2万円以下のコンプレッサーで作る山下達郎「LOVELAND, ISLAND」サウンド 2万円以下のコンプレッサーで作る山下達郎「LOVELAND, ISLAND」サウンド

2万円以下のコンプレッサーで作る
山下達郎「LOVELAND, ISLAND」サウンド

いやー、暑い! パキっとしたサウンドでカラッとカッティングしたい! ということで、猛暑をグルーヴィに乗り切るために、山下達郎「LOVELAND, ISLAND」のカッティング・サウンドを作ってみよう。実際はプロユースの高額なスタジオ用コンプレッサーを使用していると思われるが、今回はお手軽に2万円以下で手に入るペダル型コンプでチャレンジ! 試奏者はギタマガ本誌でもおなじみ、末原康志名人。エントリーしたのはキャラクターの異なる4機種だが、果たしてどれがヤマタツ・サウンドに近づけるのか!? その結果やいかに?

取材/文=福崎敬太 撮影=星野俊


今回エントリーしたのはこの4機種!

BOSS CP-1X

BOSS CP-1X

インジケーターでコンプレッション具合を確認できる。

日本が誇るペダル界の重鎮――BOSSからは、2016年に発表されたハイエンドなコンプレッサー、CP-1Xがエントリー。独自の信号処理技術=MDPにより、ギターからの入力信号を瞬時に解析、適切な処理をリアルタイムで行なってくれる優れものだ。4つのツマミを組み合わせることで得られるサウンドは非常に幅広く、かつプロも納得するハイ・クオリティ。コンプレッサーとしては文句なしだが、ヤマタツ・サウンドにはどれくらい近づけるのか?

Fender The Bends Compressor

Fender The Bends Compressor

ジュエル・ランプの色でコンプレッションの効きがわかる。

近年エフェクターのフィールドで急速にシェアを伸ばしているフェンダー。ギターやアンプ開発で培ってきた“良い音像”をもとに、エリック・クラプトンやU2のジ・エッジが愛用するアンプの開発者が指揮をとり生み出されたコンプレッサーが、このThe Bends Compressorだ。ドライ音をミックスできる“BLEND”ツマミは、適度なウォーム感を演出してくれる便利なコントロールで、使い勝手バツグン。今回のテーマ的にこのツマミが活躍することはなさそうだが、高速レスポンスを実現する独自回路によってどこまで“ヤマタツ・サウンド”に肉薄するかに期待したい。

KOKKO FCP2 COMPRESSOR

KOKKO FCP2 COMPRESSOR

編集部員所有のiPhone 8と比較しても、この小ささ(W51×D94×H53mm)。

白熱するミニ・ペダル・シーンにおいて、圧倒的なコスト・パフォーマンスで注目を集めるKOKKO。このFCP2コンプレッサーは販売価格3,000円前後の超低価格モデルながら、十分なサウンド・クオリティを持つ1台だ。長辺が94mmで重量は175.5gというコンパクトさに加え、シンプルな3ノブで迷わずコントロールができるので初心者にも安心だろう。今回の中でもひときわ低価格帯のペダルだが、「LOVELAND, ISLAND」のハイファイなコンプ・サウンドを、どこまで再現力できるか? 期待が高まる!

MXR M102 Dynacomp

MXR M102 Dynacomp

付属のノブ・カバーをつければ、足での操作もしやすくなる。

泣く子も黙るペダル型コンプレッサー界の巨匠、MXRダイナコンプの登場! ローウェル・ジョージや鈴木茂の愛用によって知られているとおり、クリーン・サウンドに独特の艶をもたらしつつ、ロング・サステインも実現してくれる名機だ。2ノブという漢らしい仕様ながら、どのセッティングでも“使える”サウンドになるという、完成された回路デザイン。しかし、ダイナコンプらしいあのコンプ感と、今回目指す「LOVELAND, ISLAND」サウンドは少し方向性が違うかも?


まずは山下達郎サウンドの考察から

「LOVELAND, ISLAND」のコンプの感じは、どう聴こえますか?

末原 山下達郎さんのカッティングはすごく耳に心地良くて、うまく作っているなぁと思いますね。すごく抜けてくるし存在感はあるんだけど、耳障りなところが一切ない。本当に心地よいジャキジャキ、というか“シャキシャキ”している感じ(笑)。「LOVELAND, ISLAND」のカッティング・サウンドは音の潰れ方が速いので、たぶんFET系か真空管系のコンプレッサーだと思うんです。でも、真空管だとFAIRCHILD 670あたりが有力なんですが、アビー・ロード・スタジオとかにあったすごく貴重なビンテージ機材で、あまり国内だと使える機会が少なかったんですよ。なので、可能性的に高いのは、当時いろんなスタジオにあったFET系のUrei 1176あたりかなと思いますね。

ギター側のセッティングは?

末原 今回目指している「LOVELAND, ISLAND」が収録された『FOR YOU』は1982年の作品ですけど、あの頃はほとんどがテレキャスターのフロント・ピックアップだというのは、過去の達郎さんの発言であるんですよね。それで、ギター側のボリュームをフルで卓に送っていたというのは前に聞いたことがあるし、サウンド的にも間違いないと思います。僕も当時はそうしていて、特にクリーン・トーンに関してはラインで録ることが主流でしたね。というのも、ギター・アンプというのは周波数帯のすごい上やすごい下が限られていて、楽器らしさを出すためにあえて絞っているんです。でも、80年代頃の音楽では、ギターのクリーン・サウンドも本当にハイファイな音を求められていたんですよ。

卓側などのセッティングはどういう感じのイメージですか?

末原 たぶんEQはコンソールかハードウェアEQを使っていたと思うんですが、セッティングとしては少なくともフラットではないと思います。オケの中でもジャキっととおるような音なので、あの頃のトレンドも踏まえると10kHzあたりの帯域を気にして上げていたんじゃないかな? あとは、2kHzあたりの中域、300Hzあたりのミッド・ローあたりを上げて作っていると思います。

ということで今回の試奏環境は?

ギター:フェンダー・テレキャスター(フロント・ピックアップ/ボリューム=フル)
出力:ライン・アウト(DI:NEVE 1272)

さっそく次ページからサウンド・チェック!!