Interview｜タッシュ・サルタナ
初のシグネチャー・モデルはどう生まれたのか？

ギターを抱えながら歌い、さまざまな楽器の演奏も同時にこなす、新時代のギター・ヒロイン＝タッシュ・サルタナ。彼女が愛するエレキ・ギターは、テレキャスターやストラトキャスター、ムスタングなど、いつもフェンダーのモデルだった。そんなタッシュがついに、シグネチャー・モデルを発表。選んだのはストラトキャスター。ロックなアツいソロを弾きまくる彼女にぴったりな、HSSモデルだ。このTash Sultana Stratocasterへのこだわりについて、本人に話を聞いていこう。

質問作成＝福崎敬太　翻訳＝トミー・モリー　協力＝フェンダーミュージック

赤とゴールドという組み合わせが好きなのよ。

COVID-19が猛威を振るっていますが、オーストラリア、メルボルンの状況はどうなっていますか？　特にバスカーたちにとっては死活問題だと思いますが……。

　オーストラリアはどの州でもCOVID-19によって、従来とは別の現実を過ごすようになってしまった。ヴィクトリア州は確実に最悪の状態を迎えていて、メルボルンは今年一年で最悪の状況を現在迎えている。3月以降、街はロックダウン状態で、そこに住む人々たちのことを私は常に気にかけているわ。

そして今年はあなたの来日が控えていたので、それが実現せずとても残念です。来年、再来年と引き続きあなたのステージを心待ちにしている日本のファンにメッセージをお願いします。

　日本を愛している。行ける日を待ち切れないし、みんなのためにプレイする日を楽しみにしているわ！

さて、フェンダーからあなたのシグネチャー・モデル、Tash Sultana Stratocasterが発表されました。ストラトキャスターを弾いている姿もよく見ますが、同じくらいテレキャスターも使っていますよね？　今回ストラトを選んだ理由は？

　テレキャスターは私にとってフェイバリットなギターのひとつだけど、ストラトキャスターこそ私のサウンドであり、ベストなプレイができるギターなの。

初めてフェンダーから自身のシグネチャー・モデルが出せた感想を聞かせて下さい。

　自分のギターを作ってもらえるなんて、夢に見たことすらなかった。もうすぐ私のシグネチャー・モデルがリリースになるということを考えて、かなり興奮しているわ。

赤いマッチング・ヘッドとゴールド・パーツの見た目で、「Cigarettes」のMVで幼い頃のあなたが抱えていたギターのおもちゃを思い出しました。

　ナイスなところに気がついたわね（笑）。でも、そこから始まったわけじゃないの。単に私は赤とゴールドという組み合わせが好きなのよ。

フェンダーとの試作はどのように進んだのでしょうか？

　ディスカッションを行なってプロトタイプを作りたい、とフェンダーからアプローチがあったのは2019年のことだった。元のデザインはこれとは違っていたけれども、時間をかけて改良を重ねていく内にこのデザインに落ち着いたのよ。

どのようなサウンドを目指しましたか？

　私は常に最大限にクリーンなサウンドをギターに求めてきたの。クリアなトーンから始めることで、どんなトーンでも作り出せるということに気がついたからね。つまり、整ったサウンドからグシャグシャなサウンド、歪んだサウンドも自在に出せる。クリーンなサウンドが素晴らしければ、あとはすべてコントロールの仕方で決まるのよ。

最終的に、このギターはどんな1本に仕上がったと感じていますか？

　これはアメリカン・パフォーマー・シリーズのストラトキャスターをベースにしていて、コイルタップなどのさまざまな機能を持たせている。これによって、思い描いたどんなサウンドでもプレイできるようになったわね。

ストラトキャスターの独特なサウンドは
ブルースと完璧にマッチしている。

新しい楽曲「Pretty Lady」は6年もかけてようやく完成したそうですね。

　曲の断片をまとめるのがなかなかうまくいかなかったの。かなりシンプルな曲だけど、ベーシックなだけのサウンドにはさせたくなかったのよ。この曲を書こうとした時はいつも、どこか自分らしくない形に落ち着いてしまっていた。最終的に形になったけど、それでもかなりシンプルな曲よね。時にはそうなるべき形に落ち着くってことかしらね。

「Pretty Lady」のグルーヴィなアルペジオのループは、エフェクターもほとんど使っていない非常に温かみのあるサウンドです。音作りで心がけていることはありますか？

　クリーンでさっぱりとしたサウンドにして、暖かみや包容力のあるものを目指したわ。あと、実はこの曲はループを使っていないの。

そうなんですか？　そういえば「Greed」の“Studio Jam Version”もループではないバンド・アレンジでしたよね。このビデオのドラム・プレイやクラップのトラックを聴いて、改めてあなたの優れたグルーヴ感を再認識しました。ギター・プレイにおいてグルーヴを出すコツは？

　リズムに対するセンスを向上させるベストな方法は、クリックに合わせてプレイすることよ。そして異なる拍子でもプレイしてみることも有効ね。

そして、このビデオでは新しいシグネチャー・ギターも登場しています。今後このギターをどんな時に使うと思いますか？

　さっきも言ったように、私は最高にクリーンなトーンを作る方法を常に追求している。クリーンで一切の欠落のないサウンドから始められれば、自分のプレイによってどんなサウンドでも生み出すことができる。そこからの可能性は無限ね。私がほかのすべてのギターでそうしてきたように、このギターも限界まで引き出すつもりだし、特にこのギターはそういう前提で作ってもらったのよ。

話は変わりますが、カスタム・ルーパーがついに完成したようですね。さまざまな機能があると思いますが、特に気に入っているポイントを教えてもらえますか？

　このルーパーを作るまで2年もかかったわ。目指したのは最大限にクリーンなサウンドであること、そしてすべてがステレオ録音可能かつドライな状態でのステレオ録音も可能なことだった。

全チャンネルがステレオ対応なんですね。

　こうすることで、私のイヤー・モニターから自分が聴きたい状態のミックスで聴けて、オーディエンスはその部屋にフィットしたミックスが聴けるようになっている。すべてのサウンドはデジタルで作られていて、ライブの最初から最後まで私はクリックに合わせてプレイしている。

では最後に、このTash Sultana Stratocasterをどういう人にオススメしたいか聞かせて下さい。

　このギターをすべてのレベルのプレイヤーにすすめたいし、これが誰かに弾かれている姿を今すぐにでも見たいわ！