漫画家もギターで大きくなった。Interview|髙橋ツトム 漫画家もギターで大きくなった。Interview|髙橋ツトム

漫画家もギターで大きくなった。
Interview|髙橋ツトム

 アイドルにスポーツ選手に俳優にモデルと、どんな職業にもギターで大きくなったという人は大勢いる。漫画家の髙橋ツトム先生もその一人。『スカイハイ』、『爆音列島』などで知られる漫画家だが、現在ビッグコミック増刊にて、ギターをテーマにした新連載『ギターショップ・ロージー』をスタートさせたという。これがマニアック過ぎる内容で、ギター・ファンならぜひチェックしておきたい超オススメの作品なのだ。一体どんな人物がこんなマニアックな漫画を描いているのか? 気になった編集部は、発行元である小学館にすぐさま連絡を入れ、髙橋先生にインタビューを行なうことに。仕事場に無数のギターを並べる漫画家の素顔とは?

撮影=星野俊 協力=ビッグコミック編集部(小学館)
※本記事は『ギター・マガジン・レイドバックVol.4』から転載したものです。髙橋先生のギター・コレクションは本誌をチェック!


漫画家なら一人でできる。
初期投資もいらないし、
紙とペンがあればいいわけだから。

仕事場にものすごい数のギターがあって驚きましたが、どういったきっかけでギターや音楽に興味を持つようになったのですか?

 初めてギターを弾いたのは中三ですね。65年生まれなので、最初はやっぱりKISS(笑)。俺らの世代ってね、みんなキャロルとかクールスをやるんですよ。やらなきゃいけない感じ。中三の時にそんな流れでギターに興味を持ち始めましたね。

若い頃はかなりやんちゃされていたそうですが、まだまだ不良と音楽は結びついた時代ですか?

 全然結びついていましたよ。俺は、とにかくバンドをやりたかったので、中三が終わった頃にバンドを組みましたね。最初に組んだバンドでやった曲がザ・モッズの「ごきげんRADIO」。

パンクだったわけですね。

 最初はザ・モッズがパンクだってこともわかってなかった。とにかくカッコイイと思っただけで。その頃、TVKで『ファイティング80’s』って番組があったんですけど、あの頃のガキはみんなその番組で音楽を知るんですよ。

今月号では『ヤング・ミュージック・ショー』(詳細はP80~)の特集をやっているのですが、そちらは観ていなかったのですか?

 『ヤング・ミュージック・ショー』はNHKでしたけど、あれでKISSの武道館公演を観たやつなんて俺の周りではけっこう少なかったと思いますよ。ビデオもなかったし。俺ら世代で、もし当時リアルタイムで観てたとしても、ただビックリするだけで、そんなに細かいことは覚えてないはず。俺が一番覚えているのは、番宣でKISSがインタビューを受けている映像ですね。普通の会議室みたいなところにあの衣装を着た4人が入ってきて、ジーン・シモンズが恐竜みたいなブーツを机の上にどかっと乗せるっていう。あの時は、この人達は同じ種族の人間じゃない!って思った(笑)。

初期衝動がKISSという人は多いですよね。

 だって知っていますか? 当時は世界一上手いギタリスト=エース・フレーリーって教わるんですよ。そうやって聞いて、最初に知るのは「ラヴ・ガン」(笑)。あの3連のソロが世界一上手い奴が弾くソロらしいと(笑)。その時はそれを信じるんですよ。で、けっこうすぐ弾けるようになるというね(笑)。

その後はどのような音楽人生を歩むのですか?

 モッズを好きになって、バンドを真面目にやり出すと、いろいろな横のつながりが出てくるでしょ。ある時、コンテストに出たんですよ。そしたら同じ年のやつが、レインボーのコピー・バンドをやっていた。それが、とてつもなく上手かったんですよ。「キル・ザ・キング」のソロとかも完コピで。で、ちょっと嫌になっちゃった(笑)。でも、そいつと仲良くなったんですよね。そいつは変な奴っていうか、もうオタクで。ここはこういうピッキングで弾かなきゃいけないんだとかね。で、ちょっと教わったんですよ。そしたらギターの謎が解けてきた。ここは開放弦を使うんだ、とか。その時に同時に芽生えてきたのが、バンドをやるっていうのはどうことなのか?ってこと。ギターがうまくなるってよりは、バンドを続けていくとか、運営するとか。それってけっこう大変じゃないですか。まずドラムがいないとかね。そういうことのほうが大変になって、チームを作るみたいなことを一生懸命やってましたね。で、そうこうして友達のつながりが増えていった中でね、衝撃的なことが起こった。ひとりの友達が家に遊びに来いって言うわけですよ。その時にかけられたレコードが、セックス・ピストルズ。それまで聴いてきたものが全滅しましたね。もうぺんぺん草も生えないほど感動した。あの1枚のアルバム『Never Mind the Bollocks, Here’s the Sex Pistols』で、すべてが終わり。あれ以上のものはないと思っちゃいましたね。ギターがうまくなるとかそういうことじゃないんだ、バンドをやらなきゃいけないと。だからそこからギターは進歩していないですね(笑)。

そこからどうやって漫画家の方面に進んでいったのですか?

 まだ情報もないし、ライブハウスに観に行って、いいなと思ったら近づいて、他のバンドをつぶしてドラムを引き抜いたり。でも、その一方で、ボーカルがいなくなったり、毎回イチからやり直し。そんなことを続けていくうちにある日、自分はギターを弾きたいのに、単純に言うと自分はキース・リチャーズやりたいのに、ミック・ジャガーがいないってどういうこと? 一生そういうメンバーと出会わなかったどうするわけ?って気分になったんですよ。自分の中には、弾き語りしようとかって頭はないわけですよ。ただバンドをやりたい訳だから。そこでね、諦めたんです。メンバーを探すのは時間の無駄だと思っちゃった。一人でできること何かな?って考えた時、俺は小学校の時に漫画家になりたかったんですよ。漫画家なら一人でできる。初期投資もいらないし。紙とペンがあればいいわけだから。それで漫画を描くことになったんですね。

それは何歳くらいの時ですか?

 21歳の時ですね。25歳でデビューしているから、もう今年で30年ですね。マジか!? 30年もよく描いてきたと思いますね。


1930〜’40s Rickenbacker B6/通称パンダと呼ばれるリッケンバッカーのラップ・スティール。ネックと一体型となっている黒いボディ部分はベークライト素材でできており、とても重量感がある。ピックアップは、1930年代に開発されたホースシューと呼ばれるピックアップ。同年代のパンダをもう1本所有しているが、明らかに音の太さに違いがあるとのことだ。『ギターショップ・ロージー』の読み切りは、おじいさんの形見として眠っていたリッケンバッカーB6を再生するというお話。涙腺の弱い高齢者は、ぜひハンカチを片手に読みたいエピソードだ。

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