【後編】『村田善行のファズ講座〜実演で知るプロのノウハウ』|EarthQuaker Devices Hizumitas 【後編】『村田善行のファズ講座〜実演で知るプロのノウハウ』|EarthQuaker Devices Hizumitas

【後編】『村田善行のファズ講座〜実演で知るプロのノウハウ』|EarthQuaker Devices Hizumitas

2026年7月21日(火)、ギター・マガジン主催の特別イベント『村田善行のファズ講座〜実演で知るプロのノウハウ』が御茶ノ水Rittor Baseにて開催された。本記事では、EarthQuaker Devices Hizumitasのサウンド・チェックの模様や、アンプのセッティング方法について解説。

動画撮影・編集=熊谷和樹 録音=深津良輔

動画


作っている人たちがやんちゃなので、
パワーがあるんですよ(笑)。

EarthQuaker Devices / Hizumitas
EarthQuaker Devices/Hizumitas

ではラスト1台、EarthQuaker DevicesのHizumitasです。Hizumitasは、BorisのWataさんとの共同開発で誕生した1台ですね。WataさんはElkのBig Muff SustainerというBig Muffのコピー・モデルを長らく使っているのですが、同年代の同じモデルと音が違うそうで、Wataさんが持っている実機をオハイオ州にあるEarthQuaker Devicesまで送って、回路を解析して作ったそうです。けっこう個体差があるものなんですね。

ElkのBig Muff SustainerはBig Muffをそのままコピーしすぎていて、今だったら絶対怒られるんですよね(笑)。でもやっぱり音がちょっと違うんですよ。僕も何台か持っていました。“Triangle期のBig Muffに一番近い”と言われていたので回路図をチェックしたら、1個だけ抵抗の値が間違ってたんです。

間違ってたんですか?

本家のBig Muffと比べたら違うというだけで、音は出るのでElkとしては全然問題ないんだけど、“なぜかトーンの感じが違うんだよな”と思ったら、1箇所だけ抵抗の数値が間違ってたんです。

当時、Elkの製品はどこかの工場にOEMで作ってもらっていたので、パートのおばちゃんたちが“老眼で見えんわ”みたいな感じで間違えて、個体差があったんじゃないかな(笑)? 例えば、抵抗は22kのところに220kが入っていても本当にわからないですからね。Wataさんが気に入っている個体は、Big Muff Sustainerの中でも音にガッツがあったんじゃないかな。Borisの音楽に使えるファズだから。

Hizumitasもドゥームの音が出ますよね。

うん。やっぱりワルい感じがします。

HizumitasはTONEノブのコントロールがBig Muff系と逆になっていて、右に回すとローがブースト、左に回すとハイがブーストされるんですよね。ハイを強調させると歪みも上がるという仕様です。

たぶんそこがElkのBig Muff Sustainerと本家のBig Muffの違いですね。当然Big Muffもトーンを明るくしていくとゲインが上がるように聴こえるんだけど、Big Muff Sustainerは内部でゲイン自体が上がっている感じがするし、音がデカくて弾きやすいです(笑)。

EarthQuaker Devicesの良いところは、BOSSにも通じるけど、どのセッティングでも良い音になるところですね。しかも作っている人たちがやんちゃなので、パワーがあるんですよ(笑)。味わいよりもパワーを重視しているところがあって、すごく使いやすいと思います。Big Muff系のペダルって普通はゲインを下げると大体つまらない音になるんだけど、Hizumitasは元気が良くて、ブラック・サバスみたいな音が出せるんですよ。

歪みのキャラクターはいかがですか?

細かくてザラザラしている部分があります。Big Muff系はもっとシルキーな感じなんだけど、Hizumitasのほうがもうちょっとザラついている感じですね。“プチプチ”としたゲート感があるので、それが音を際立たせてくれるようなイメージです。リフを弾きたくなる音のキャラクターですね。あとHizumitasは、チューニングを下げた時にも音がしっかり聴こえるんじゃないかなと思います。

“チューニングを下げて使ってくれ”という音ですよね。

そうですね。だけど、端的に“歪めばいいんでしょ?”、“ローが出ればいいんでしょ?”となってないのがニクいです。別にチューニングを下げて使わなくてもいいんだけど、下げて使った時に“おー、すげぇじゃん!”と思わせるのが、ちゃんとシグネチャーにしている理由じゃないかなと思いますね。

村田さんだったらHizumitasをどのように使いますか?

チューニングを下げて使います(笑)。

どこまでチューニングを下げますか?

これ面白いんですけど、Fuzz Faceを弾く時にチューニングを半音下げて弾くと、みんなすごく感動するんですよ。なんでかというと、ジミ・ヘンドリックスがそうだったから(笑)。あとはやっぱり半音下げって、なんかこう……心に訴えるものがあるから、みんな好きなんですよ。スティーヴィー・レイ・ヴォーンもエディ・ヴァン・ヘイレンもそうじゃないですか。

あとはドロップDチューニングみたいに6弦だけ下がっていると2000年頃の音楽って感じがするし、全部の弦が下がっていると2000年以降の音楽っていう感じがしますよね。僕はドロップDが好きなので、ドロップDチューニングにしてHizumitasを使いたいです。

ドロップ・チューニングを使っている人たちは、ファズ・ペダルではなくOrangeのアンプで歪ませているイメージですが、Hizumitasなら同じような音を作ることができるのでしょうか?

例えば8弦ギターにファズを使えないのは、信号が大きすぎて合わないからなんですよね。実際、僕も普段はVEMURAMのButter Machineというディストーションをファズの代わりに使っているんですけど、速いフレーズやキレのあるフレーズを弾きたい時、ファズだとついてこれない時があるんですよ。なので、8弦ギターやチューニングを下げたギターの場合は、新しい設計のディストーション・ペダルやOrangeのアンプ側で歪ませたほうが、むしろファズっぽく聴こえると思います。

でも、Hizumitasは元から低い音域を持っているので、ベースやチューニングを下げたギターの低い音域を入力した時に、その音に対してちゃんと歪んでくれるので、回路設計の妙ですね。まさしく現代的なヘヴィ・サウンドにも対応できるように作ってあると思います。

もう今は“何某のコピー・モデル”というのは
ダメですね。

今回弾いてもらったファズ・ペダル4台は、ただのリプロダクトではなく、“現代でファズを作る意味”もちゃんと考えられていると感じました。

そうですね。今はファズの種類がありすぎて、どれを買っていいかわからないという状態なんですけど、逆に言うと、もう今は“何某のコピー・モデル”というのはダメですね。

もうダメ(笑)。そういう時代ではないと。

たぶん埋もれてしまうよね。あとは“なんとかというパーツを使った”という売り出し方のペダルもダメだと思う(笑)。敵を作りたいわけじゃないんだけど、今残っているパーツって当時使われなかったものなんですよ。

そういうことですよね。

当時省かれたものだから、そのパーツを使っても良いものができるわけないんです。新しい回路で作れば良いものになると思いますけど。最近トランジスタが避けられている理由って、ゲインが足りないからなんですよ。例えばFuzz Faceに使われているトランジスタって、当時だとめちゃくちゃショボいゲルマニウム・トランジスタなんですね。ラジオのトランジスタ・マニアは、“そんなのエフェクターくらいでしか使わないよ”って言うくらい。それを回路に上手く落とし込めれば全然使えるんだけど。

例えば、Tone Benderを作りたいからと言って、意地でもMullardの“OCなんとか”というゲルマニウム・トランジスタを買って使うと、全然ダメだと思う。たぶん上手くいかないし、上手くいってもオリジナルに勝てないと思います。だったらオリジナルを買ったほうが良い。そういう部分も踏まえて、新しいペダルを選んだほうが現代的には絶対使いやすいと思いますね。

なるほど。

Electro-HarmonixがBig Muffの再生産をするのは、本家がオリジナルをわかっているので良いことなんですけど、それ以外のメーカーが作るとつまらないですよね。そういう意味で、BOSSが作ったゲルマニウム・ファズは“作ってみたいな”と思った音がちゃんと出る。EarthQuaker DevicesはBig Muff系のファズをいっぱい出しているのに、わざわざWataさんのモデルを作るということは、Wataさんが持っているペダル特有の良さがあるわけですよね。そういうペダルはほかのペダルとは全然見え方が違ってくるし、音も違うので、やっぱり現代的なペダルのほうが良いんじゃないかなと思いました。

そういうペダルのほうが将来的に良い影響を生みそうですよね。

うん。あとは本当に弾くのが楽ですね(笑)。ビンテージ・ペダルはツラくなるので。ヘコヘコした音がするし、もう自己満足でしかないから。だけどこういう新しいペダルは“ダーン”と弾けるので楽です。

ビンテージのギターやアンプを使っている時は、むしろ“ビンテージじゃなきゃダメだ”という音があるんですけど、最近はVOXのAC30HWR2Xみたいな、再生産のちゃんとしたレプリカのアンプが出てきているので、現代の新しいペダルの面白さもあると思います。今日も古いペダルを持ってきましたけど、絶対ライブでは使わないですからね。

そうですよね。

だってスイッチが壊れたら面倒臭いし、また代わりのスイッチを探すところから始めるのかみたいな話になっちゃうし、音も“まぁね……”という感じだし。

今はビンテージの音を現行品でギリギリ再現できるかできないか、くらいのところまできてますよね。

コレクションをするのはロマンがあるので超楽しいですけど、だからと言って“このTone Benderいくらですか?”と聞いて“60万円”と言われたら“払わないな“と思っちゃう。どっちを取るかだけど、ボードに入れるんだったら現行品のペダルだと思いますね。

今日もこんな仰々しいペダルボードを持ってきてるけど、僕が実際使っているのはVOXのVFZ-1と何かもう1台くらいですよ。もしくはButter Machineのディストーションをファズみたいに使っているか。なので、“もうそろそろペダル業界も刷新したほうがいいんじゃないかな?”という気がします。

LOWインプットに入れると
ファズ・ペダルの持ち味がすごく出ます。

せっかくアンプを3台用意しているので、村田さんにはアンプのインプットのHIとLOWの違いでどれくらい音に差が出るかをレクチャーしていただきます。使用するファズはBOSSのFZ-1Wにしましょう。

僕らがペダルのデモンストレーション動画を作って、それをみなさんが観て、良いなと思って同じモデルを買っても、全然同じ音がしないことがありますよね? それにはちゃんと理由があるんですよ。例えばVOXのAC30HWR2Xだったら、NORMAL ChのHIGHとLOWのインプットの違いで出音がまったく変わります。LOWのほうがキレイな音だったと思うんですよ。

60年代のAC30はすでに今のAC30HWR2Xのルックスになっていたんですけど、当時のアンプはギター用/ベース用の区別がないんですよね。だけどベースの信号が入ると歪みすぎちゃうので、LOWインプットを作っているんです。マーシャルのアンプも同じで、ベースの音をもう少し暗くしようとしてLOWというハイが出ないチャンネルができたんです。

で、ジミ・ヘンドリックスが偉かったのが、ストラトキャスターを弾く時はマーシャルのHIGHインプットに入れていて、レス・ポールの時はちゃんとLOWインプットに入れているんですよ。

そうなんですか!

そう。なので、当時は常識としてそういうのがあったんですよね。ところが、いつ頃からかその常識がなくなってしまって、ジャンプ、チャンネル・リンク、たすきがけと言われる接続が注目され、誰もインプットを使い分けなくなってしまったんです。

例えば、ファズのあとにAC30のTOP BOOST ChのHIGHに入れると、VOXのアンプの良さが全然出てこないんですよ。ギター、ペダル、そしてアンプの設定を同じにしていても、アンプのインプットが変わるだけで音が変わっちゃうんです。“TOP BOOST Chのほうが歪むから良さそうじゃん”と思って使うと、僕が動画で弾いている音と全然違う音になっちゃうんですよ。

これはJC-120を使っていても同じです。ディストーションのレベルの高い音をJC-120のHIGHインプットに入れて、TREBLEをちょっとでも上げると、“ビシャー”という音になるんですよ。だから、僕の場合だったら絶対にLOWインプットに入れるし、TREBLEのツマミは上げないかもしれない。

ちなみに、FZ-1WのTREBLEとLEVELをフルにして、トレブル・ブースターのイメージでゲインをゼロにして使うと、AC30のTOP BOOST Chみたいな歪んだアンプに合います。TOP BOOST ChのVOLUMEをフルまで上げてみると、ブライアン・メイみたいな“これはこれで良い音じゃない?”という音に急になるんですよね。だけど、これでペダル側のゲインを上げると“ブチブチブチ”という音になっちゃって、全然使えない音になるんです。……FZ-1Wはブースターとして使ってもめちゃくちゃ良いね(笑)。

ファズ・ペダルを使う時、アンプ側のボリュームは上げたほうが良いのでしょうか?

ファズ自体が歪むから、アンプはそんなに歪ませなくてもいいというイメージがあると思うんだけど、アンプのボリュームは上げたほうがいいですね。ファズ側のゲインを上げてギターからの信号を増幅させすぎると、どんどん音が詰まっていって、アンプ側が“もう無理”となってハイ落ちしていっちゃうんですよ。頭落ちしてコンプレッションがかかっちゃうので、音がダマになっちゃう。だけどパワー管をドライブさせれば、信号を受けつつ、増幅もちゃんとできるおいしいポイントが絶対にあるんですよね。

例えばVOXのAC30HWR2XみたいにMASTER VOLUMEが付いているアンプだったら、MASTER VOLUMEは上げて、NORMAL chのVOLUME(ゲイン)を下げるんですよ。そのほうがファズの音色がよくわかるんですよね。BOOSTスイッチが付いているアンプだったら、BOOSTはなしで、Ch 1とCh 2が付いているアンプだったらCh 1で、できればBRIGHTスイッチもオフにして、地の音をしっかりと作ればペダルを踏んだ時にどんな音がするかがわかります。

例えばペイヴメントやニルヴァーナみたいに、静かなパートとうるさいパートをバシッと弾き分けたい時は、やっぱりゲインを上げたいじゃないですか? そうなるとアンプはなるべくクリーンにして、ヘッドルームも余裕を持たせておいたほうがいいので、NORMAL ChのLOWインプットに入れるとファズ・ペダルの持ち味がすごく出ます。

INPUTが1個しかないアンプもあるけど、だいたい太い音がするタイプのアンプはインプット端子が2つか4つあるじゃないですか? 全部試してみると、だいぶ音の作り方がわかってくるんじゃないかなという気がします。

“この人がやってるからHIGH INPUTに入れて弾く”とかではなく、自分で全部試したほうがいいですよね。

“あの人はHIGHインプットに入れているけど良い音じゃん”と思っても、使っているファズがBig Muff系なのかTone Bender系なのかでまったく話が変わってくるので、そこもちゃんと意識したほうがいいと思いますね。