エリック・クラプトンのターニング・ポイントで輝いたレス・ポール・カスタム エリック・クラプトンのターニング・ポイントで輝いたレス・ポール・カスタム

エリック・クラプトンのターニング・ポイントで輝いたレス・ポール・カスタム

エリック・クラプトンがクリームの名盤『Disraeli Gears(カラフル・クリーム)』をレコーディングしていた時期に入手したギブソン・レス・ポール・カスタム。デレク&ザ・ドミノスの初期まで使用された本器は、2023年のクロス・ロード・ギター・フェスティバルのために復刻モデルも作られた。そんな話題の“ブラック・ビューティー”の物語をお届けしよう。

文=細川真平 Photo by Chris Walter/WireImage/Getty Images

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「Sunshine of Your Love」の艶やかな音も?

エリック・クラプトンの歴史に、“PAF”ピックアップを3基搭載した“ブラック・ビューティー”、ギブソン・レス・ポール・カスタムが初登場したのは、1967年5月、クリームの2ndアルバム『Disraeli Gears(カラフル・クリーム)』をレコーディングした際のこと。

アルバムの全編でこのギターが使われたかどうかの確証はないが、例えばクリームの代表曲の1つ、「Sunshine of Your Love」で聴けるウーマン・トーンが、レス・ポール・カスタムで奏でられていた可能性は大きい。

このレス・ポール・カスタムは、ペグがグローバー製である点から、58〜60年製だと思われる。また、エリックはジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ時代から60年製のレス・ポール・スタンダードを使い始めて、そのサウンドでリスナーに大きな衝撃を与えた。彼は58年製や59年製よりも薄いそのネック形状を好んでいたというから、そこから類推すると、このカスタムも60年製の可能性が高い。

進む道を模索していた時代の相棒に

エリックがこのギターを入手したのは、1967年3月にクリームが初めてアメリカを訪れ、ニューヨークのRKO 58thストリート・シアターに9日間の出演をした時のこと。

入手ルートの確証はないが、この期間に彼がニューヨーク市内の有名楽器店、マニーズ・ミュージックに立ち寄ったことは史料から明らかなので(その後、彼はこの店の常連ともなる)、そこで購入したものと思われる。

ちなみにエリックは、同アルバムに収録された「Tales of Brave Ulysses(英雄ユリシーズ)」で初めてワウ・ペダル(Vox Clyde McCoy Wah)を使用したが、それもレコーディングで再度ニューヨークを訪れた同年5月にマニーズで購入したものだ。

しかし、このレコーディング以降、このカスタムはメインでは使用されなくなり、サイケ・ペインティングを施されたSG、“ザ・フール”のサブとなる。

次に登場したのは、クリームを解散し、その次のブラインド・フェイスも短命で終わったあとの1969年9月13日、プラスティック・オノ・バンドのメンバーとしてトロントでの“ロックンロール・リバイバル・フェスティバル”のステージ立った時のこと。重厚さと同時にキレのある、素晴らしいレス・ポール・サウンドを聴かせてくれている。

サウンドにキレの良さを感じさせる要因は、クリーム時代には付けられていたピックアップ・カバーが3つともはずされていることかもしれない。また、ピックガードも取り去られている。

その年の12月から、デラニー&ボニーのヨーロッパ・ツアーにジョージ・ハリスンとともに参加した時にも、このカスタムが使われた。

そして、1970年春に結成したデレク&ザ・ドミノスの初期まで使用されることになる(言うまでもなく、レコーディングで使われたのはフェンダー・ストラトキャスター、“ブラウニー”だったが)。

エリックのレス・ポール・カスタムはその後、1979年になってエリックのバンドに参加したアルバート・リーに贈られた。彼はこれを宝物として、今も大事にしているという。

気になる復刻モデルの行方

2023年になると、9月に行なわれる“クロスロード・ギター・フェスティバル”のために、エリックはギブソン・カスタム・ショップにこのギターのリイシューの製作を依頼。そのプロトタイプは、4月のエリックの日本公演の時にもステージ袖にスタンバイしていた。

結局、日本公演でも“クロスロード・ギター・フェスティバル”でも使用はされないままだったが、当初彼がこのギターで何の曲を、どのように演奏しようと考えていたのか、気になるところではある。

最後に余談を1つ。

エリックは1969〜70年頃、ギブソンにブラック・フィニッシュのレス・ポール・カスタムを特注している。このギターは、1971年終わり頃になって、オールマン・ブラザーズ・バンドのグレッグ・オールマンに贈られた。それは、その年の10月にバイク事故でデュアン・オールマンが逝去したことで気落ちするグレッグを慰めるためだったのかもしれない。

このカスタムには、オープン・タイプのハムバッカーが2基搭載されている。ここからは、エリックはピックアップ・カバーがない音のほうが好みだったのだろうということ、そしてピックアップは2基で十分と感じていたのではないかということが読み取れる。

デラニー&ボニーとエリック・クラプトン
デラニー&ボニーのバックでレス・ポール・カスタムを弾くエリック・クラプトン(Photo by Chris Walter/WireImage/Getty Images)。

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