2026年7月21日(火)、ギター・マガジン主催のイベント『村田善行のファズ講座〜実演で知るプロのノウハウ』が御茶ノ水Rittor Baseにて開催された。本記事では、イベントで使用された機材と、BOSS FZ-1Wの使いこなし術を動画と合わせて公開する。
動画撮影・編集=熊谷和樹 録音=深津良輔
動画

ファズはちょっとした劣化でも
音がまったく変わってしまう。
本日はよろしくお願いします!
まずはみなさん、イベントに来ていただいて本当にありがとうございます。“高いチケット代を払ってまでファズの音を聴きに来る人なんているのか?”、“3人くらいでワチャワチャして終わりなのかな?”と思っていたんですけど、こんなにたくさんの人に来ていただいたので、耳鳴りをしてもらって、元を取って帰っていただきたいです(笑)。
村田さん、まずは今日のイベントで使用する機材のセッティングについて解説をお願いできますか?
今持っているのがフェンダーのストラトキャスターです。63年製だったかな。それとCrews Maniac SoundのSGタイプ、LED-1961も使います。これはピックアップを換えていますね。
僕の足下には、今回のファズと一緒に使用するペダルボードを置いていて、strymonのFLINT V2(リバーブ/トレモロ)、Fjord FuzzのLOKE(ディレイ)を入れています。ファズ単体だと弾いていてツラいことがあるので、リバーブとショート・ディレイはたまに踏ませてもらいたいかな(笑)。あとは魚頭(圭)君という人が作っている、Colorsound Overdriverのコピー・モデル(UOZ ODA1)を置いています。このペダルの位置はKlon Centaurの時もあるんですけど、今日はこれにしました。
そして、ファズを比較する時は1台ずつつなぎ変えます。ギターからの信号が入る初段のペダルは正しく動くんですけど、それ以降につないだペダルは、初段のペダルがトゥルー・バイパスだとしても絶対に音が劣化していくんです。残念ながらルーティング・システムを使っても同じことが起こるんですね。ファズはそういうちょっとした劣化でも音がまったく変わってしまうので、今回はセンシティブなインプットの部分もなるべく聴いてもらうために、いちいち抜き差しします。そのためにボリューム・ペダル(A3 Stompbox Volume Pedal)や、Pete CornishのA/B/C Boxもつないでいます。
みなさん的には“JC-120を置いておいてよ”と思うかもしれないですけど、今日はフェンダー、VOX、マーシャルという3台のアンプをそれぞれ鳴らします。足下のA/B/C Boxでアンプをオン/オフするんですけど、A/B/C Boxって完全に信号を分岐しつつ、ギターから直結でアンプに入れている時とほとんど同じフル・ドライブ状態を作れるんですよ。なので音を良くするために使うわけではなく、あったほうが便利なので持ってきました。
今日はアンプを3台用意していて、向かって右側からフェンダーの’68 Custom Deluxe Reverb、 真ん中がVOXのAC30HWR2X、一番左がマーシャルの1987ですね。Pete CornishのA/B/C Boxから、Aがフェンダー、BがVOX、Cがマーシャルにつながっています。けっこう音量が大きいので、もし不安だなという方がいたら下がっていただいても大丈夫ですので(笑)。
でも、せっかく来たのに小さい音を聴かされたら損した感じになりますよね……?
そうですね(笑)。御茶ノ水Rittor Baseは音響も良いんですよ!
そう、音がやかましくならないんですよ。今日はフェンダーの調子がイマイチ悪くて、Deluxe ReverbなのにPrinceton Reverbがちょっと失敗したような音です。VOXとマーシャルはLOW INPUTに入れています。なぜLOWに入れているのかというと、エフェクターからの受けが良くなるからですね。VOXはNORMAL chのBrightスイッチをオンにしていて……MASTER VOLUMEが半分くらい?
いや、今はMASTER VOLUMEがMAXになっています(笑)。
じゃあ良い感じにホットになっています(笑)。3台のアンプが全部が鳴っているとズルい音になるので、メインのアンプを切り替えて進めていきますね。
あともう1個。リア・ピックアップを使って音作りを始めるとやりやすいです。みんなフロントで音を作り始めるんだけど、ファズを使う時は基本的に、フロント・ピックアップを使わない(笑)。使ってもいいんだけど、特にストラトキャスターの場合だとフロントを使うとやりづらいと思うので、リア・ピックアップで作っていったほうが良いと思います。
フロントにするとローが強くなりますよね。
ファズの音自体がわからなくなるよね。ボリュームを絞った時のキラキラとした音の時は別に良いんだけど、リアでちゃんとした音が鳴るようにしておかないとファズが使いづらいから。

FZ-1Wを最初から持っていたら
ビンテージ・ファズはいらないと思う。
1台目に実演していただくBOSSのFZ-1Wは、ブランド独自の視点でビンテージ・ファズを再定義したモデルで、シリコン・トランジスタが採用されています。筐体の真ん中にあるスイッチで“V”と“M”という2つのモードが切り替え可能で、“V”がビンテージ・モード、“M”がモダン・モードになっています。
FZ-1Wは弾いてみてビックリしました。めちゃくちゃ良いんですよね。FZ-2みたいなBOSSの古いファズって、音がパツパツしてたんですよ。
歪ませたマーシャル・アンプにギターをつなげた時のダイナミック・レンジが0〜100%まであるとしたら、オーバードライブは40%くらいまでのレンジで歪みを作るイメージ。ディストーションはレンジが狭くなって音がギュッと詰まるんだけど、80%くらいまで出るイメージかな。ファズは0〜100%まであるようなイメージなんですよね。
今までのファズって、“歪めばいいんだろう”という感じで、60%〜100%の上辺だけで“ブー”と歪むモデルばかりだったんですけど、ここ10年くらいで“もっとダイナミックでなければならない”と多くの人が気づき始めたんですよ。
たしかにそうですね。
今回使うファズ・ペダルは、どれもそういうところが本当に良くできています。僕らが“ビンテージ・ファズが良い”と言ってるのは、ダイナミックだからなんですよね。有機的な中音域が出ないファズしか生産されていない時代に、僕らはファズを欲しくなったんですよ。なので、しょうがないからビンテージ・ファズを買っていたんですけど、もしFZ-1Wを最初から持っていたらビンテージ・ファズはいらないなと思った……そういう可能性が非常に高い。
もし90年代、00年代にFZ-1Wが出ていたら、村田さんは飛びついて買っていたという。
うん。普通にブラインドで弾いてみたら、たぶんほとんどの人が“使い勝手が良い”と言うと思います。なぜかというと、BOSSのペダルって、どんな人が使っても良いように作られているんですよね。技シリーズ全体もそうなんですけど、BOSSはマーケットをよく見ているというか。
エリック・ジョンソンのバイオリン・トーンやデヴィッド・ギルモアのソロの音と、その対局にあるJ・マスキスやマッドハニーの音も出したいとなった時に、FZ-1Wは全部の音を出せるんですよね。それをビンテージ・モードとモダン・モードで使い分けることができる。
ビンテージ・モードはTONEを上げるとすごくサイケデリックなジャパニーズ・ファズ系の“ジージー”という音になるんだけど、モダン・モードにすると中音域がちゃんとあって、太くていなたい感じになります。狙っているかはわからないけど、Big Muff系のような歪みにも寄せられるので、そこが素晴らしい。
FZ-1Wはレンジが広くて、TONEノブを上げ下げしても全然音が破綻しないんですよ。村田さんが右手でタッチの力強さを変えていましたが、それにもちゃんと付いてきてくれていたので、“これがあればいいじゃん!”という感じですよね。
そうですね。だから、よくわからないブランドのハンドメイドのゲルマニウム・ファズを、“よくわからないけど良いんだろうな”と買って後悔するより、ハズしたくないという人は絶対にFZ-1Wを買ったほうが良いです(笑)。
たぶんトレンドとして、“ボリュームに追従しないファズはダメだろう”という解釈で、どちらのモードでもボリュームにある程度付いてくるようにデザインされていて、そこがすごくBOSSらしい仕様ですね。シングルコイルのギターをつなげた時に物足りなくなる感じがないので、すごく良いと思います。

ヒップホップやシンガー・ソングライター系の曲に
めちゃくちゃファズが使われているんですよね。
村田さんなら、FZ-1Wをどのように使ってみたいですか?
FZ-1Wはバッファー・アンプの影響を受けないので、ルーティングに入れても良いし、何かのペダルのあとに入れても良いのが強みなんですよ。リバーブのあとにファズをかけてちょっとサイケデリックな感じにしたい時、レコーディングでは良いんですけど、ライブだと信号がグシャグシャになって使いにくいことがあるんです。だけどFZ-1Wだったら、それに適応してくれると思いますね。あとは手前にブースターを置いてもすごくパワフルな音になるので、ボードに入れるんだったらすごく良いんじゃないかな。
実は僕、今回FZ-1Wを試奏して、そのあとすぐに買いました(笑)。
そうだよね。小林君が買ったって言うから、“オレも買おうかな?”と。それくらい本当に良かったです。BOSSが前に出していたMacari’sコラボのゲルマニウム・ファズがあったじゃないですか?
TB-2Wですね。
生産数が少なかったので、みんな“なんだよ、欲しかったのに!”と言ってましたよね。なのでFZ-1Wが出てきた時は、“またファズ出したんだ”と斜めに見てたんですけど、“すみません”という感じです(笑)。ちゃんとそれを踏まえて作ったんだなと感じられて、非常に好印象でした。
村田さんはFZ-1Wのビンテージ・モードとモダン・モードどちらが好みでしたか?
モダン・モードで使いたいですね。ボリューム絞った時の音も良い感じだったので、いわゆるジミヘンおじさんみたいな人がビンテージ・モードで使っても大丈夫だと思います。
最近は海外の有名なプロデューサーが作った、絶対にファズなんて使わないようなヒップホップやシンガー・ソングライター系の曲に、めちゃくちゃファズが使われているんですよ。で、“どうやってファズを使うんですか?”って聞いたら、“歪ませないで使うんだよ。味わいのある音を出すのにファズが良いんだ”って教えてくれたんです。そうやってファズでクランチを作って、頭がつぶれた状態にして録ると、めちゃくちゃ使いやすい音になります。ビンテージのペダルはロー・ゲインにするとほとんど使いものにならなくて、ただボソボソとした音が出ているだけになるんだけど、FZ-1Wだとロー・ゲインにしても使えます。
改めて、FZ-1Wはどんな人にオススメですか?
おいくらするんですか?
デジマートで新品が26,400円ですね。
初めてのファズを買うんだったら、第一候補にアリです。たぶんベースにもすごく良いと思うので、楽曲制作をされていて、ファズを1台手元に置いておいていろいろ試したいという方にもオススメですね。
海外だとRolandのTR-808みたいな打ち込みのキックにだけファズをかける人も多くて、パラで録ってファズの音とドライの音を混ぜるという使い方もできます。あとは、前段にコンプレッサーやオーバードライブを置いても音がそれほど変わらないので非常に使いやすいし、DAWにも適応するのでオススメですよ。

