第5回:伝説のフェスの開始を告げたギルドの音色 『今ふり返る、ギルド・ギターズの正しい歴史』 第5回:伝説のフェスの開始を告げたギルドの音色 『今ふり返る、ギルド・ギターズの正しい歴史』

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第5回:伝説のフェスの開始を告げたギルドの音色 『今ふり返る、ギルド・ギターズの正しい歴史』

ギルド・ギターズの誕生から現在までをふり返る短期連載『今ふり返る、ギルド・ギターズの正しい歴史』。第5回は、アメリカを代表するブランドとして認知されるようになった1960年代後半〜1970年代前半が舞台。その大きなきっかけとなる、伝説のウッドストック・フェスティバルでギルドの音色が大観衆を沸かせた“大事件”から物語はスタート!

文=長谷鉄弘 デザイン=三本昌樹 Photo by Ralph Ackerman/Getty Images

ウッドストック・フェスティバルで大観衆を沸かせたギルドの音

1969年8月15日には、多くの音楽ファンの記憶に残るとともに、ギルド・ギターズの社史にも長く刻まれる“事件”が起きた。この日から8月17日までの3日間にわたり開催された大規模コンサート・イベント“ウッドストック・フェスティバル”のオープニング・アクトとして、リッチー・ヘヴンスとポール“ディアノ‏/ディーノ”ウィリアムズがともにギルドのフラットトップを持ってステージへ上がったのだ。

当時、28歳の若さだったヘヴンスは、ほかのミュージシャンたちの会場入りが遅れていたため急遽、オープニングでの出演を要請され、ステージを引き伸ばして時間を稼がなければならなかったが、そんな事情など微塵も感じさせない熱いパフォーマンスを披露し、膨大な観衆(3日間で40~50万人に達したと言われる)を沸かせた。

Richie Havens
ウッドストック・フェスティバルでのリッチー・ヘヴンス。写真ではわかりづらいが、ヘヴンスの激しいピッキングにより、ボディの6弦側の塗装が大きく剥がれているのが確認できる(Photo by Archive Photos/Getty Images)。

1970年公開の映画『ウッドストック‏/愛と平和と音楽の三日間』に収録された「Freedom / Sometimes I Feel Like a Motherless Child」では、D-40を弾くヘヴンスの前に2本のダイナミック・マイクが立っている様子や、ウィリアムズが弾くF-47と思われるモデルの指板終端部にマグネティック・ピックアップが増設されている(※)ことが確認できる。イントロではヘヴンスがひとりでギターを弾き、エンディングでは彼がマイクを離れてバック・ステージへ去っていく間もウィリアムズが演奏を続けているため、両者の音色を聴き分けることが可能だ。

※:サウンドホール前にはマイクも立てられており、ピックアップの出力をPAシステムへ送っていたかどうかは不明。改造はファクトリーでなされたようにも見える。

この映像は、1960年代後半のアメリカを中心とするカウンター・カルチャーが最盛期を迎えた瞬間の記録として世界中で視聴され、無数の人々にギルド・ギターの存在感を大きくアピールした。1950年代前半の創業以来、着実に成長を続けてきたこのメーカーにとっても、ウッドストックはある種の“ブレイクスルー”をもたらした出来事だったと思われる。

GUILD/D-40

アメリカを代表するギター・ブランドへ

ウェスタリーという新しい生産拠点を得たギルドが増加の一方を辿る需要に応えつつ、“G”シリーズ・フラットトップをはじめとする新機種を精力的にリリースした1960年代末~70年代には、その製品の愛用者も実に多彩な顔ぶれとなっていた。スタンダード・ナンバーとして日本でも親しまれる「カントリー・ロード(故郷へかえりたい)」(1969年)を歌ったジョン・デンヴァーは、F-50Rをもとに“アーティスト・アワード”に準ずるヘッド・インレイとダブル・ピックガードを追加したF-50“Special”などを弾き、カントリー・シーンにおけるギルドの人気を高めている。

ほかにもF212-XLをはじめ数本の12弦ギルドを愛用したティム・バックリー、D-55を弾いた元ザ・ペンタングルのジョン・レンボーン、1960年代前半からギター・インストゥルメント・シーンで高い人気を誇り、“DE”シリーズ・シグネイチャー・モデルを発売したデュアン・エディ、S-200“Thunderbird”ソリッド・ボディのラディカルなデザインを好んだマディ・ウォーターズ、F-50Rをトレードマークとするスライド・ギター界の紅一点であるボニー・レイット、極めてレアなF-612“Custom”を所有するザ・フーのピート・タウンゼンドら、代表的な名手を挙げるだけで紙幅が埋まってしまうほどだ。

これらの顔ぶれからは、当時のギルドが特定の音楽ジャンルに留まらないあらゆるミュージシャンの支持を得て、アメリカを代表する楽器メーカーになっていたことを実感できるのではないだろうか。

Muddy Waters
1968年5月の英BBCテレビでのライブでギルドのS-200を弾くマディ・ウォーターズ(Photo by David Redfern/Redferns)。
GUILD/S-200 T-Bird

著者プロフィール

長谷鉄弘(ながや・てつひろ)◎1970年生まれ。『ギター・マガジン』、『ギター・グラフィック』(いずれも小社刊)などの編集部員を経て1996年に独立。現在はライターとして、『ギター・マガジン』や『アコースティック・ギター・マガジン』、『The Effector Book』(シンコーミュージック)などに寄稿。

GUILD/Electric Guitar
GUILD/Acoustic Guitar