Interview|ラブリーサマーちゃん 『THE THIRD SUMMER OF LOVE』で見えた“ギター愛” Interview|ラブリーサマーちゃん 『THE THIRD SUMMER OF LOVE』で見えた“ギター愛”

Interview|ラブリーサマーちゃん 
『THE THIRD SUMMER OF LOVE』で見えた“ギター愛”

ラブリーサマーちゃんの最新作『THE THIRD SUMMER OF LOVE』は、ポップな歌メロを支えるバッキングにロックなギターがこれでもかとフィーチャーされた快作だ。重厚なギター・アンサンブルとキャッチーなボーカルのマッチングは、虜になるギタリストも多いはず! 作品中のギター・プレイを掘り下げていくと、並々ならぬギターへの愛情が見えてきた。さっそく、最新作のこだわりについて話を聞いていこう。

取材・文=福崎敬太 写真=西槇太一

ギターのアイディアもボイスメモに
“ぎゅわぁ~ん”みたいな声で入っていて(笑)。

最新作『THE THIRD SUMMER OF LOVE』は全体で鳴っているギターの本数も多く、かなりギター・ロックな感じのアレンジですよね。ラブリーサマーちゃんのほかには、奥村大(wash?)さんと馬場庫太郎(NENGU)さんが弾いていますが、パートの比重的にはどんな感じでしたか?

 曲ごとで違うんですが、大まかには“大さん:庫太郎さん:私=4:4:2”くらいだと思います。大さんはホント、ファズに魂を売った大人っていう感じで(笑)、庫太郎は“ちょっと歪つなフレーズを作るのがうまいギタリストだな”と思いますね。

曲中でふたりに求めるプレイや役割は、それぞれどういう感じなんですか?

 私と庫太郎は1台もアンプを持ってないので、レコーディングで使う高出力のアンプなどは大さんに全部持ってきていただいたり、大さんにはテクニカル系をすごくサポートしてもらっています。で、やっぱり大さんの一番の魅力は“音と弾きざま”だと思うので、大さんにはサウンド面でかなり頼っていますね。

庫太郎さんには?

 私はオブリガートを考えるのが得意じゃなくて。オブリに関しては、いくら頑張っても“あんまりピンとこないな”っていう時が多いんです。そういう時は、庫太郎に“ここで適当になんか入れたくなったら入れて”って言うと、私の趣味とはまた違うベクトルの時もありますけど、イケてるオブリを持ってきてくれたりするんですよ。そういう彼のフレーズとかは気に入っています。

ラブサマちゃんの楽曲はロックとポップスのバランスが絶妙ですよね。

 音色はロックが好きなんですけど、“人懐っこいメロディがすごい好きだな”と思うので、“メロディがポップス、音はロック”みたいなところが私の好みなんだと思います。

例えば、「心ない人」のサビはロックなコード進行ですが、それに乗るメロディはポップなメロディです。作曲の段階ではロック的要素はどのように意識しているんですか?

 う~ん……でも、ロックの要素を、私あんまりわかってないかもしれないです。“こういう風にやったらロックになるから、こういうのをやってみようかな”みたいなのとかじゃなくて、けっこう手グセなんですよ。

トニックのメジャー・コードからそのまま全音下に行くコード進行がけっこうあって、それがロックな雰囲気を出しているなぁと思ったんです。

 完全に手グセですね(笑)。

(笑)。それこそ「心ない人」のサビもA-Gと動きますが、この曲を例に、コード進行/メロディ/アンサンブルのアレンジなどがどう進んでいくか教えて下さい。

 この曲もそうなんですが、私はけっこうお風呂でメロディを思いつくんです。“ああ、わかった! こういう感じね”っていうのを一旦保留しといて、そのあと何時間か経ってからもそのメロディを覚えていたら、“いいメロディなんだな”ってことで採用することにして、ボイスメモするんですよ。それで、そのボイスメモからコードを付ける作業をして、弾き語りができる。で、アレンジはお風呂でそのメロディが思いつく時に一緒に編曲してるんですよね。

頭の中で?

 はい。“次のサビの音がこれだから、そこにつながる為にこのオブリが必要だな”とか、そういうのを全部一緒に考えているので、ボイスメモをする時にはドラムも口で歌っている。

じゃあ、コード進行より前に、ドラムやオブリのアレンジが思いついているんですか?

 ベースとかも、一番最初にメロディを思いついた時には構成ができてますね。何も楽器を持たずに考えていますが、“この楽器の音が鳴ってる”っていうのは頭の中でできていて、それをCubaseにドンドン打ち込んでいくんです。ギターのパートもボイスメモに“ぎゅわぁ~ん”みたいな声で入っていて(笑)。

(笑)。

 早く歌わないと忘れちゃうじゃないですか(笑)。それに加えて、曲のイメージも忘れないうちに残しておきたいから、“ここら辺のギター、Devo風!”みたいに、歌いながら言ってます。ヤバいですよね(笑)。

音色もすごくこだわって……
ウザいと思います、私。

「AH!」のリフは、楽曲をリードする印象的なリフですよね。

 このリフは、歌のメロディが思い浮かんだあとに、Cubaseで何パターンか録ったうちのひとつだと思います。

弾いているのは誰ですか?

 今回のアルバムは、私があとから宅録で録ったのを足したり引いたりみたいなこともけっこう行なわれていたので……誰が弾いたのかな? たぶん庫太郎と私で、半分半分くらいで弾いたと思います。

フレーズ自体はラブサマちゃんが作ったものなんですよね?

 そうです。“全部、私のを完コピして下さい”みたいな感じでお願いしてるので。

その“完コピ”は、リズム感やニュアンス的なところも?

 そこはすごく気にします。“アップのストロークが強い”とか、“チョーキングが上がり過ぎ!”とか……“それだったらお前が弾けよ”って感じなんですけど(笑)。私はギターを弾くのが苦手なので、レコーディングの決まった時間内に弾くっていうのがなかなかできないんですよ。“もっとカッコ良く、私より早く弾ける人いるし”と思って、レコーディングは頼んじゃうんですけど、そのわりにこだわりがめちゃめちゃ強くて、人を困らせてます。

(笑)。でも、確固たる正解が自分の中にある、と。

 めっちゃあります。なので、少しでもズレると、“違う……”とか思ったり。音色もすごくこだわって……ウザいと思います、私。

(笑)。プレイ的な面だと、ピッチやリズム感というところが気になる部分?

 ふたりともギターがすごく上手なので、そういう基本的なことで困ることはあんまりないですね。どちらかというとニュアンスの部分で。私のツボって、グレアム・コクソンとかちょっと変な感じのところあるので、技術的なうまさとは別のところにあるというか……。

「I Told You A Lie」のイントロの不安的な感じとか?

 ホント、それです。だから、あれはもう私が全部弾きました。

ギターのレイヤーはどう作っていくんですか?

 私は宅録から始まっていて、デモも宅録で作っているので、とにかくカスな音になるのが怖くてバシバシ重ねちゃうんですよ。右100に歪んだリズム・ギター、左100にちょっとクランチ気味のリズム・ギターを置いておいて、中央には少しだけみたいに、音の数が多くなっていって……申し訳ない。でも最近は、デカいアンプで鳴らしたり、生ドラムで録る時と宅録では、“曲にする時に必要な音の数とか、圧とかって、全然違うんだな”って思ってます。

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