2024年6月下旬から7月上旬にかけて、第5期のWANDS(2019年〜)としては初となる東名阪ホール・ツアー“WANDS Live Tour 2024 ~BOLD~”が開催された。本記事では柴崎浩(g)が本ツアーで使用した5本のギターを紹介。本人から直接話を聞いた。
取材・文=原田右恭 機材撮影=小原啓樹
NISHGAKI GUITARS
Amnis Novus “Hiroshi Shibasaki Specs”
新たなトレードマークとなったシグネチャー
近年のメイン・ギターは、兵庫県三木市にあるNISHGAKI GUITARSで2018年に製作された柴崎のオリジナル・モデル。柴崎の要望が随所に落とし込まれている。
長らくEMG搭載ギターのユーザーだった柴崎だが、そろそろ違うフィーリングのギターが欲しいと思っていた頃、ルシアーの西垣祐希氏と話す中でオリジナル・モデルの製作を打診されたという。柴崎はそれに対し、ネック・グリップとプレイ・アビリティを重視したうえで、出したいサウンドを箇条書き的に伝え、ギターの構造や材などは一旦お任せで作ってもらったと語る。曰く、“硬質なサウンドが持ち味で、強く歪ませてもアタック音がぼやけないところが好み”とのことだ。
現在、本モデルは柴崎のシグネチャー・ギターとして販売されており、本器のスペックは基本的に販売されているシグネチャーと同じ。しかし、2点のみ改造されており、フロント・ピックアップがSuhrのThornbuckerからBudz Pickups製のハムバッカーへ交換され、ピックアップ・セレクターが3wayから6wayに変更されていた。
使用楽曲(2024年7月8日@東京ガーデンシアター)
- 空へ向かう木のように
- honey
- 真っ赤なLip
- RAISE INSIGHT
- もっと強く抱きしめたなら
- 時の扉
- 愛を語るより口づけをかわそう
- 愛を叫びたい
- WONDER STORY
- カナリア鳴いた頃に
2020 Suhr
Limited Classic ST SSH
「世界が終るまでは…」などで活躍した新たなSSH
第5期WANDSにて、これまでSSHのギターが必要なシーンでは、メイプル指板のJames Tyler Guitarsを使ってきた柴崎。しかし、柴崎的にはメイプル指板よりもインディアン・ローズ指板のほうが好みであったため、2022年頃に本器を購入し、バトンタッチしたとのこと。
ピックアップはフロントとセンターをSuhrのV63に、リアをSuhrのThornbucker Ⅱに交換。ブリッジもGOTOHのEV510に交換されている。フレットはNISHIGAKI GUITARS製のシグネチャー・モデルと同じく、ステンレス製のスーパー・ジャンボ・フレットに打ち替えられていた。また本来のボリューム・ノブはストロークの邪魔になるためはずされており、マスター・ボリューム、マスター・トーンという2ノブ仕様になっている。
柴崎曰く、“いまだにJames Tyler Guitarsを使うか、このギターを使うか悩ましい”とのことだが、明るいけれどギラつきすぎない鳴りと、スタイリッシュな見た目を持つ本器をよく使うとのこと。
使用楽曲(2024年7月8日@東京ガーデンシアター)
- Secret Night
- SHOUT OUT
- 大胆
- 世界が終るまでは…
- David Bowieのように
- 賞味期限切れ I Love You
- FLOWER
2008 Suhr
Modern Limited Edition
ドロップDチューニングで使用された1本
チューニングをシビアに気にする柴崎が、第5期WANDSの活動開始時からダウン・チューニング用として使用する1本。フロイド・ローズとロッキング・ナットを搭載しているため、6弦をドロップしてもテンション感が変わらず、正しいチューニングで演奏できる。
本器はSuhrが設立10年を記念し、2008年に100本限定で販売した限定モデル。ボディ・トップにキルト・メイプル、バックにマホガニー、指板にアフリカン・ローズを採用したゴージャスな仕様だ。ヘッド裏には71本目を表わすシリアル“071 of 100”の刻印と、名匠ジョン・サーの直筆サインが入っている。
ピックアップは柴崎のお気に入りであるSuhrのThornbuckerに交換。スプリングは以前まで3本のハの字張りだったが、現在は2本のハの字張りに変更されている。
使用楽曲(2024年7月8日@東京ガーデンシアター)
- Burning Free
- MILLION MILES AWAY ver.5.0
EVH
Wolfgang Special
激しいアーミングを可能にするギター
2023年の2月頃に入手した、フロイド・ローズ搭載のモデル。柴崎はMusic Manのヴァン・ヘイレン・モデルを所有しているが、ピックアップ・ノイズや指板のラディアスに若干の不満があったそうで、乗り換えのための研究材料として本器を購入したと語る。
今回のツアーでは「We Will Never Give Up」のみで登場。本楽曲のレコーディングで弾いた2音のベンドを伴うアーミング・フレーズを忠実に再現するため、ライブでも使用したとのこと。
使用楽曲(2024年7月8日@東京ガーデンシアター)
- We Will Never Give Up
Music Man
JP7 John Petrucci Signature
ヘヴィなサウンドをクリアに届ける7弦
柴崎がサポートを務めるT.M.Revolutionの現場などで、2010年以降、頻繁に登場している7弦仕様のジョン・ペトルーシ・モデル。シリアル・ナンバーは“F44742”だ。
ライブでは「GET CHANCE GET GROW」のみで使用。というのも、本楽曲はレギュラー・チューニングの6弦ギターと、バリトン・ギターの2本を使ってレコーディングされた曲なのだが、ライブでは2本のギターを同時に演奏できないため、7弦の本器を活用しているとのこと。
バリトン・ギターでは表現しづらいAメロでのアルペジオや、細かいシーケンス・フレーズでのピッチの精度など、音源のフレーズの再現に一役買っている。
使用楽曲(2024年7月8日@東京ガーデンシアター)
- GET CHANCE GET GROW
Picks
ピックは3種類を使用。メインは、写真手前にあるMASTER 8 JAPAN製のシグネチャー・モデル(非売品)と思われる。柴崎は長らくマンドリン・ピックを愛用している。