みの×ギルド・ギター6番勝負! 注目の最新ラインナップを徹底試奏 みの×ギルド・ギター6番勝負! 注目の最新ラインナップを徹底試奏

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みの×ギルド・ギター6番勝負! 注目の最新ラインナップを徹底試奏

ポール·サイモン、バディ·ガイ、マディ·ウォーターズ、山下達郎など、名手たちが好んで使用するギルドのギター。長い歴史を持つ伝統的なブランドだが、果たして現在のギルド・ギターの実力はどうなのか? YouTuberとしても広く知られ、気鋭の音楽評論家でギタリストの“みの”が、ベースを含む計6本を徹底レポートする。

取材・文:辻昌志 撮影:小原啓樹
※本記事はギター・マガジン2024年4月号に掲載された『伝統と革新のギルド·ギター』を一部抜粋/再編集したものです。
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1. STARFIRE I DC

Starfire I DC(前面)
Starfire I DC(背面)

レジェンドらを魅了したギルド・エレキの代表格

1960年に誕生以来、バディ・ガイやデイヴ・デイヴィス(ザ・キンクス)、トム・フォガティ(CCR)などを魅了してきたギルド・エレキ・ギターの代名詞的存在=スターファイアー・シリーズ。ダブル・カッタウェイのセミアコ仕様である本器は、ピックアップに自社製ハムバッカー2基をマウント。ビンテージ・ライクで芳醇なギルド・サウンドを味わえる。ネックは薄めのUシェイプ仕様で、オリジナルのビブラート・テイルピースもクールだ。

プルした状態のボリューム・ノブ
各PUのボリューム・ノブはプッシュ/プルでコイル・タップが可能。よりブライトなシングル・サウンドも出せる。

1967年以前のロック・ ギターの良い音がします。

みの&STARFIRE I DC
 

『The Kink Kontroversy』(ザ・キンクス/65年)のジャケットに写っていて、憧れたスターファイアー。これもまさに60年代のガレージ・サウンドが出ますよ。さらにニッチに言えば “1964~66年”の音に近いですね。

67年になるとジミヘンやクリーム、ジェフ・ベック・グループなどの時代になって歪みの質が変わりますけど、それ以前のロック・ギターの良い音がします。アンプのナチュラルなクランチと相性が良くて、ミッドもしっかり出ていて、リッチさもあるというか。フィードバック音も超気持ち良いし、ギター側でトーンを絞った音も使えますよ。

コイル・タップした時のサウンドは、パリンとした音になってカッティングも合いますが、シティ系というよりはいなためのテイストにフィットするかも。スティーヴ・クロッパーや60年代のJBのイメージですかね。

あとはネックが薄めなので、初心者や女性でも負担なく弾けるギターかと思います。

STARFIRE I DC

【スペック】
●ボディ:メイプル
●ネック:マホガニー
●指板:ローズウッド
●フレット:22
●スケール:629mm
●ピックアップ:ギルドHB-2×2
●コントロール:ボリューム×2(プッシュ/プル・コイルタップ)、トーン、3ウェイ・ピックアップ・セレクター
●ブリッジ:ギルド・チューン・オー・マティック with ギルド・ビブラート・テイルピース(※チェリー・レッドのみストップ・バー・テイルピース)
●ペグ:ギルド・ビンテージ18オープン・ギア
●カラー:エメラルド・グリーン(写真)、ペルハム・ブルー、チェリー・レッド、カリフォルニア・バースト
●付属品:ギルド・プレミアム・ギグ・バッグ

【価格】
115,500円(税込)

2. STARFIRE BASS II

STARFIRE BASS II(前面)
STARFIRE BASS II(背面)

オール・マホガニーのボディにアップデートしたPUを搭載

スターファイアー・ベースと言えば、かつてはフィル・レッシュ(グレイトフル・デッド)やジャック・キャサディ(ジェファーソン・エアプレイン)、最近ではトム・ヨークがザ・スマイルで使用する隠れた本格派セミアコ・ベース。本器のピックアップ=BS-1 BiSonicは、60~70年代のギルド・ベースに搭載されていたBS-1をアップデートした逸品である。オール・マホガニーの温かなサウンドを保ちつつ、モダンにも攻められる1本。

ピックアップ・セレクターとマスター・ボリューム
1弦側ホーンに配されたピックアップ・セレクターとマスター・ボリューム。ノブの値がわかる金属の目印があるのも嬉しい。

適度に腰高でワルな音。ギタリストにも弾きやすいです。

みの&STARFIRE BASS II
 

まずこれ、ネックが凄く弾きやすいです。“ギタリストが弾くベース”という視点から申し上げると、本格的なベースを持った時の“うわ、弾きにくっ”っていう感じがないんですよね。2フレット先を小指で押さえるあの感じがない……と言えば伝わりますかね(笑)? とにかく、気軽に手に取って弾けます。

ブランドで言えば、昔のヘフナー感がありますね。そういう意味では、フラットワウンド弦とも相性が良さそうです。

ピックで弾いても良い感じですねぇ~。そして適度に腰高だから、ワルな音がするというか。ガシガシ弾けて凄く気持ち良い。こう手首をしならせて……チャス・チャンドラー(アニマルズ)とか、60年代のベーシストっぽく弾いてみたくなるな。

そして歪ませてみると、この音、めっちゃエロスがありますよ。音がグチャっとつぶれず、きれいに歪みが乗ります。8分音符のダウンで刻むと、パンキッシュな感じもいけますね。歪みの許容量が大きいのでしょう。最高に素敵な音ですよ。

STARFIRE BASS II

【スペック】
●ボディ:マホガニー(※エメラルド・グリーンとフレイム・メイプル・カラーのものはメイプル)
●ネック:マホガニー(with メイプル)
●指板:エボニー
●フレット:21
●スケール:781mm
●ピックアップ:ギルドBS-1 BiSonic×2
●コントロール:ボリューム×3、トーン×2、3ウェイ・ピックアップ・セレクター
●ブリッジ:ギルド・アジャスタブル・ベース・ブリッジ with エボニー・サドル
●ペグ:グローバー142Cビンテージ・スタイル
●カラー:ナチュラル(写真)、エメラルド・グリーン、フレイム・メイプル
●付属品:ギルド・デラックス・ハードケース

【価格】
247,500円(税込)

3. SURFLINER

SURFLINER(前面)
SURFLINER(背面)

裏通しのオフセット・ボディ! 今のギルドが打ち出す完全新作

マディ・ウォーターズが使ったS-200など、ソリッド・エレキの製作にも定評があるギルド。本器サーフライナーは、そんな60~70年代のビンテージ・ギルドにインスパイアを受けて生まれたオリジナル・シェイプのギターだ。リアのハムバッカーには、60年代のギルド・ハムバッカーの音を完全再現したLB-1を搭載。各PUは個別のスイッチでオン/オフができる仕様で、計7パターンの音作りが可能となっている。23フレット仕様も個性的。

ヘッド角
テンションを考慮してヘッドには角度がつけられている。弦裏通し構造と相まって、張りのあるテンション感を確保!

トム・ヴァーレインなど、ニューヨーク・パンクにも合いそう。

みの&SURFLINER
 

いわゆるSTタイプのハーフ・トーンとも違う、独特の鈴鳴り感……。フロント&センターPUの音に、そういう印象を受けました。リア・ハムバッカーはフィルタートロンの音に近い気がするけど、このギター固有のサウンドが出ますね。

歪ませると、ファットにドライブするというよりはノイジーで汚れた味のある音が得られます。リバーブを深めにして、ウェットにしても良い音ですね。

モデル名のとおり、サーフ系はバッチリ。もしもディック・デイルやカール・ウィルソン(ビーチ・ボーイズ)が当時持ってたら、ちょっと面白かったのでは?

トム・ヴァーレイン(テレヴィジョン)とか、ニューヨーク・パンク勢にも合いそうだし、リッキー・ウィルソン(The B-52’s)にも似合いそう。カッティングでジャキジャキするのも気持ち良いから、シティ・ポップみたいな音楽にもマッチしそうです。

このややビザール感と、ミッド・センチュリー感のあるルックスもイカしていると思いますね。

SURFLINER

【スペック】
●ボディ:ポプラ
●ネック:メイプル
●指板:メイプル
●フレット:23
●スケール:648mm
●ピックアップ:ディアルモンド・エアロソニック(フロント、センター)、ギルドLB-1(リア)
●コントロール:ボリューム、トーン、ピックアップ・オン/オフ・スイッチ×3
●ブリッジ:チューン・オー・マティック
●ペグ:ギルド・ビンテージ・スタイル
●カラー:ホワイト・セージ(写真)、カタリーナ・ブルー、サンセット・オレンジ
●付属品:ギルド・プレミアム・ギグ・バッグ
●重量:3.3kg

【価格】
82,500円(税込)

4. D-55

D-55(前面)
D-55(背面)

古くからのファンを惹きつける、ギルドの王道ドレッドノート

ウェイロン・ジェニングスやジョン・レンボーン(ペンタングル)、ビリー・ジョー・アームストロング(グリーン・デイ)など、多くのアーティストに愛されたD-55は、68年にカスタムメイド品として登場し、74年にレギュラー化したモデル。USA製の本器は、アディロンダック・スプルースを用いたスキャロップド・ブレイシングを採用。フィニッシュは極上のニトロ・セルロース・ラッカーで、古くからのギルド・ファンの心もくすぐるだろう。

ヘッド
エボニーの突板に“ピーク&シールド”と呼ばれる逆三角形型インレイが輝く、ギルドで最も象徴的なヘッド・デザイン。

煌びやかで粒立ちが上品な音、レコーディング映えしそうです。

みの&D-55
 

面白い。例えるなら、 “(持った感じの)入り口はマーティンで(音の)出口がギブソンっぽい”というか。

ギルドはもともとエピフォンにいた職人が集まってできたブランドですよね? だからなのかわかりませんが、ギブソンに近い魅力はあるんですよ。ワイルドで豊かな倍音を感じるんです。

なおかつ、この個体は粒立ちが上品で、きらびやかで軽やかに弾ける。サイド&バックの木材がローズウッドだから、最初は下の帯域がドーンと出るのかなと思ったんですけどね。不思議だなぁ……何だろう? ジョン・レノンが使っていたJ-160Eみたいなイメージで、少しデッドだけどブライトさがあって、レコーディング映えするような1本かもしれないです。

こういうギターをガシガシ弾いて録音すると、聴いた時に耳を引く音になるというか。それから、やっぱりこの弾きやすさは凄いです。ギルドのギターって、“これを弾くのか……”っていう気負いがなく弾けるから良いですね。

D-55

【スペック】
●ボディ:スプルース(トップ)、ローズウッド(サイド、バック)
●ネック:マホガニー(with ウォルナット・センター)
●指板:エボニー
●フレット:20
●スケール:651mm
●ブリッジ:エボニー
●ペグ:ゴトーSE700オープン・ギア
●カラー:ナチュラル
●付属品:ハードケース

【価格】
737,000円(税込)

5. F-1512

F-1512(前面)
F-1512(背面)

12弦アコギのパイオニアの実力をリーズナブルな価格で味わう

ギルドは12弦アコースティック・ギターを一般化させたブランドだ。本器F-1512はギルドが誇るお尻が大きなボディ・シェイプ=Fを採用、その豊かなトーンを継承しつつもリーズナブルな価格を実現している。ナット幅48mmの堅牢な3ピース・マホガニー・ネック、マザー・オブ・パールのロゼッタやインレイなど仕様面でも充実しており、12弦アコースティック・ギター・メーカーの老舗として看板に偽りナシだ。

マザー・オブ・パールのロゼッタ
サウンドホールにはマザー・オブ・パールのロゼッタが光る。

最初に触る12弦はコレ一択。ずっと弾き続ける1本にもなる。

みの&F-1512
 

弾く時に根性がまったく必要ない(笑)。この軽いタッチで12弦ギターを弾けるのは、かなり貴重なんじゃないですか?

スティーヴィー・レイ・ヴォーンが『MTV Unplugged』(90年)で、ギルドの12弦(69年製のF-412)をガシガシ弾いてますが、こちらも頑張ったら弾ける気にしてくれるというか(笑)。それくらい弾きやすい。

握り込みフォームでもいけるくらい、押弦がしやすいんですよ。アルペジオもスムーズに弾けます。このあたりは、12弦アコギ製作の代表格とも言うべきギルドの貫禄を感じますね。音も軽やかだし、レコーディング使用でも間違いナシのギターかと。

あと12弦ギターって、何を買えば良いのかわからないという問題が常にあると思うんですよね。でも、この弾きやすさなら、最初に触る12弦ギターはコレ一択と言っても過言じゃない。なおかつ、ずっとメインとして弾き続けられるギターにもなると思います。

F-1512

【スペック】
●ボディ:スプルース(トップ)、ローズウッド(サイド、バック)
●ネック:マホガニー
●指板:ローズウッド
●フレット:20
●スケール:648mm
●ブリッジ:ローズウッド
●ペグ:ギルドGシールド・コンパクト・クローズド・ギア
●カラー:ナチュラル
●付属品:ギルド・プレミアム・ギグ・バッグ

【価格】
159,500円(税込)

6. A-20 MARLEY

A-20 MARLEY(前面)
A-20 MARLEY(背面)

ボブ・マーリーが作曲用に使ったギルド・マデイラを復刻

ボブ・マーリーが作曲用として自宅に置き、70年代のヒット曲を数多く作ったという“ギルド・マデイラ”。オリジナルは74年に日本で製作されたものだという調査結果もあるが、その伝説的ギターをモチーフに製作したのがA-20だ。ピックガードに描かれた本人筆致のサイン、オリジナルを再現した丸角のヘッドストックなど、ファン垂涎の仕様が多く盛り込まれている。648mmのスケールのため、抱えやすさも特筆ポイント。

付属のギグ・バッグ
リサイクル・ナイロンを利用したギグ・バッグが付属。

ファンには凄く嬉しいと思う。僕ならスライド用として使うかも。

みの&A-20 MARLEY
 

このギター、ボブ・マーリー・ファンには凄く嬉しいでしょうねぇ。12フレットに名前のインレイが入ってますし、シグネチャーがこの値段で買えるのも嬉しいポイントなのでは。

音はサラッっと口当たりの良い音という印象です。試奏時は弦高が少し高めになっていたので、僕ならオープンGチューニングにしてスライド・ギターを弾くかな。かなり渋めにいけますよ。ライターをスライドとして使っても、いい感じの音になりました(笑)。

抱えてみた感じは、ドレッドノート・サイズのボディとは思えないほどコンパクトなギターを持ってる感じがします。不思議ですね。取り回しが良いってことだし、それこそ自宅用としてアリだと思います。

専用のケースもカッコ良いデザインですが、その素材もリサイクルのナイロン製だったり、あとはこのギターを1本作るごとに植樹をしたり、サステナビリティの観点からも考えられているアコギなんですね。

A-20 MARLEY

【スペック】
●ボディ:スプルース(トップ)、マホガニー(サイド、バック)
●ネック:マホガニー
●指板:パーフェロー
●フレット:20
●スケール:648mm
●ブリッジ:パーフェロー
●ペグ:ギルド・ビンテージ16オープン・ギア
●カラー:ナチュラル
●付属品:専用ギグ・バッグ

【価格】
52,800円(税込)

TOTAL IMPRESSION
一本筋の通った“不良”のギター。革ジャンにギルド、という選択肢を。

みの
みの 1990年アメリカ・シアトル生まれのギタリスト、音楽評論家、YouTuber。ソロ・プロジェクト“ミノタウロス”で活動する傍ら、19年にYouTubeチャンネル上で“みのミュージック”を開設。現在の登録者数は44万人。音楽評論も活発に行なっており、新著『にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史』(KADOKAWA刊)を3月4日に上梓した。

“この音、ギルドっぽいね”って説明できる個性がある。

 ギルドって、僕の中では神話上の生き物のようなイメージだったんです(笑)。デイヴ・デイヴィス(キンクス)が弾いているスターファイアーとか、当時のものが欲しかったけど見つからず、その時の音を追体験をしようとしてもできなかったんですね。でも今日弾いてみると、現代的なアップデートを感じつつも、そのギルド伝統の音に触れられた感じがしました。70年以上のブランドの歴史に通底する音や経験値が、今の新しいギルドにも残っているんですね。

 特にエレキは、“不良のギター”って感じで超クール。スターファイアーはワル~い音が出ましたね(笑)。しかも、筋が通った薄っぺらくない不良感というか。この価格帯で考えたら、めっちゃ良い選択肢だと思いますよ。高校生がひと夏バイトをしたら買える、なんならお釣りが来ると思う。僕なら、そのお釣りで革ジャンも一緒に買え!って薦めたいですね(笑)。

 アコギにも“ギルドの音”としか言いようのない強い個性を感じました。繊細さと豪快さが同居しているんです。一度弾いたら忘れないし、“この音、ギルドっぽいね”って説明できる個性があるというか。特に12弦ギター(F-1512)が良かったですね。12弦って、例えるならアコーディオンと同じように、イコールで特定の景色を作っちゃうような楽器じゃないですか。でも、そういうことに縛られずに使えそうな軽やかさを感じたんです。これはエレキにも言えることで、サーフライナーはシューゲイザーやシティ・ポップで使っても面白いと思う。

 楽器って、ギターは特にそうですけど“あの時のあの音”に縛られずに使うと、新しい景色が見えたりするじゃないですか? ギルドのギターから教わることは、まだまだ多くありそうです。

ギター・マガジン2024年4月号
横山健のギター愛

※本記事はギター・マガジン2024年4月号に掲載された『伝統と革新のギルド·ギター』を一部抜粋/再編集したものです。誌面ではさらにギルドのヒストリーや現社長のインタビューも掲載。

●お詫びと訂正
ギター・マガジン2024年4月号の特集記事『伝統と革新のギルド・ギター』内の、「ギルド・ヒストリー」(86ページ)にて、1965年製F-312、1965年製D-50の写真に印刷不良が発生しました。正しい写真は以下のとおりです。関係者及び読者の皆様にお詫びして訂正します。

1965年製F-312
1965年製F-312
1965年製D-50
1965年製D-50

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