ギルド・ギターズの誕生から現在までをふり返る短期連載『今ふり返る、ギルド・ギターズの正しい歴史』。最終回となる第10回は、ギルドがコルドバ傘下に加わり、ヤマハが舵取りをするようになっていった、2015年から現在までが舞台。最新の製品体系を詳細に見ながら、現在のギルドが目指す未来を考えていこう。
文=長谷鉄弘 デザイン=三本昌樹 Photo by Astrid Stawiarz/Getty Images
コルドバ~ヤマハの資本下へ
2015年、フェンダー(FMIC)からギルド・ブランドの経営権を譲り受けたコルドバ・ミュージック・グループ(以下“CMG”)は、米カリフォルニア州サンタ・モニカに拠点を置く楽器メーカー/ディストリビューターだ。スペイン/アンダルシア地方の古都に由来する社名が示すように、同社の創業者であるティム・ミクラウチック(Miklaucic)はクラシック・ギターの愛好家で、1970年代後半から欧州産ギターの輸入事業を手がけ、1997年には米国内で良質なアコースティック楽器を製作すべくコルドバ・ギターズを立ち上げている。
2000年代に入りおもにクラシック・ギターやエレクトリック・ナイロン弦ギター、ウクレレの製作で成功を収めたコルドバ・ギターズ~CMGは、2015年(※)にギルドのブランド・ホルダーとなったあとも事業規模を広げ、ディアルモンド(DeArmond/第9回を参照)や楽器用ケース・メーカーのヒュミケース(HumiCase)、弦メーカーのサバレス(Savarez)とアクイラ(Aquila)を相次いで傘下に収めていく。
この急成長ぶりに注目したのが、日本の老舗楽器メーカーであるヤマハ株式会社だった。2023年、北米における同社の拠点の1つであるヤマハ・ギター・グループ(以下“YGG”)はCMGに業務提携を打診し、その交渉が合意にいたったことで、以後、CMGが保有していたギルド・ブランドもヤマハ/YGGの資本下に入ったのである。
※経営権の委譲は2014年に行なわれたが、CMGギルドが実際に稼働し始めたのは2015年であった。
現代ギルドの製品体系
本稿を執筆している2026年9月におけるギルド製品のラインナップは、1986年以前や1986~2015年と比べて大きく異なるYGG/CMG独自のものになっている。生産国の違いやボディ・サイズ/シェイプ、楽器のジャンルといった観点からこれを読み解いていこう。
生産国について
フラットトップ・アコースティック・ギターのうち“Guild USA”シリーズはカリフォルニア州オックスナード(Oxnard)にあるコルドバ・ギターズの工場で、“Westerly Collection”シリーズは中国にある提携企業の工場でそれぞれ生産される。エレクトリック・ギター&ベースは中国や韓国、インドネシアで作られており、公式Webサイトによればアメリカ工場に新しい生産ラインを立ち上げる計画も進んでいるようだ。
フラットトップ・ギターのシェイプ/サイズ
フラットトップ・アコースティック・ギターのボディ・シェイプ/サイズとスケール(弦長)は2015年以前の寸法を大枠で継承しつつ、生産国/シリーズやグレードに応じて細かなアレンジを加えている。詳細を下表にまとめた。
Guild USA
| シェイプ | 最大ボディ幅 | スケール |
|---|---|---|
| F(Jumbo) | 17 1/4インチ(約438mm) | 25 5/8インチ(約651mm) |
| D(Dreadnought) | 16インチ(約406mm) | 同上 |
| M(Concert) | 13 3/4インチ(約350mm) | 24 3/4インチ(約629mm) |
Westerly Collection
| シェイプ | グレード | 最大ボディ幅 | スケール | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| F | 2512(12弦) | 17 1/4インチ(約438mm) | 25 1/2インチ(約648mm) | |
| 200番台 | 17インチ(約432mm) | 同上 | 1986年以前のF-50に近い | |
| 100番台 | 16 5/8インチ(約422mm) | 同上 | ||
| DS | 240 | 15 7/8インチ(約403mm) | 24 3/4インチ(約629mm) | 新開発のラウンド・ショルダー・ジャンボ |
| D | すべて | 15 3/4インチ(約400mm) | 25 1/2インチ(約648mm) | 1986年以前のDに近い |
| OM(Orchestra) | 300〜200番台 | 15 1/2インチ(約394mm) | 同上 | |
| 100番台 | 15 1/4インチ(約387mm) | 同上 | ||
| Jumbo Junior | すべて | 14 1/2インチ(約368mm) | 23 3/4インチ(約603mm) | |
| P(Parlor) | 240 | 14インチ(約356mm) | 24 3/4インチ(約629mm) | 新開発のパーラー |
| M | 200番台 | 13 7/8インチ(約352mm) | 同上 | |
| 100番台 | 13 3/4インチ(約350mm) | 同上 | 1986年以前のF-20やM-20に近い | |
| Travel | すべて | 12 3/4インチ(約324mm) | 22 3/8インチ(約569mm) | ドレッドノートを縮小したトラベル・ギター |
Guild USAの“F”と“D”がボディ・サイズ、スケールともに2015年以前よりやや大きくなっている点が特に興味深い。
フラットトップ・ギターのモデル・ナンバー
フラットトップ・アコースティック・ギターにおける材構成や装飾の違い=グレードを示すモデル・ナンバーは、“Guild USA”と“Westerly Collection”で体系が異なる。それらを下表にまとめてみた。
Guild USA
| グレード | ボディ・トップ | ボディ・サイド&バック | 備考 |
|---|---|---|---|
| 55、50、512 | シトカ・スプルース単板 | インディアン・ローズウッド単板 | F-55、F-512ではサイド&バック=フレイム・メイプルも選択可能 |
| 40、412 | 同上 | アフリカン・マホガニー単板 | VR1 F-40はサイド&バック=5Aグレード・フレイム・メイプル |
| 20 | アフリカン・マホガニー単板 | アフリカン・マホガニー単板 |
Westerly Collection
| グレード | ボディ・トップ | ボディ・サイド&バック | 備考 |
|---|---|---|---|
| 340 | シトカ・スプルース単板 | マホガニー合板 | |
| 320 | マホガニー単板 | 同上 | |
| 260、2612 | シトカ・スプルース単板 | ストライプド・エボニー合板(※) | ※マカッサル・エボニー、縞黒檀とも呼ばれる樹種。学名=Diospyros celebica |
| 250、2512 | 同上 | フレイム・メイプル | |
| 240、2412 | 同上 | マホガニー合板 | |
| 150、1512 | 同上 | ローズウッド単板 | |
| 140 | 同上 | アフリカン・マホガニー単板 | |
| 120、1212 | アフリカン・マホガニー単板 | アフリカン・マホガニー単板 |
エレクトリック・ギター&ベース
ソリッド・ボディ・エレクトリック・ギターは1970年代初頭にモデル・チェンジを経た二代目“S”のデザインを受け継ぐ“Polara”と、1976~77年に登場した三代目“S”のリイシューであるS-300“Deluxe”をラインナップ。2022年に新開発された“Surfliner”シリーズは、1960年代のギルドと関係が深かったスウェーデンのハグストローム(Hagstrom)社の製品を想起させるレトロ&ビザールなデザインが印象的だ。

一方、1960年代前半に起源を持つ“Starfire”シンライン・ホロウ・ボディ・エレクトリック・ギター&ベースは“I SC”(シングル・カッタウェイ)と“I DC”(ダブル・カッタウェイ)、“IV”、“I Bass”などからなるシリーズを展開。シンライン・ホロウ・ボディでは他に、1950年代末の登場以来“Slim Jim”の愛称で親しまれてきたT-100の復刻版に当たるT-50も生産される。

アコースティック・ベース&バリトーン・ギター
1970年代半ばのB-50以来、独創的なコンセプトが高く評価されてきたフラットトップ・アコースティック・ベースのジャンルでは、17 1/4インチ幅のボディと34インチ・スケールのネックを持つB-140E、17インチ幅のボディと30 3/4インチ・スケールのネックを持つB-240E、14 1/2インチ幅のボディと23 3/4インチ・スケールのネックを持つ“Jumbo Junior Bass”を“Westerly Collection”にて展開する。
また、27インチ・スケールのネックに6弦(※)を張るBT-240Eは、近年、再評価が進むバリトーン・ギター/6弦ベースの分野を補完するモデルで、音域の拡張を望むギター&ベース・プレイヤーにアピールしている。
※7弦仕様のBT-258Eも選択可能
“Long live Guild!”~今日のギルドとその未来
上記の製品ラインナップを含む各種の情報からは、YGG/CMGギルドの運営方針が現代の音楽シーンを見据えた堅実なものであるとの印象を受ける。70年以上にわたり培われてきたブランドの伝統をリスペクトしつつ、多様化したニーズに応える新たな試みも積極的に行なう姿勢は、古参のファンにも、往年のギルドを知らない若い世代にも歓迎されるのではないだろうか。
あらゆるギターの祖先に当たるクラシック・ギターに精通するCMGと、総合楽器メーカーとして木質からデジタル技術にいたる広範な分野で基礎研究を行なうヤマハ・グループがタッグを組んだことで、これからのギルド・ブランドはどのように変わっていくのか。ファンの1人として、筆者も興味深く見守っているところだ。
また、2000年代初頭以降(FMIC期~)のギルドが一貫して掲げてきたスローガン=“Made to be Played(弾かれるために作る)”が示すように、このブランドはいつの時代も作り手と弾き手が結ぶ親密な関係によって支えられてきた。連載中、折に触れてギルドを愛するミュージシャンたちの名前を挙げたのは、この関係がポピュラー音楽の歴史にもたらしてきたものの大きさを読者のみなさんに実感していただきたかったからだ。
F-20やGAD-50を愛用したブルーノ・マーズ、1970年代後半製と思われるF-50Rを筆頭に17インチ・スーパー・ジャンボをこよなく愛する田島貴男、1975年製D-55と長く連れ添ってきた川崎鷹也、楽器店で出会い「一目惚れ」したという1978年製D-50をメインの1本とするano(あのちゃん)ら、ギルドの楽器と幸福な関係を結んだプレイヤーはベテランか若手かを問わず、今も星の数ほどいる。そして、彼らの姿に憧れるキッズたちがギルドを手に取り、「自分だけのヴォイス」を発見するところから次の歴史の章が始まるに違いない。
1953年の創業以来、ギルドが歩んできた道程は決して平坦なものではなかったが、危機が訪れる度にブランドの維持に尽力する人々や、製品の魅力を伝えるプレイヤーが現われ、70年余に及ぶ歴史は途切れることなく続いてきた。アメリカン・ギターの「偉大なるオルタナティヴ」としてポピュラー・ミュージックに多大な貢献を果たし、今も際立った個性と存在感を示すこの老舗が、人々から末長く愛され続けることを願いつつ連載を終えることにしたい。
Long live Guild!

ギルド名盤を聴く、リアル・イベントが9月26日に開催!

ギタマガWEBの連載『今ふり返る、ギルド・ギターズの正しい歴史』のスピンオフ・イベント“Guild × ギター・マガジン「名盤を聴く、語る、奏でる」”が、2026年9月26日(土)に東京はYamaha Sound Crossing Shibuyaにて開催!
ギター・マガジン編集部がセレクトした、ギルドに関連するレコードを聴きながら、名手が愛したギルドの話や当時の時代背景などを語ります! ゲストはYouTuber/音楽評論家の“みの”と、ギタリストの関口シンゴ。イベント後半には関口によるギルド製ギターを使ったミニ・ライブも開催予定だ。
さらに9月2日から28日までの期間、Yamaha Sound Crossing Shibuyaでは最新ギルド・モデルが試奏できる展示コーナーが公開中。また期間限定でギルドの“Gシールド”ロゴをラテアートであしらったカフェラテが販売されている!
- 日時:2026年9月26日(土)17:00〜19:00
- 場所:Yamaha Sound Crossing Shibuya
https://www.yamaha.com/ja/about/experience/yamaha-sound-crossing-shibuya/ - 入場料:無料
著者プロフィール
長谷鉄弘(ながや・てつひろ)◎1970年生まれ。『ギター・マガジン』、『ギター・グラフィック』(いずれも小社刊)などの編集部員を経て1996年に独立。現在はライターとして、『ギター・マガジン』や『アコースティック・ギター・マガジン』、『The Effector Book』(シンコーミュージック)などに寄稿。