Interview | 小原綾斗(Tempalay)×さかしたひかる(ドミコ) 2人で築き上げた『ゴーストアルバム』でのサイケデリア Interview | 小原綾斗(Tempalay)×さかしたひかる(ドミコ) 2人で築き上げた『ゴーストアルバム』でのサイケデリア

Interview | 小原綾斗(Tempalay)×さかしたひかる(ドミコ) 2人で築き上げた『ゴーストアルバム』でのサイケデリア

良い音を再現するのに時間がかかりすぎて、何度も帰りたくなりました。(さかした)

では改めて、今作で使った機材を教えてください。

さかした ギターは色々と使いましたね。僕が所有しているのは今日持ってきたフェンダーのムスタングと、ダイメル・ギターワークス製ファイアースターだけなんですけど。

小原 ムスタングは「シンゴ」のサビで使ったんじゃないかなあ。

さかした それと「Odyssey」と「へどりゅーむ」でも使いましたね。でも、どの部分かは覚えてないなあ。

パートごとにギターを変えて録ったんですね。

さかした そうです。パートごととか、オブリの重ねフレーズなんかもギターを変えながら録っていきました。本当にめんどくさかったですね(笑)。

小原 こっちも面倒だった(笑)。付き合わされましたね。

さかした 逆でしょ(笑)。

ファイアースターはいかがでしょう?

さかした 「Odessey」のアーミングで使いましたね。しかも、アームの操作は僕がやった気がする。

小原 横にいてもらってね(笑)。

これってさかしたさんのメイン器ですよね?

さかした そうです。ほかの日はレンタルしたジャズマスだったんですけど、その日はなかったので、これを代わりにして。パワーだけが取り柄の体育会系なギターですよ。

小原 僕はジャズマスのボディ・シェイプが体にフィットしないので、弾きにくかったです。でも、音の印象としてはそんなにジャズマスっぽくないですね。

ほかに使ったギターは?

さかした ビンテージのホワイト・ファルコン、64年製のジャズマスター、58年製のストラトも使ったかな。アンプだとマーシャルのブルースブレイカーも使いましたし。

ビンテージが中心なんですね。

さかした 2人で音を決める際に、共通言語として出てくる音源がビンテージ機材を使ったものが多かったんです。

ペダルに関してはどうでしょう?

さかした BlackstrapのHatchjawというファズはよく使いましたね。

これってドミコの『VOO DOO?』で活躍したという、Tonebender MARK Ⅲのコピー・モデルのDIZZY TONEをさらにコピーしたモデルですよね?

さかした そうです。ギター以外にもAAAMYYY(syn,cho)のキーボードにもかけて使いましたね。

小原 あとは金のファズ。

これも以前の取材時にさかしたさんのボードに入っていた、BlackstrapのBuzzaround風の音がするファズじゃ……。

さかした 貸したままになってますね(笑)。

今作のファズの音はめちゃくちゃ良かったです。

さかした そうなんですよ。でも、その部分に二胡が重なってしまって。

小原 重なってしまうっていう言い方(笑)。二胡のほうが大事だよ!

さかした すげえショックだった……冗談ですけどね(笑)。

(笑)。空間系はどういったものを使いましたか?

小原 この金のファズとElectro-HarmonixのMemory Boyを組み合わせましたね。

さかした 「EDEN」のAメロはたしかMemory Boyを使ったと思います。あとはhologram electronicsのmicrocosmが活躍してくれました。サンプリングした音をランダムに流したり、ピッチを可変できるディレイなど、マルチな空間系のエフェクターなんですよ。海外で先行発売していて、向こうから届いてすぐにレコーディングで使ったので、日本で一番早くこれの音が入った音源になったと思います。

小原 しかも、これって二度と同じ音が作れないんだよね?

さかした 良いと思った音を再現するまでに時間がかかるので、何度も帰りたくなりましたね(笑)。

その音はどの曲で聴けますか?

さかした 「シンゴ」のサビや、「へどりゅーむ」あたりですね。

ちなみに小原さんのギターにはモジュレーション系のイメージがあると思うんですよ。

小原 ただ単純に好きってだけですかね。あとは自分の表現したいものを具現化した時にそういう形で出るんじゃないかなあ。

表現したいサウンドが揺れている、と。

小原 そうですね。淡くて、浮遊しているというか。とらえどころがないとか、おどろおどろしいというか。たぶん、完璧なものや綺麗なものが好きじゃないんだと思います。

アルバムのジャケット・デザインも、焦点を実物のCDよりも奥にズラすと模様が浮き上がってくる“マジカルアイ”を使っていますよね。実物をちゃんと見ないことによって、表現したいものが見えてくるのも何かの象徴なのかと勘ぐってしまいました。

小原 あ、逆にそうか。僕は見えているものの奥というものを表わしたくて。でも、結局は同じことですね。

そういった“ズラしの視点”をもった小原さんのモジュレーションと、さかしたさんがこだわった歪みが融合したメジャー・デビュー作ですが、どういった人に届いてほしいと思いますか?

さかした けっこう……ないな(笑)。普通にもっと多くの人に届いてほしいっていう当たり前のことしか(笑)。

小原 それすら考えてないでしょ(笑)。僕は信頼してる人たちに良いよねって言ってもらえればいいんですよ。その人たちが好反応であれば、そら色んな人に刺さるやろって思っています。もちろん、多くの人に聴いてほしいですけどね。

最後に現在開催中の“ゴーストツアー”への意気込みをお願いします!

小原 12公演、ひかるくんの金色のファズを踏み倒して、借りパクしようと思ってます。

さかした そのためのツアーだもんね(笑)。

小原 すでに1個借りパクしてるけど(笑)。なんで、俺の放つ轟音はひかるくんの轟音だと思っていただければ! ぜひ、生で体感してほしいと思います。

DEIMEL GUITARWORKS
FIRESTAR

高出力&独創的なルックスを持つさかしたのメイン器

今作で小原が弾いたのは、普段はさかしたのメイン器として活躍するこちら。ドイツ・ベルリンにあるギター工房、ダイメル・ギターワークス製ファイアースターだ。リバース・ヘッド、スワンプ・アッシュ・ボディが特徴的なルックスを持ち、Curtis Novak製JM-90を2基搭載する。「Odyssey」で聴けるクリーンやアーミングしたサウンドは本器によるもの。さかした同様に小原も本器については“ただただ出力がデカい印象”と語る。

FENDER
MUSTANG

魔改造が施された暴れ馬

昨年、さかしたがネット・オークションで手に入れたと言うのが、多数の改造が施されたフェンダー製ムスタングだ。ピックアップはフロントがTLタイプのシングルコイルへ、ブリッジはフィルタートロン系がリマウントされている。PUセレクト・スイッチは排除され、代わりに3ウェイ・トグル・スイッチが増設されている。本器について、小原は“シルバートロンのリッチさを求めようと思って使ったけど、そういった音にならなかった”と語ってくれた。また、さかしたは“チープだけど、トーンの甘さがある”印象だそう。

作品データ

『ゴーストアルバム』
Tempalay

ワーナー/WPCL-13277/2021年3月24日リリース

―Track List―

01.ゲゲゲ
02.GHOST WORLD
03.シンゴ
04.ああ迷路
05.忍者ハッタリくん
06.春山淡冶にして笑うが如く
07.Odyssey
08.何億年たっても
09.EDEN
10.へどりゅーむ
11.冬山惨淡として睡るが如し
12.大東京万博

―Guitarists―

小原綾斗