技術の発展と共に進化を続けてきたキャビネット・シミュレーター。近年ではレコーディングだけでなくライブでも取り入れるギタリストが増え、ステージ上に実機のアンプやキャビネットを置かない現場も多く見かけるようになった。
自宅で作り込んだ音をそのまま出力できるキャビネット・シミュレーターは、スタジオやステージ、配信といった様々な場所やシチュエーションで演奏する現代のプレイヤーにとって欠かせないアイテムになっている。
ここではキャビネット・シミュレーター機能を備えた注目のペダル7機種を、ギタリスト青木征洋にレビューしてもらった。
撮影:八島崇
*本記事は、ギター・マガジン2024年4月号の「いつでもどこでもベスト・サウンドを! キャビネット・シミュレーターの世界」を抜粋・再編集したものです。
青木征洋 プロフィール
あおき・まさひろ●作編曲家/ギタリスト/エンジニア。代表作に『ストリートファイターV』、『ベヨネッタ3』、『戦国BASARA3』などがある。自身が主催し、アーティストとしても参加するG5 Project、G.O.D.では世界中から若手の超凄腕ギタリストを集め、『G5 2013』はオリコンアルバム・デイリーチャート8位にランクイン。またMARVEL初のオンライン・オーケストラコンサートではミキシングを務める。
strymon
IRIDIUM
OVERVIEW
定評あるリバーブ・アルゴリズムとステレオIRが豊かな響きを生む
独自のモデリング技術、Matrix Modelingによる3種類のアンプ・モデルを搭載し、アンプごとに3つのキャビネットIRを切り替えて使うことができるペダル。
IRはステレオで、24ビット/96kHz(500ms)の高解像度ファイルを採用している。IRローダーのstrymon Impulse Manager(Mac/Windows)を使うことで、外部IRの読み込みも可能だ。
DRIVE、LEVEL、BASS、MIDDLE、TREBLEといったパラメーターのほか、ルーム・アンビエンスを付加することができるROOMを装備。アーリー・リフレクションのIRと、残響テールを生むstrymonのリバーブ・アルゴリズムを組み合わせることで自然な響きを再現している。
AOKI’s IMPRESSION
こだわって収録されたIRによって音作りに迷うことがない。
どのIRも“ここだ”とこだわったマイク・セッティングで録られているのを感じました。マイク位置などは調整できませんが、パラメーターが絞られていることで迷わずに音作りができるので、まさにキャビシミュ初心者にオススメできるモデルです。
なによりstrymonのリバーブ・アルゴリズムが内包されているのが魅力だと思います。
少しこだわりが出てきたら、外部IRを使ってみるのも良いかもしれませんね。
strymon
IRIDIUM
【スペック】
●搭載キャビネット・モデル数:9(アンプ・モデルごとに3種類、外部IR対応)
●コントロール:DRIVE、AMP(round/chime/punch)、CAB(A/B/C)LEVEL、BASS、MIDDLE、TREBLE、ROOM、FAVスイッチ、ON/OFFスイッチ、STEREO入力設定(MONO/SUM)
●入力端子:インプット(フォーン)EXP/MIDI(TRSフォーン)
●出力端子:アウトL(フォーン)、アウトR(フォーン)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)
●電源:9VACアダプター(別売り)
●外形寸法:102(W)×67(H)×117(D)mm(突起部含む)
●重量:450g
【価格】
オープン・プライス(市場予想価格56,000円前後)
【問い合わせ】
オールアクセス https://allaccess.co.jp
BOSS
IR-200
OVERVIEW
150以上のキャビネット・モデルから2基同時使用が可能なIRペダル
2基のカスタムDSPを備えたアンプ&キャビネット・シミュレーター。プリアンプには往年の機種から同社のMDP技術を採用したものまで、多彩なモデルを用意している。
キャビネットには、144のBOSSオリジナルと10のCelestionによるステレオIRデータを収録(外部IRも読み込み可能)。キャビネットAとBで異なるIRを同時使用できるのもポイントだ。
そのほか、ノイズ・サプレッサーやEQ、アンビエンスといったエフェクトを内蔵しており、センド&リターンで外部エフェクターを使用することもできる。
2系統あるアウトへのルーティングも柔軟で、PAとステージへ違ったサウンドを送出することも可能だ。
AOKI’s IMPRESSION
マイクごとの多彩なIRによってサウンドの違いを学べる1台。
BOSSオリジナルだけでなく、スピーカー・ブランドであるCelestionのIRが入っているのがポイントで、個人的には後者のサウンドが好みでした。
マイクの種類ごとにバリエーションがあって、この1台でマイクによる音の違いを学ぶことができると思います。
アンビエンスではルームとホール・リバーブ、アンビエンス・マイクのシミュレートを選んで響きを調節できるのも便利。拡張性あるI/Oも好印象です。
BOSS
IR-200
【スペック】
●搭載キャビネット・モデル数:154(+ユーザー最大128)
●コントロール:MEMORY、AMP、CABNET、AMBIENCE、MENU、EXIT、GAIN、LEVEL、BASS、MIDDLE、TREBLE、フット・スイッチ×2
●入力端子:インプット(フォーン)、リターン(TRSフォーン)、AUXイン(ステレオ・ミニ)、CTL 1, 2/EXP(TRSフォーン)、MINIイン(ステレオ・ミニ)
●出力端子:アウトプット(A/MONO、B/共にフォーン)、センド(フォーン)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)、MIDIアウト(ステレオ・ミニ)
●電源:ACアダプター
●外形寸法:101(W)×65(H)×138(D)mm
●重量:660g
【価格】
オープン・プライス(市場予想価格44,000円前後)
【問い合わせ】
ローランド https://roland.cm/contact
ZOOM
G2 FOUR
OVERVIEW
3種類のIRを動的にブレンドするマルチレイヤーIR機能を搭載
22種類のアンプ&キャビネットと79種類のエフェクトを内蔵したマルチ・エフェクター。同シリーズのG1 FOUR/G1X FOURから大きく進化したのが、新たにマルチレイヤーIR機能を搭載したキャビネット・シミュレーター部だ。
実際のキャビネットは、再生されるギター音の音量に合わせてコーンの鳴り方が変わるが、1つのIRファイルのみではその挙動まで再現することは難しい。G2 FOURではギターの音量ごとに収録した3種類のIRを搭載。入力音に合わせて自動でブレンドされるようになっており、リアルなキャビネットのトーンを得ることができるようになっている。
ペダルが備わったG2X FOURも発売中だ。
AOKI’s IMPRESSION
ギタリストのプレイにも影響する有機的な響きを再現できている。
入力音量でIRが切り替わるので、強く弾いた時はひしゃげたように、弱いタッチではキラッとした部分が残り、演奏に追従して音の輪郭に変化が出てくれる印象です。単一のIRのみとは違った、リッチなリアクションが得られるシミュレーターですね。
本来キャビネットは凄く表情豊かに音を出す機材で、その音の反応がギタリストの演奏にも影響します。そんな有機的な響きに近づいたペダルだと感じました。
ZOOM
G2 FOUR
【スペック】
●搭載キャビネット・モデル数:22
●コントロール:カーソル・キー×4(▲、▼、▲、▲)、パラメーター・ノブ×4、フット・スイッチ×3
●入力端子:メイン(フォーン)、AUXイン(ステレオ・ミニ)
●出力端子:メイン(フォーンL/R)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)
●電源:ACアダプター、USBバス・パワー
●外形寸法:184(W)×71(H)×145(D)mm
●重量:707g
【価格】
オープン・プライス(市場予想価格24,000円前後)
【問い合わせ】
ズーム カスタマーサポートセンター TEL:0570-078206 https://www.zoom.co.jp/ja
Two notes
Opus
OVERVIEW
マイクの距離や角度まで追い込める膨大なIRを内包したシミュレーター
長年ロード・ボックスやアンプ&キャビネット・シミュレーターを手掛けてきたTwo notes。同社の新製品として発表されたのがOpusだ。
シンプルな2ノブの筐体にアンプ&キャビネット・シミュレーターの機能が詰め込まれており、アンプはプリアンプ部とパワー・アンプ部をそれぞれ設定可能。
キャビネットはIRだが膨大なファイルを収録しており、マイクの種類(8種類の中から2本を選択可能)やキャビネットからの距離の設定、ルーム・エミュレートも行なえる。
エレキ・ギター/ベースだけでなく、エレアコ用IRが多く搭載されているのも特徴だ。
各設定は専用ソフトやアプリから視覚的にエディットができる。
AOKI’s IMPRESSION
即戦力のサウンドが内蔵エンハンサーでさらに磨かれる。
アンプ部がプリとパワーで別々にコントロールできるというのが良いですね。
自前のアンプ・ヘッドを使いたい場合、センドから出すとパワー・アンプ回路を通りませんが、Opusにつないでプリアンプをオフに、パワー・アンプをオンするという使い方ができます。
IRももちっとした質感の即戦力になるサウンドで、内蔵エフェクトのエンハンサーとの組み合わせで、より良いレスポンスを表現してくれました。
Two notes
Opus
【スペック】
●搭載キャビネット・モデル数:32(追加購入や外部IR対応、マイク切り替え可能)
●コントロール:PRESET/PARAM、VOLUME/VALUE、インプット・レベル切り替え(AMP/LINE/INST)、グラウンド・リフト・スイッチ
●入力端子:AMP/INSTRUMENT/LINE(フォーン)、MIDIイン(ステレオ・ミニ)、AUXイン(ステレオ・ミニ)
●出力端子:TO SPEAKER(フォーン)、DIアウト(XLR)、ライン・アウト(フォーン)
●電源:12VACアダプター
●外形寸法:100(W)×60(H)×121(D)mm(突起物含む)
●重量:450g
【価格】
オープン・プライス(市場予想価格58,080円前後)
【問い合わせ】
日本エレクトロ・ハーモニックス https://www.electroharmonix.co.jp
Universal Audio
UAFX OX Stomp Dynamic Speaker Emulator
OVERVIEW
老舗レコーディング機器ブランドがキャビネットの名機をモデリング
IRではなく、Dynamic Speaker Modelingと呼ばれるメーカー独自のモデリングによってキャビネット・サウンドを再現するペダル。
本体上ではシンプルな操作のみできるが、UAFX Controlアプリ(iOS/Android)で詳細な設定が可能だ。
往年の名機を中心とした22のキャビネット・モデルを内蔵しており、キャビネットへのマイクは6種類(+DI)から2本、ルーム・マイクは6種類から選ぶことができる。キャビネットのブレイク・アップ具合を調整するSPEAKER DRIVEも搭載している。
また、1176を再現するコンプやEQ、ステレオ・ディレイ、モジュレーション、プレート・リバーブも使用可能だ。
AOKI’s IMPRESSION
圧倒的な自信を感じさせるナチュラルな響きのモデリング。
ビンテージ機器のモデリングに定評あるブランドらしく、リアリティ重視のサウンドです。アンプ・シミュレートはないですが、その分“キャビネット部分はOX Stompに任せろ”という圧倒的自信が感じられます。
キャビネットのマイクだけでなくルーム・マイクもとても自然な響きで、良いスタジオで鳴らしているようなサウンドです。
やはりビンテージ・サウンドにこだわりを持つ方にオススメしたいですね。
Universal Audio
UAFX OX Stomp Dynamic Speaker Emulator
【スペック】
●搭載キャビネット・モデル数:22(それぞれでマイクの設定が可能)
●コントロール:ROOM、SPEAKER DRIVE、OUTPUT、マイク切り替えスイッチ×2(DYNAMIC/CONDENSER/RIBBON)、MIC 1、RIG(1~6)、MIC 2、フット・スイッチ×2(A、B)
●入力端子:インプット1/MONO(フォーン)、インプット2/STEREO(フォーン)
●出力端子:アウトプット1/MONO(フォーン)、アウトプット2/STEREO(フォーン)
●電源:9VACアダプター(別売り、400mA)
●外形寸法:92(W)×65(H)×141(D)mm
●重量:588g
【価格】
61,600円(税込)
【問い合わせ】
フックアップ TEL:03-6240-1213 http://www.hookup.co.jp
IK Multimedia
TONEX Pedal
OVERVIEW
AI Machine Modeling機能で自分だけのトーンをキャプチャーできる
実機のアンプ&キャビネット(+エフェクター)で作り込んだサウンドを精密にキャプチャーできるAI Machine Modelingを搭載するペダル。
実機のパラメーターの動きをモデリングするわけではなく、作ったトーンをリアルに再現する技術で、IRやモデリングとはまた違った性能を発揮する。
キャプチャーしたサウンドは“トーン・モデル”と呼ばれ、自身の機材でも生成できるほか、世界中のユーザーがトーン・モデルをシェアしており、それらをインポートすることも可能だ。
トーン・モデル以外にも、膨大なIRを使ってマイクやルームのシミュレートが行なえるVIR機能、外部IRローダーも使用することができる。
AOKI’s IMPRESSION
使いたい音が明確に決まっているギタリストにピッタリ
静的な表現になってしまいがちなIRとは違って、AIによるモデリングでダイナミクスや周波数特性の変化といった動的な部分をシミュレートされているように感じます。
“この機材の組み合わせを、このパラメーターで使いたい”と、サウンドのビジョンが定まっているギタリストにはピッタリです。
自分でトーン・モデルを作る際も、付属ソフトにガイドに従って進めるだけなので、迷わず行なえると思います。
IK Multimedia
TONEX Pedal
【スペック】
●搭載キャビネット・モデル数:1,100種類のTone Modelを使用可能(+ユーザーTone Model)
●コントロール:MODEL、PRESET、PARAMETER、GAIN、BASS、MID、TREBLE、VOLUME、フット・スイッチ×3(A、B、C)
●入力端子:インプット(フォーン)、MIDIイン、EXT.CONTROL(TRSフォーン)
●出力端子:アウトプットL/MONO(フォーン)、アウトプットR(フォーン)、ヘッドフォン・アウト(TRSフォーン)、MIDIアウト
●電源:9VACアダプター
●外形寸法:176(W)×55(H)×142(D)mm
●重量:906g
【価格】
69,300円(税込)
【問い合わせ】
フックアップ TEL:03-6240-1213 http://www.hookup.co.jp
Fender
Tone Master Pro
OVERVIEW
フェンダーのデジタル技術が結集した初のサウンド・プロセッサー
フェンダー初のデジタル・サウンド・プロセッサー。7インチのタッチ・ディスプレイと、回すことでパラメーター調整もできるフット・スイッチで快適な操作性を実現している。
アンプやキャビネット、エフェクトのモデリングは100種類以上。27モデルが選べるキャビネットのIRは数千にも及び、マイクの種類や角度、距離を設定可能だ。
マイクはギター録音で定番のダイナミック/コンデンサー/リボン・マイクのモデルを7種類用意している。
内部のルーティングでパラレルを選べば、2台の異なるキャビネットをステレオで鳴らすことも可能。また外部IRファイルの読み込みにも対応している。
AOKI’s IMPRESSION
質の高いモデリングとIRで鳴らした瞬間から納得できる音。
やはり搭載しているフェンダー・アンプのモデリングとIRの質が高いですね。最初のプリセットを鳴らした瞬間から納得感のある響きが出てきてくれました。
キャビネットのマイキングは自由にポジションを動かせるのではなく、4×8のグリッドから指定するようになっています。
初心者にとってはプリセットを選ぶ感覚で使えますし、上級者も経験から“このポイントかな?”と狙った音へたどり着きやすいと思いますね。
【スペック】
●搭載キャビネット・モデル数:27(外部IR対応)
●コントロール:ナビゲーション・コントロール、マスター・ボリューム、タッチ・スクリーン、ロータリー・エンコーダー兼フット・スイッチ×10、グラウンド・リフト・スイッチ
●入力端子:マイク/ライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)、インスト・イン(フォーン)、ループ・リターン×4(1~4)、AUXイン(ステレオ・ミニ)、EXP×2(フォーン)、TOE SWITCH(フォーン)、AMP CTRL(TRSフォーン)、MIDIイン
●出力端子:アウトプット1 L/R(XLR L/R、フォーン L/R)、アウトプット2 L/R(フォーンL/R)、ループ・センド×4(1~4)、ヘッドフォン・アウト(TRSフォーン)、MIDIアウト/スルー
●電源:100~240V電源
●外形寸法:371(W)×96.4(H)×261.6(D)mm
●重量:4kg
※ファームウェア・アップデートv1.2.56が公開中(新機能追加や操作性の向上など)
【価格】
オープン・プライス(市場予想価格220,000円前後)
【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 https://www.fender.com
総評
最後に、青木が考えるキャビネット・シミュレーターの現在、そしてこれからについて語ってもらった。
IRをどう扱うのか、その仕組みが洗練されてきた。
様々なキャビネット・シミュレーター・ペダルを試しましたが、いかがでしたか?
同じ環境で一度に試聴するのはなかなかないことですし、新鮮な体験になりました。キャビネットのシミュレーターが出音に影響するのはもちろん、その前段にあるアンプなどの入力部分がキャビネット・シミュレーターへ与える影響の大きさも再認識できましたね。
近年は多くのメーカーからシミュレーターが出ていて、その価格もサイズも様々です。初めて導入する人にとっては悩みのタネですね。
もちろん価格が上がると入出力数が多くなったり、そもそものIRやモデリングの質が上がるものが多いですが、今回試した製品たちはそれぞれの強みを持っているのが印象的でした。やっぱり世の中のギタリストの数だけスタイルがあって、それらをカバーできる製品が日々生まれているのだろうなと感じます。
とにかく試奏して判断するのは大事ですね。キャビネット・シミュレーターはヘッドフォン・アウトがあるものが多いので、楽器店で試奏する際も違いがわかりやすいのではないでしょうか。
シミュレーターの進化というのは感じましたか?
ギタリストにとってIRファイルをどう扱えると良いのかを考えて開発され、それが洗練されてきているのを感じました。グラフィック・インターフェースで視覚的にマイキングできるのか、逆にポイントを絞って音作りの近道にするのか……様々な考え方があると思います。
昔であれば“シミュレートするのは3種類のみ!”みたいなものが多くありましたが、世の中のギタリストがデジタルの分野に詳しくなるのに合わせて、機材も発展してきていますよね。これからも良くなっていってほしいし、ギタリストもそれに追いついていきたいところです。
IRの質の向上については?
IRの技術そのものに関してはそこまで大きな進化というものはないと思いますが、“レコーディングの技術や知識がある人”が各製品の開発にしっかり携わっているのだろうと感じます。
どういうマイクを、どんな位置で、どんな場所で録るのかはIRの質に大きく関わってきますし、録る人の腕の差がでやすいでしょう。優れたスタッフがこのフィールドに参入してきているのだろうなと思います。
本来のダイナミクスを復元する技術が広まるかも。
青木さんが今回試奏する中で印象に残った製品は?
Two notes Opusですかね。プリ/パワー・アンプのシミュレートだったり、専用アプリのデザインだったり、ユーザーのことをわかっているなと。Two notesは長年キャビネット・シミュレーターを開発してきて、ロード・ボックスのノウハウもしっかり持っているメーカーですが、プリアンプとパワー・アンプのモデリングまで加えてきたことには少し不安もあって。でも実際に試してみたところ、やっぱり彼らは良いアンプの音を判断できる耳をしっかり持っていると実感し、安心できたんです。
あとはフェンダーのTone Master Pro。アンプ・モデリングの質も素晴らしく、キャビネットのIRも実践的なポイントで録音されていて、フェンダーの技術力の高さを体感しました。
今後、キャビネット・シミュレーターの技術はどのようになっていくと思いますか?
録られたIRから、本来キャビネットが持っているダイナミクスを復元するような方法が広まっていくのかなと思いますね。そうなるとアンプ・シミュレーターの性能もより発揮することができますし、実機にマイクを立ててレコーディングした音と、シミュレーターからのライン音の差というのはどんどんと埋まっていくような気がしますね。
ギター・マガジン2024年4月号
『横山健のギター愛』
本記事はギター・マガジン2024年4月号に掲載された「いつでもどこでもベスト・サウンドを! キャビネット・シミュレーターの世界」を一部抜粋/再編集したものです。本誌ではキャビネット・シミュレーターの基礎知識など、さらに役立つ情報も紹介しています。