直感的なサウンド・メイクを可能にした田中義人のペダルボード月刊『足下調査隊!』第3回 直感的なサウンド・メイクを可能にした田中義人のペダルボード月刊『足下調査隊!』第3回

直感的なサウンド・メイクを可能にした田中義人のペダルボード
月刊『足下調査隊!』第3回

毎月1人のギタリストの足下を調査する連載企画、『月刊 足下調査隊!』。第3回は、KREVA、ケツメイシ、アイナ・ジ・アンドらのレコーディングやライブ・サポートの傍ら、ソロ・アーティストとしても活躍するギタリスト、田中義人のペダルボードをご紹介。なお、今回撮影したボードは、2023年9月15日(金)に開催された“KREVA CONCERT TOUR 2023『NO REASON』”のステージでも使用されたものだ。その公演のライブ映像作品はBlu-ray、DVDで発売中。

取材/文=伊藤雅景 写真=井之口聡

プレイアビリティを追求した
田中義人のペダルボード

田中義人のペダルボード

【Pedal List】
①Providence/STV-1JB(チューナー/ジャンクション・ボックス)
②Xotic/SP Compressor(コンプレッサー)
③Fulltone/CLYDE Standard Wah(ワウ)
④BamBasic Effectribe/Custom Over Drive(オーバードライブ)
⑤HTJ-WORKS/GOLD HAZE FUZZ(ファズ)
⑥BamBasic Effectribe/Marshall The Guv’nor Mod.(ディストーション)
⑦Xotic/AC Booster(ブースター)
⑧Xotic/X-Blender(ブレンダー)
⑨BOSS/MD-500(マルチ・モジュレーション)
⑩strymon/FLINT(リバーブ/トレモロ)
⑪BOSS/FV-100(ボリューム・ペダル)
⑫strymon/TIMELINE(マルチ・ディレイ)
⑬VooDoo LAB/Pedal Power 2 Plus(パワー・サプライ)

12台のペダルが並ぶ田中のペダルボード。

おおまかには、コンプレッサー(②)で音量バランスを整え、④〜⑦の歪み&ブースターで基本のサウンドを作り、⑧〜⑫で空間系+ボリュームのコントロールをするといったシステムだ。

このボードを使用する際、アンプはSHINOSのLuck 6V、フェンダーのDeluxe Reverb、マーシャルのJTM45など様々な機種を使い分けているが、いずれもクリーン・サウンドにセッティングしているとのこと。

接続順は以下のとおり。

まずギターからの信号はジャンクション・ボックスを兼ねるチューナー(①)へ入り、チューナーのセンド端子からコンプレッサー(②)へと入力される。そこからブレンダー(⑧)まで②〜⑧の番号順に続いていく。BOSS/MD-500(⑨/マルチ・モジュレーション)は、ブレンダーのセンド/リターンに接続。

ブレンダー(⑧)のアウトプットから、リバーブ/トレモロ(⑩)、ボリューム・ペダル(⑪)、マルチ・ディレイ(⑫)と順に続き、ボード右上に置かれたチューナー(①)のRETURNへと戻り、OUTPUT端子からアンプの入力へと向かう。

ピラミッドの写真が上に乗っている⑬は、VooDoo LABのPedal Power 2 Plus(パワー・サプライ)。⑨、⑩、⑫のような大容量の電流を必要とするデジタル・エフェクターはそれぞれ専用のアダプターから別途電源を確保している。

パッチ・ケーブルはベルデンで統一されているが、9778や8412などを併用しており、特にこだわりはないとのこと。

本人インタビュー&徹底解説

このボードのテーマは“可変”ですね

それでは、各ペダルの使い方を教えて下さい。まずはコンプレッサー(②)ですが、これは常時オンなのでしょうか。

 そうですね、常にかけっぱなしです。今までコンプは使っていなかったんですけど、(2015年頃に)右手首の局所性ジストニアを患ってしまったのをきっかけに導入したんです。でも、データ量が多い曲では、コンプである程度の音量を整えたほうがギターを上手くレイヤーできるというメリットもありましたね。

②Xotic/SP Compressor(コンプレッサー)
常時オンだというXoticのSP Compressor(②/コンプレッサー)。VOLUMEは14時、BLENDは11時で、トグル・スイッチはLOW。筐体内部のディップ・スイッチは購入時のまま。

このペダルに辿り着くまで、色々なコンプレッサーを試したんですか?

 特にこだわりはなかったので、周りにオススメしてもらったものを買いました。もともとEP Booster(エキゾチックのブースター)が大好きで、昔はいつもかけっぱなしにしていたんですけど、SP Compressorのバイパス音はその雰囲気も感じられるので気に入っています。

続いて、歪みペダルについて教えて下さい。4台が直列で並んでいますが、メインの歪みはどれでしょう?

 メインはCustom Over Drive(④)ですね。2チャンネル仕様になっていて、左側はBamBasic Effectribeに開発してもらった、YT-902という僕のシグネチャー・オーバードライブの回路が入っています。凄くナチュラルで、粘りがある音がしますね。リード・プレイの時はこのチャンネルを使っています。

 右チャンネルは、石成正人(g)さんが監修したSoul Stoneという歪みペダルの回路がそのまま入っています。左チャンネルよりもクリアで、コードを弾いても潰れずに、綺麗な和音が鳴ってくれます。

BamBasic Effectribe/Custom Over Drive(④/オーバードライブ)
メインの歪みはこのBamBasic EffectribeのCustom Over Drive(④/オーバードライブ)。センターのスイッチが左右のチャンネル切り替え用で、右側のスイッチがオン/オフだ。

Drive.、Gain.のノブだけ大きいですね。

 足でツマミを回しやすいようにつけてもらいました。なので、歪みを操作するツマミはどっちのチャンネルも筐体の端寄りに付いているんですよ。例えば、ギター・ソロ前に少しづつゲインを上げていって、ソロが終わってバッキングに戻ったらまた下げたり。あとは、アルぺジオを弾きながら歪みをちょっとずつ上げていったりとか。この技はけっこう重要ですよ。

まさに職人技! 

 歪みペダルって曲ごとに使いたいものを入れたくなるから、どんどん増えていっちゃうじゃないですか。それで、台数を減らすにはどうしたらいいかを考えて、この技に辿り着いたんです。どれくらいツマミを動かせば、どの程度可変するかっていう感覚は体に染み付いていますね。

このファズ(⑤)にもこだわりがありそうですね。

 このファズは、今大変お世話になっているHTJ Works製のものです。ファズっぽさもあり、ディストーション的にも使用でき、重宝しています。

 Ge BIASツマミで音のキャラクターが変えられるので、色んな現場での使い勝手も良いんですよ。暴れつつ、オケに馴染んでくれるドライブ・サウンドが欲しい時に使っていますね。

そして、ディストーション(⑥)もメインの歪みと同じくBamBasic Effectribe製です。

 これは、僕がもともと持っていた英国製ガバナー(The Guv’nor/ディストーション)の回路を移植してもらったものなんです。オリジナルのほうのインプット・ジャックが脆くて、演奏中にはずれたりすることがあったんですよ。なので、筐体だけ頑丈なものに変えてもらっています。回路は細かい改良がしてあると思いますが、基本的には何も変えていないです。

左から⑥BamBasic Effectribe/Marshall The Guv’nor Mod.(ディストーション)、⑤HTJ-WORKS/GOLD HAZE FUZZ(ファズ)。
左から⑥BamBasic Effectribe/Marshall The Guv’nor Mod.(ディストーション)、⑤HTJ-WORKS/GOLD HAZE FUZZ(ファズ)。

Level以外のツマミは、かなり上がっています。

 かなり歪ませていて、Gainはマックスの場合もあります。かなりロー感もあって、80年代のオジー・オズボーンって感じの音色です(笑)。

 さっきのファズ(⑤)は倍音がグワっとまとわりついてくるので、よく単音フレーズで使うんですが、こっちのディストーション(⑥)はファズより倍音感が整理されているので、おもにパワー・コードなどで踏んでいます。

そして、AC Booster(⑦/ブースター)はゲインがゼロになっています。

 これはボリューム・ブースト的な感じです。どの歪みペダルにも組み合わせて使えますね。

※AC Booster(⑦/ブースター)は、取材後にD.A-Project/D.A-Booster(ブースター)へ変更された。

音量差はどれくらいつけていますか?

 基本的にはあまり上下させていないですね。音量のブーストに関しては、PAでやってもらうことが多いんですよ。

 例えば、リハーサルで“ソロの音色、もっとブーストできませんか?”となった時に、ペダルで上げてしまうと、自分を含めたバンド・メンバーのモニター・バランスが変わっちゃうじゃないですか。それに、自分のプレイのタッチも変わってしまうので、“このままのトーンで鳴らしたいから、PAのほうで上げて下さい”って頼んじゃいます。

 長期のツアーで信頼できるモニター・マンが居る環境だと、そう頼むことが多いですね。ボリューム・ブースターとしてセッティングしているAC Booster(⑦/ブースター)は、サウンド・チェックの時間が少なく、PAに指示ができないような現場で使うことが多いです。

多くの現場をこなす義人さんならではの使い方ですね。

 ギターの音量設定って凄く難しいと思っていて。例えば、曲のデータ量や音圧を加味して作ったバランスでも、リハーサルの単音チェックでは周りのオケが鳴っていない状態なので“ちょっとこの歪みデカくない?”と言われちゃったり。そういう時はPAの人に“オケの中では絶対ハマるんで大丈夫ですから”って言います(笑)。こっちが弱気だとそこにつけ込まれちゃうんで。

そこで不安になってはダメだと(笑)。

 ダメです(笑)。“一度これで試させて下さい”と伝えますね。

また、ブレンダー(⑧)にはボスのMD-500(⑨/マルチ・モジュレーション)がセンド/リターンで接続されています。

 MD-500のバイパス音があまり好きではなかったのと、単純にこのブレンダー(⑧)の音が好きなんですよ。ドライとウェットのミックスを変えられるのも便利で。だから、モジュレーション・ペダルはぶっちゃけなんでもよくて、今後はストライモンのMobiusとかに変える可能性もありますね。

FLINT(⑩/リバーブ&トレモロ)の使い方も教えて下さい。

 アンプはSHINOS、フェンダーのデラリバ、マーシャルのJTM45の3台を現場ごとに使い分けているんですけど、デラリバ以外はアンプにリバーブがついてないんですよ。なので、FLINTのリバーブ・チャンネルをアンプのスプリング・リバーブの代わりにしています。デラリバを使う時は、FLINTで濃い目のリバーブをセットすることもありますね。

 トレモロ・チャンネルはロジャー・メイヤーのVoodoo-Vibe風の揺れ感を作っています。ロジャー・メイヤーも持っているんですけど、そっちは筐体がデカくてボードに入らなくて。

ボリューム・ペダル(⑪)に、BOSSの昔のモデルを使っているところも気になりました。

 色んなボリューム・ペダルを試したんですけど、僕はこのFV-100が一番好きな音色でしたね。音だけでなくボリューム・カーブも使いやすいので、ヤフオクとかで何個も買っていて。

 この前のライブで、シンセのサイド・チェイン的なのをギターでプレイするシーンがあったんですが、これだと凄く上手くできて(笑)。自分の体にこのペダルのボリューム・カーブが染みついているんでしょうね。

⑪BOSS/FV-100(ボリューム・ペダル)
オークションなどで何個も買い集めているというBOSSのFV-100(⑪/ボリューム・ペダル)。

最後段のTIMELINE(⑫/マルチ・ディレイ)で、お気に入りのモードはありますか?

 dTAPE、DIGITAL、REVERSE、LO-FIあたりはよく使いますね。現場によってエクスプレッション・ペダルをつなげることもあります。

⑫strymon/TIMELINE(マルチ・ディレイ)
strymonのTIMELINE(⑫/マルチ・ディレイ)。誤動作防止のため、ツマミにカバーを被せてある。

ありがとうございます。それでは最後に、このボードのテーマを教えて下さい。

 現場で自分のイメージどおりの音をすぐに作れるっていうところを意識しました。Custom Over Drive(④)のようにツマミを足で操作して、直感的なプレイもできる。そういう意味では、このボードのテーマは“可変”ですね。