10代の頃はもっと激しく
ギターを憎んでいたので（笑）。
今作の収録が決まってから、以前のバージョンを聴き返したりはしましたか？
“よし、聴くぞ！”みたいな感じでは聴かなかったかも。“ボーカルの譜割をどうしよう？”って聴き返すことなんかはありましたけど、“今のライブでやっている雰囲気が出るといいな”と思っていたので。
以前と比べるとアンサンブルがすごく整頓されているように感じたんですが、ギター以外も含めて、各楽器の配置の仕方はこの10年間でどう変化した？
若い頃は噛み合うか噛み合わないかスレスレのラインで歌うみたいなのがすごく気持ちよかったんですけど、そこは変わってきたかなっていう感じはしますね。“少しは整頓されてるほうがいいのかな”って。慣れただけかもしれないけど（笑）。あと、さっきも言ったように、パーカッションが入ったのが一番大きかった。別にバンドみんなで集まって“シマダボーイが入って変わっちゃったから、みんなでこういう風に変えていこうよ”みたいなことは言わなかったんですが、全員がなんとなく“あ、そこでそういう風にやるんだったら、ここはこうして……”みたいに試行錯誤していった結果というか。
アンサンブルを考える時に、参考にしたり“うまいな”と思ったりするアーティストはいますか？
“うまいな”なんて全員に対して思いますよ（笑）。ただ、僕はスパークスがすごく好きなんですが、グラムロック的でありながら花形じゃないギターの使い方には憧れましたね。彼らはグラムロック的な出で立ちで70年代に出てくるんですけど、ギター・ソロがほとんどないんです。あっても、たぶん書き譜のソロなんですよね。
ギタリストとしても影響を受けている？
いや、でもギタリストとしては、あまり影響受けてないかも。スパークスはボーカルとキーボードのふたりで、初期には正規のギタリストはいたけど、パーマネントなメンバーはボーカルとキーボード、というイメージ。でも、その“ギターの在り方”っていう部分ではすごく影響を受けましたね。1975年のアルバムで『Indiscreet』という作品があるんですが、トニー・ヴィスコンティがプロデュースしていて。それにいたっては、ついにギター・ソロすらなくなって、10代の頃に“これだよ！”思ったんですよ。10代の頃はもっと激しくギターを憎んでいたので（笑）。
憎んでいたんですか（笑）。
憎んでいた時期もありました（笑）。
それでも、今もギターを弾き続ける理由は？
単純に歌いながらやるんだったら、これが一番やりやすいっていうことだと思います。
“本当はもっとギターを弾きたいんじゃないか？”
今作で使った機材について教えて下さい。
レス・ポール・スタジオと360。テレキャスターを使ったのは「返信」だけですね。アコギはマーチンのD-35Eでした。アンプはVOXと、もしかしたらヤマハのF100も使ってるかもしれないです。
エフェクトは？
さっき話したMXRのPhase90とBONDI EFFECTSのSick As Overdrive以外だと、「ストーリー」のギター・ソロに実はボスのTW-1（オートワウ）をかけてるんですよ。オーバードライブにオートワウをかけて、“発音は良いけどアタックを潰している感じ”の設定にしていて。そうすると、“オートワウをかけてるな”っていう感じにならずに、ちょっとツヤッとして前に出るんですよね。
これまでのギタマガでのインタビューでは、“ギタリストという感覚はない”という話で一貫していますが、あえて最後に、ギター弾きとしてどんなプレイを目指していきたいかを聞かせて下さい。
何かしらの変化は絶対に訪れると思うんですよね。コロナ禍になる少し前くらいに突然、INUのギターを耳コピするブームがきて、“もしかしたら、どこかに自分も「ホントはギタリストになりたい」っていう気持ちがあるんじゃないか？”ってふと思ったんです。結局あんまり深入りしないでやめちゃったんですけど。でも、それがちょっと希望に思えたんですよ。“本当はもっとギターを弾きたいんじゃないか？”みたいな、そういう感覚を一瞬でも垣間見た時間があって。それが、複雑でもあり、ちょっと嬉しくもあったんですよね。今後はどうなるかわからないですけど、やっぱり今みたいな左手を活かしたコードワークをもっとやっていきたいですね。
より面白いコードだったり？
そうですね。最近プリファブ・スプラウトにハマってしまって、パディー・マクアルーンのコードの感じが、今の僕にはすごいキテるんですよ。初期の曲にある洗練されてない複雑なコードの鳴りというか。今回のアルバムを作っていても感じましたが、そういう部分をもっと出せたらいいなって思いましたね。
最新作
『アナザー・ストーリー』 スカート
ポニーキャニオン／PCCA-04983／2020年12月16日リリース
―Track List―
01. ストーリー
02. セブンスター
03. 返信
04. ともす灯 やどす灯
05. 月の器
06. おばけのピアノ
07. 千のない
08. サイダーの庭
09. スウィッチ
10. わるふざけ
11. ゴウスツ
12. さかさまとガラクタ
13. すみか
14. 花をもって
15. 月光密造の夜
16. ガール
―Guitarist―
澤部渡
