトレマイオシー
Blu-ray
『ドミコ 日比谷野外大音楽堂ワンマン 2022』
―Guitarist―
さかしたひかる