昭和の至宝。グヤトーンLG-200T|週刊ビザール・ギター 昭和の至宝。グヤトーンLG-200T|週刊ビザール・ギター

昭和の至宝。
グヤトーンLG-200T|週刊ビザール・ギター

個性的な魅力で多くのギタリストたちを虜にする“ビザール・ギター”を、週イチで1本ずつ紹介していく連載、“週刊ビザール”。記念すべき第1回は、日本が誇るキング・オブ・ビザール=グヤトーンが生み出した名器、LG-200Tを紹介しよう。

文=編集部 撮影=星野俊 ギター提供=伊藤あしゅら紅丸

“国内最高”の名に恥じないサウンド
GUYATONE LG-200T

GUYATONE/LG-200T

昭和の至宝。
日本が誇るキング・オブ・ビザール・シェイプ!

すさまじいシェイプだ。

60年代、世界中のギター・ブランドがフェンダーの呪縛から逃れようと独自性をこじらせていく中で、こんなにもオリジナルで、ビザールで、カッコいいものがこの日本で生み出されていたとは! 

“グヤトーンの50年代はギブソン系、60年代はフェンダー系”という大まかな流れはあるものの、もはやこれは何系でも何でもない。どっからどう見ても“これぞグヤトーン”というスタイルを、ついに打ち立てたのである。

エレキ文化の黎明期からシーンを支え続けた国産メーカーの雄が世に放った本器は、1965年、5月頃に発売された最高級モデル、LG-200T。発売当時の価格は37,000円だった(当時の大卒初任給平均は24,000円)。国内初の2チャンネル・ステレオ出力仕様で、ボディ裏にはアンプと接続してリバーブをオン/オフできるジャックを搭載、ピックアップも新開発のものを4基装備しているなど、グヤトーンの技術の粋を集めて製作された“国産最高のエレキ”の名に恥じぬ豪華な1本に仕上がっている。

特筆すべきポイントは、世界に先駆けて“24フレット”を取り入れていることだろう。2オクターブにわたりトレモロ・グリッサンド奏法が行なえるように開発されたそうだ。さらに0フレットの採用。発売時は同社のテルスターと同じ3ポイント・アジャスタブル・ブリッジが搭載されていた。

画像の個体は後期型で6ポジション。本器はドット・ポジション・マークにふたつのストリング・ガイドを搭載しているが、テルスターのように6弦側にトライアングル・インレイを追加した指板タイプや、6/5、4/3、2/1弦とストリング・ガイドを3個採用した個体も存在する。ちなみに木部はヤマハの工場製で、ピアノ塗装が施されている。

また1967年には、フォルムは同じだが、2ピックアップ仕様、モノラル出力、6弦サイドにピックアップ切替スイッチとトーン切替スイッチが搭載されたLG-220Tもラインナップされていた。こちらの価格は29,000円。

実際に抱えてみるとズッシリとかなり重たいが、思った以上に立ち上がりが速く、シャープでクリアなサウンドだ。

GUYATONE LG-200T(前面)

“これぞグヤトーン”と言わんばかりのスイッチ類の多さ。国産ギター・メーカーの牽引役として、オリジナリティを追求するための凄まじい努力が表われている。

GUYATONE LG-200T(背面)

背面はこちら。深くえぐられたコンター加工や、ボルト・オン・ジョイントなどは、フェンダー・ギターからの影響が垣間見れる。

ピックアップ・セレクター

イタリア製ビザール・ブランドのエコーなどにも見られるボタン式のピックアップ・セレクター。数字は各ピックアップに対応しており、フロント側から1、2、3、4と番号をつけた時の組み合わせだ。例えばボタン1だったらフロント単体のみ、4だったらリア単体で、1-4はフロント+リア、2-3は中央のふたつである。左端のMは4基フルで、0はすべてオフとなる。

スプリット・タイプのピックアップ

当時、新開発だったスプリット・タイプのピックアップ。ピックアップ・セレクターを1や4にした時の芯のあるサウンドはさすが高級機種といったところ。1-4にすると一気にカリッカリになってしまうが、アンプなどのイコライジングを工夫すればイイ感じに化けそうでもある。2-3の艶やかな音色と、アームの揺れが相性抜群だ。

トレモロ/リバーブ用リモート・スイッチ

トレモロ/リバーブ用リモート・スイッチ。ボディ裏のジャックから接続したアンプ類に対応している。

出力&コントロール類

LG-200Tは2チャンネル・ステレオ出力が可能で、6〜4弦と3〜1弦を分けて出力することができる。ツマミはそれぞれのアウトプットに対応するボリューム・コントロールだ。

リモート・スイッチ用ジャック

ボディ裏にはアンプと接続できるジャックを搭載。フロント・ピックアップ下のリモート・スイッチで、リバーブをオン/オフすることができる。

本記事が掲載されたギター・マガジン2016年9月号『弾きたいビザール』では、哀愁たっぷりのシェイプを持つ愛しいギターをこれでもかと紹介しています。好事家のプロ・ギタリストたちが持つビザール・ギターも掲載。