Interview | 崎山蒼志 待望のメジャー1st作が示した、恐るべき18歳の多面性。 Interview | 崎山蒼志 待望のメジャー1st作が示した、恐るべき18歳の多面性。

Interview | 崎山蒼志 
待望のメジャー1st作が示した、
恐るべき18歳の多面性。

ジュリアン・ラージは
“ヤバいな”と思いながら聴いています。

先ほどブルースマンという話が出ましたが、「鳥になり海を渡る」や「回転」などで、ブルージィなメロディや歌い方も聴かせていますね。

 本当ですか? それは、あまり意識していないです。僕はブルースやジャズといったルーツ・ミュージックはあまり通ってきていないので。

幅広くいろいろな音楽を聴いていく中で、ブルースやジャズのフィーリングも自然と備わったのかも……?

 そうかもしれないです。父親がアシッド・ジャズとかがすごく好きで、家の中とか、家族で車で出かける時によく流れていたんですよ。それが自分の中に入っているのかもしれません。最近、ジャズにはちょっと興味があって、ジュリアン・ラージとかは“ヤバいな”と思いながら聴いています。あの人の音楽って、“どういうこと?”みたいな感じなんですよね(笑)。今回の『find fuse in youth』には「観察(interlude)」というエレキ・ギターの独奏曲が入っているんですけど、ちょっとジャズっぽかったり、コンテンポラリーな雰囲気で弾いていて。あの曲はジュリアン・ラージとか、その関連で知った人から影響を受けています。

「観察(interlude)」の崎山流ジャズ・ギター、すごくおもしろいです。インストだから単純にギタリストとしての一面も見えて。

やっぱりギターは、すごく好きですね。

今、ジュリアン・ラージのほかにハマっているギタリストとかいますか?

 最近はガールバンド(アイルランドのポスト・パンク/ノイズ・ロック・バンド)のギターも好きです。もうずっとノイズとか効果音を出している感じなんですよ。効果音がリフみたいな曲を作ったりしていて、すごくいいなと思う。あと、ギタリストという観点で見ている人は少ないかもしれないけど、マック・デマルコさん。歌がメインの感じがするけど、アコギの音がすごくいいんですよ。僕とは全然違う優しい音で、メチャクチャこだわりがあるんだろうなと思う。

「観察(interlude)」ではアウト・フレーズ気味の導入からジャジィになっていく展開や、エンディングの壮大なリバーブが魅力的です。リバーブといえば、「find fuse in youth」で深い残響をかけたエレキ・ギターをパッドとして使っていますね。

 キーボードみたいな“ファーッ”という音を入れたくて、リバーブをかけたギターを入れることにしました。僕はデス・バイ・オーディオのReverberation Machineというリバーブがすごく好きで、それを使っています。真ん中のツマミをフルにすると壮大なリバーブ効果が出せるんですよ。あと、Reverberation Machineはリバーブを深くすると音が歪んでいくんです。そこも好きだし、音が歪むことで隙間がなくなる感じもいいですね。それに、「find fuse in youth」は録る時にオン・マイクとオフ・マイクを立てて、オフ・マイクの音も混ぜました。ステレオ感のある音にしたかったんです。

「そのままどこか」で
マーティンの良さを体感できた。

続いて、アコギの弾き語りにストリングス・カルテットを加えた「そのままどこか」も今作に奥行きを持たせています。

 去年書いた曲で、“恋”がテーマになっています。そういう曲はあまり作ったことがなかったので、やってみようということになりまして。言われないと恋がテーマだってわからない歌詞ですけど、自分なりのラブソングでいいかなと思って。アレンジに関しては、曲と歌詞を書きあげた時に“ストリングスを入れたいな”と思ったんです。そのことは別に言わなかったんですけど、アレンジをして下さった宗本さんからデモが返ってきたら、ストリングスを入れたバージョンもあったんですよ。それで、“おっ? おおっ!”みたいな(笑)。カルテットの方たちがスタジオに来て下さって、その時に初めて生のストリングスを聴いて、すごく感動しました。あと、この曲は同じ事務所の先輩である堂島孝平さんのマーティンD-28をお借りしたんです。マーティンの良さを体感できたことも含めて、「そのままどこか」のレコーディングは強く印象に残っています。

いい経験をしましたね。さらに『find fuse in youth』には打ち込みを生かした曲も多いです。「waterfall in me」、「目を閉じて、失せるから。」、「Repeat」など、崎山さんならではの音楽嗜好が出ているなと。

 最近はオルタナティブなヒップホップみたいなものをけっこう聴いているんです。Jペグマフィアも聴いているし、もっとクラシックなものも好きです。ヒップホップはあまり知らなかったけど、一昨年にタイラー・ザ・クリエイターという人のアルバムを聴いて、めっちゃカッコいいなと思ったんです。それからヒップホップを聴くようになって、自分もビートン(・ダウン・ヨー・ブロック)みたいなことをやりたくなった。それで、「waterfall in me」という曲ができたんです。

「waterfall in me」はまさに現代のヒップホップ・トラックですね。中間でいきなり場面が変わってアンビエントな感じになりますが、この曲はどんなイメージで作りましたか?

 この曲は、大雨が降っている日に作ったんです。去年はコロナの影響で実家にいることも多くて、そういう状況だったからかいろんなイメージが湧いてきて。最初は中間のセクションは雨つながりで、プリンスの「Purple Rain」みたいな感じにしたんですよ。

おお、プリンス!

 ファズ・ソロがあって、ダイナミクスが効いていて……みたいな。でも、その後サビの歌詞を書き換えたんですよね。そうしたら、プリンスは合わなくなったなと思って。それで、どうしようかなと思ってアンビエントとリズムで遊んでいたら、今のセクションができあがりました。

とにかくサウンド面での遊び心というか、実験性に満ち溢れたアルバムですよね。従来の弾き語り少年のイメージとは全然違うというか……。「waterfall in me」は歌の加工までしていますし。

 声いじりはけっこうやりました。いわゆるサビにあたるパートはキーを2音下げて歌って、それを後から2音上げたんです。そこは、子供の声みたいにしたかったんですよね。子供の頃の自分を楽曲に投影したいなと思って。あと、サビでエレキ・ギターが鳴っていますけど、家で録った素朴なエレキの音をステレオで流しました(笑)。

これからは、
バンドもやろうと思っています。

サイバー・テクノっぽい「目を閉じて、失せるから。」と幻想的なスロー・チューンの「Repeat」についても話してもらえますか?

 「目を閉じて、失せるから。」はギターが入っていない曲ではあるんですけど、もとはサビみたいなパートの“目を閉じて……”というのを、ギターを弾きながら歌っているデモだったんです。でも、僕がよく聴いているハイパー・ポップというか、チャーリーXCXみたいに電子音がばりばりに鳴っているようなものをやりたかったんですよね。和音を分解して、MIDIで並べているみたいなもの。それをやっちゃったという曲です。「Repeat」はアンビエントだったり、SF感だったりで遊んだ曲という印象ですね。僕は2000年代に入ってから生まれたんですけど、自分が子供の頃というか、2001年くらいの雰囲気をイメージして作りました。映画『2001年宇宙の旅』とかを想起しつつ、同時にフランク・オーシャンみたいな感じもあって。それをもっとB級というか、かわいい感じにしたい……みたいな。そういう曲です。

なるほど〜。なんかこう、名刺代わりの作風が求められがちなメジャー・デビュー作の中で、崎山さんの中にある“尖り”や“闇”のようなものを示しているじゃないですか? それがカッコいいです。

 ありがとうございます。今回アレンジャーの方と組ませていただいて、いい形で提示できたことにはすごく感謝しています。でもその反面、自分だけの趣味で作ったものも入れたいという思いがあったんです。それを実現した結果、冒頭に言った“カオスなアルバム”になったわけですけど(笑)。

それが、いい方向に出ていると思います。それにしても、崎山さんは本当に幅広く音楽を聴いていますね。どういうリスナー遍歴なんですか?

 さっき話したように僕はthe GazettEでロックに目覚めて、小学校の頃はずっとビジュアル系を聴いていたんです。で、2013年頃に邦ロックがすごく流行っていて、凛として時雨やクリープハイプ、ナンバーガール、ゆらゆら帝国あたりを聴いていました。それとは全然違う流れで、父親が好きなアシッド・ジャズとか、オアシス、リンキン・パーク、BLANKEY JET CITYもいいなと思う……みたいな感じでした。僕は、“未聴感”のあるものが好きというか、聴いたことがない音楽に惹かれる面がものすごく大きいんです。ジャンルに関係なく“うわっ、すげぇ!”と思った音楽をどんどん聴いていって、今に至っています。ヒップホップもそうだし、ポスト・ロックもそうだし、UKパンクとかも好きですし。それに、いいなと思ったアーティストはずっと好きで、好きな音楽が変わっていくタイプじゃない。どんどん広がってきている状態です。

同時に、自身もほかにない音楽を聴かせたいという気持ちがあるんでしょうね。さて、『find fuse in youth』は独創的な魅力に溢れた一作に仕上がりました。本作を機にメジャー・フィールドで活動を行なうことになりますが、今後はどんな存在を目指しますか?

 未聴感みたいなものは大切にしつつ、やっぱりポップなものも好きなので、両立させたいというのはありますね。ポップなものをやるんだけど、アルバムとかではもっと“はぁ?”というような音楽も提示したい。それを自分のスタイルとして目指していきたいです。それに、バンドもやりたいんですよね。3月に高校を卒業して環境が変わったら、メンバーを探そうと思っています。あと、映像も撮ってみたい。自分の曲のMVを、自分で作ってみたいんです。やりたいことはたくさんあって、これからひとつひとつ実現させていけるといいなと思っています。

崎山の最新愛用ギターたち!

Ovation Special Custmized Adamas

崎山はずっとオベーション・アダマスをメイン器として愛用しているが、このモデルはカスタムショップの特注品。新作の収録後に入手したそうで、“優しく、不覚にうねりを湛えているような音”とかなりお気に入りの様子。ちなみにアダマスはカーボンファイバー・トップ/リラコード(ガラス繊維強化プラスチック)・バックのボディやラウンドバック・スタイル、“エポレット”と呼ばれるマルチ・サウンドホールなどが大きな特徴。

Ovation C2078AXP

ボディー・トップにエキゾチック・ウッドが採用されていることが最大の特徴であるC2078AXP。本器はサペリ材の鮮やかな木目と深みのあるサンバースト・フィニッシュの取り合わせにより、非常に美しい1本に仕上がっている。豊かな鳴りや“木”を感じさせるナチュラルなトーン、レスポンスの良さなどトーン・プロダクトも上質。新作では「Undulation」、「Heaven」、「鳥になり海を渡る」、「Samidare」などで活躍した。

1973 Gibson SG Special 

新作で活躍したというギブソンSGスペシャル。P-90(シングルコイルPU)仕様が一般的だが、73年製の本器はミニ・ハムバッカーを搭載。マホガニー・ボディ特有の粘りとミニ・ハムバッカーの特性が融合されて、ビンテージ感を湛えたウォームかつ枯れた味わいの音色を引き出せる。

Danelectro JADE57

ダンエレクトロの名器U2の仕様を忠実に継承しつつ、機能性に優れたアジャスタブル・ブリッジを採用してより扱いやすいモデルに進化させたJADE57。ダンエレの代名詞であるメゾナイト(硬質繊維板)のボディ、そしてリップスティックPUを採用し、歯切れの良さと豊かなエアー感を備えたトーンを創出していることは要チェック。「find fuse in youth」で活躍!

崎山の最新ボードはいたってシンプル!

(アコギ用/上段右から)
BOSS /TU-3S(チューナー)
L.R.Baggs/PARA Acoustic D.I.(DI)

(エレキ用/下段右から)
EarthQuakerDevices /Plimes(オーバードライブ)
Death by Audio /Reverberation Machine(リバーブ)
Death by Audio /Fuzz War(ファズ)
BOSS /TU-3(チューナー)

(パワー・サプライ)
CAJ/AC/DC Station

崎山のペダルボードは、アコギ用が上の2台(チューナーとDI)、下の4台がエレキ用という内訳。エレキ用ペダルは右から順に、3つのクリッピング回路が選べるEarthQuaker Devicesのオーバードライブ(Plimes)、「find fuse in youth」などで大活躍のデス・バイ・オーディオ製のリバーブ(Reverberation Machine)、そして同ブランドの轟音系ファズ(Fuzz War)、ボスの定番チューナー。

作品データ

『find fuse in youth』 崎山蒼志

ソニー/SRCL-11655/2021年1月27日リリース

―Track List―

01. Undulation (album ver.)
02. Heaven 
03. 鳥になり海を渡る
04. 花火
05. そのままどこか
06. waterfall in me  
07. 目を閉じて、失せるから。
08. Samidare
09. 回転
10. 観察 (interlude) 
11. ただいまと言えば 
12. Repeat 
13. find fuse in youth