Interview|マサ小浜ファンタスティック・ネグリートが求めた音 Interview|マサ小浜ファンタスティック・ネグリートが求めた音

Interview|マサ小浜
ファンタスティック・ネグリートが求めた音

“アンサンブル能力”がすごく大事な気がしますね。

最新作『Have You Lost Your Mind Yet?』は「Your Sex Is Overrated」にフィーチャリングで名前が入っていますが、この曲だけの参加ではないですよね?

 たぶん全曲で僕は参加していますよ。

その中でこの曲だけ名前が入っているのは?

 この曲だけギター・ソロが長いから、彼がそうしたかったんだと思いますよ。さっき言ったMe and~に「Since U Been Overatted」っていう曲があって、それはイーサン・ファーマーっていうライオネル・リッチーのバックとかもやっている有名なベーシストと、ジェイミー・ギャンブルっていうドラマーと生で録ったんですけど、その時のソロを「Your Sex Is Overrated」で使っているんですよ。

えぇ?!

 20何年か前の自分と共演しているんです(笑)。

なるほど! じゃあ“フィーチャリング、20数年前のマサ小浜”ということなんですね?

 おもしろいでしょ? リズム・ギターはあえて去年録ったやつで。“ソロも弾かせてくれ”って言ったんですけど、やらせてくれないんですよ。“このソロが良いからダメだ!”って。

そうなんですね(笑)。このソロ、個人的にめちゃくちゃ好きなんですよ。たしかに録音の感じがほかの音と質感が違って、部屋を生かした感じで録ってるなぁって思っていたんですが、そういうことなんですね。

 何度か送られてきて、“ギター・ソロのところだけ浮いているからどうにかしろ”ってダメ出ししたんですけど、“これが限界だ!”って(笑)。これは言われなくちゃ誰もわからないですよね。

ファンタスティック・ネグリートのスタジオでレコーディング中の様子(本人提供/Photo by Carol Dutra)。

マサさんはブルースだとどういうギタリストから影響を受けているんですか?

 最初はやっぱりクラプトンから入って、B.B.キング、スティーヴィー・レイ・ヴォーンにハマって、そこからバディ・ガイとかいろんな人を聴くようになった感じですね。

マサさんにとってブルースっていうのはどういう存在ですか?

 ブルースは常に根底にあります。J-POPのバックをやる時も、ブルースっぽいフレーズはけっこう入れていますしね。ポップな女性シンガーの曲とかでも、けっこうブルージィなフレーズを弾いていたり、何年か前のEXILEのツアーで最後にギターがジャムるところがあったんですけど、もろにブルースのリックを個人的な遊びとして入れたりしていました(笑)。去年出た矢沢永吉さんのアルバムでも僕がけっこう弾いているんですけど、それもロックンロールでブルージィなプレイをすると、矢沢さんが“いいね!”って言って下さって、アルバムに残っている曲も多いですね。2曲目「魅せてくれ」はマイケル・ランドウと僕が左右分け合って弾いていますよ。

豪華! 最後に、世界で活躍するマサさんにぜひ聞きたいんですが、アメリカで日本人ギタリストが勝負するうえで大切なことって何ですか?

 歌の時はいかにシンガーを引き立てるかっていうのが、アメリカのミュージシャンには特に求められる気がしていますね。エゴがあるようでないようなプレイというか。例えばスティーヴ・ガッドの来日公演をブルーノートに観に行くと、すごく小さい音で演奏しているんですよ。ああいうのを観ていると、いかに主役の歌を大事にしているかを感じます。そういう“アンサンブル能力”がすごく大事な気がしますね。あと、もちろん今と昔とで事情がだいぶ変わっているとは思うんですけど、僕がやっていた頃はインターネットがそこまで普及していなかった頃だから、いろんなところに顔を出して、たくさんのアーティストと知り合って、あらゆる人の前で演奏して自分のギターを聴いてもらうことをすごく大事にしていました。でも今は、Instagramとかを観ていると、あの短時間で完璧な演奏をする素晴らしい人がいっぱいいますし、やり方によってはインターネットで世界中の人に観てもらえる可能性があるので、ある意味すごく恵まれた時代だなって思いますよ。

使用ギター

Schecter
MASA KOHAMA Signature Model AC-MK/SIG

メインで使用している、シェクターのマサ小浜モデル。80年代に入手したもう1本のメインであるPACO製のオリジナル・モデルをベースに製作された。そのため、こちらもコントロールはマスター・ボリューム、ローカット、マスター・トーンという構成となっている。ピックアップ・セレクター下のトグル・スイッチはフロント&リアのコイルタップ。

Aki’s Guitar Shop
Original ST Style

東京渋谷代々木八幡でギター・リペアやオリジナル・モデルを製作するAki’s Guitar Shopによる1本。ファンタスティック・ネグリートの1st『The Last Days Of Oakland』で活躍したそう。ペグはロック式、というのがマサ小浜の流儀で本器にはシュパーゼルを搭載。コントロールは一般的な1ボリューム、2トーン仕様だ。

Gibson
ES-335

90年代製のリイシュー・モデルで、ファンタスティック・ネグリートのアルバムでも3作すべてで活躍しているそう。シリアル・ナンバーからおそらく1996年製と思われる。改造点はなく、ほぼオリジナルで使用している。フロント&リアをミックスにしてボリュームを絞ったカッティング・サウンドがお気に入りとのこと。

最新作

『Have You Lost Your Mind Yet?』
Fantastic Negrito

BigNothing/Ultra-Vybe/OTCD-6816/2020年8月14日リリース

―Track List―

01.Chocolate Samurai
02.I’m So Happy I Cry (feat. Tank)
03.How Long?
04.Shigamabu Blues
05.Searching For Captain Save A Hoe (feat. E-40)
06.Your Sex Is Overrated (feat. Masa Kohama)
07.These Are My Friends
08.All Up In My Space
09.Justice In America
10.King Frustration
11.Platypus Dipster

―Guitarists―

ファンタスティック・ネグリート、マサ小浜