Interview|マーク・レッティエリ【Part.2】スティーヴ・ルカサーも参加した最新作 Interview|マーク・レッティエリ【Part.2】スティーヴ・ルカサーも参加した最新作

Interview|マーク・レッティエリ【Part.2】
スティーヴ・ルカサーも参加した最新作

続いては最新作『Deep: The Baritone Sessions Vol.2』について話を聞いていこう。バリトン・ギターの魅力から、作品中でのギター・プレイ、ルカサーとの共演など、満遍なく話を聞いた。

インタビュー/翻訳=トミー・モリー 質問作成/文=福崎敬太 Photo by Chad Jenkins

僕のプレイの多くはベース・プレイヤーから影響されているところがある。

それでは最新作『Deep: The Bartione Sessions Vol.2』についても話を聞かせて下さい。これはバリトン・ギターをフィーチャーしたソロ作品の第2弾ですが、このシリーズの出発点は?

 もともとはスタジオでの道具の1つとしてバリトン・ギターを持っていたんだ。スナーキー・パピーではしばらく使ってこなかったけど、この楽器のサウンドを僕は知っていたから、最初はセッション仕事などでプレイしていた。で、のちにボーナス・トラックとして『Culcha Vulcha』に収録されることになった「Jefe」をバリトンで弾いてみた時に、“これはスナーキー・パピーでも十分に使える”と思ったんだ。それからバリトン・ギターでリフを書き始めたら、けっこうクールなサウンドになってね。ベース特有の太いサウンドとギターのアタック感があるグレイトなサウンドで、“これってファンクにはパーフェクトなサウンドなのじゃないのかな?”と感じたんだ。それ以降、InstagramやYouTubeで1分半くらいのデモをアップしてみたんだけど、けっこうレスポンスがあって、中にはポジティブなものばかりじゃなくて“一体何をプレイしているんだ?”と困惑しているものもあってね。

知名度の高い楽器ではないですからね(笑)。

 ギタリストなら知っているだろうけど、それ以外の人はバリトン・ギターなんて知らない人が多いから、6弦ベースをプレイしていると思っている人も多かったよ。それで反応の多さに圧倒されて、“これらのデモをしっかりと形にしてみたらどうだろうか?”と考えるようになったんだ。それが前作の『Deep: The Baritone Sessions』で、それがかなり好評だったから“じゃあVol.2を作ろう”ということになったということさ。将来的にはVol.3、4、5と作ることだってあり得るだろうね。

『Deep: The Baritone Sessions』以前にInstagramにアップされた、バリトン・ギターのデモ演奏。

このアルバムでは、「Supernova」のテーマのようにベーシストのような音運びも聴けます。バリトン・ギターのプレイで、ベースのフレーズから学ぶことはあるんですか?

 そうだね。そもそも僕のプレイの多くは、ベース・プレイヤーから影響されているところがある。それはシンプルにベースがクールで大好きだからで、ジャコ・パストリアスやピノ・パラディーノ、クリスチャン・マクブライドといった一流のベーシストたちが書いたグレイトな曲にもかなり影響を受けている。

“バリトンにしかできないプレイ”はどういうものだと思いますか?

 バリトン・ギターでなければできないプレイというものはないけど、それでなければ得られないサウンドはあるだろうね。スケールの長さとチューニングに由来するものだからさ。僕が持っているバリトン・ギターはすべてピックアップが異なっているけど、このエッセンスはやっぱりスケール長とチューニングによるものが大きいと思うんだ。通常のギターでプレイしているものを置き換えてみると、サウンドの厚みや噛みついてくるような勢いがあって、純粋にすべてがビッグなサウンドになるんだよ。ストラトキャスターをフェンダー・アンプにつないで一度設定し、同じ設定でバリトン・ギターにつなぎ変えてプレイすればすべてがラウドになる。そういった観点で言うと、バリトン・ギターはユニークな楽器で、トーンとフィーリングがすべてだろうね。

バリトンならではの音色作りのポイントはありますか?

 いや、僕は普通のギターと同じように音作りをしているよ。ベースやシンセサイザーのスペースを作るために、ミキシングの段階になって少しくらい低音を削っているかもしれないけど、アレンジをきちんとやっていればイコライジングに関してはそんなに心配する必要はないはずだ。楽器同士でスペースの奪い合いが起きる時というのは、イコライジングではなくてアレンジの問題が考えられる。だから僕は必ずしもイコライジングによるトリックをしているわけじゃなくて、どのパートもしっかりと目的を持つように考えているんだ。

ちなみにバリトン・ギターと通常のエレクトリック・ギターでは、使用するピックを持ち替えているのでしょうか?

 どちらをプレイするにしても同じものを使っているね。ジム・ダンロップのセルロイド製で、ティアドロップの1mmだ。色んな形のピックを様々な人たちが贈ってくれるんだけど、この一般的なピックで僕は十分なんだよ。“絶対にこの特定の形のピックじゃなきゃプレイできない!”となってしまったら、もしそれがない時に僕は演奏できなくなっちゃうから(笑)。そういったことは避けたいし、そもそもジム・ダンロップのピックはグレイトだからね。

結局はどれだけ練習するかによるんじゃないかな(笑)。

フィアレス・フライヤーズでのプレイもそうですが、「Tidal Tail」の冒頭のカッティングのように歯切れの良いグルーヴが魅力的です。バリトンは倍音も豊かですし、こういった歯切れの良さを出すのは非常に難しいと思うのですが、何かコツはありますか?

 僕はもともとパーカッシブなプレイヤーだから、バリトンをプレイするからといって特に大きな隔たりはなかったかな。タイトにプレイするうえでのポイントの多くは、左手のミュートによるものだと思うよ。あとはレコーディングの仕方にもコツがあるかもしれない。パートにもよるけど、僕はほとんどディレイやリバーブを使っていなくて、「Tidal Tail」のサウンドはかなりダイレクトなものだ。直接コンピューターにつないでプレイした曲だってあった。かなりドライなサウンドにして、ペダルは使ったとしてもオクターブ系のものくらいでバリトンを弾くことでビッグなサウンドになったんだ。「Pulser」はその代表的な例だね。でも結局はどれだけ練習するかによるんじゃないかな(笑)。

「Pulsar」はリフも印象的で、あなたらしいプログレッシブさを感じさせるグルーヴです。

 あのリフはもともと僕が練習している様子をちょっとだけInstagramに投稿したものが土台にあってね。練習やジャムする時に僕が何度もプレイしてきたリフなんだ。聴き返してみたら“これは曲として成立するんじゃないのか?”って思えてきて、曲を書いてみた。君が言うプログレッシブなフィーリングは、ひょっとしたらおもしろいハーモニーによるものなのかもしれないけど、曲の構造としてはシンプルなポップ・ソングだよ。A→B→ブリッジ→ギター・ソロ→バリトンとドラムのぶつかり合い→Aをちょっとアレンジしたアウトロ、といった流れで終わる。2~3個のリフを元に作っていて、ギターのオーケストレーションやキーボードのアレンジで工夫している。それに、ドラマーのスパット(ロバート・スパット・シーライト)は、A、Bのセクション、ギター・ソロでまったく別のドラム・キットを使っているんだ(笑)。それがけっこうハマっていると思うんだよね。

「Voyager One」は、ボビー・スパークス(k)がいるのもあるのかスナーキー・パピーのような雰囲気があります。メンバーとはどのようにアレンジを組み立てていくんですか?

 どの曲もデモの段階で徹底的に作り込んでいて、参加してくれるミュージシャンに送っているんだ。でも、この曲はまず僕のデモをボビーに送っていて、“このキーボードのパートは、君のサウンドと君のフィーリングで作り変えてほしいんだ。それから先はやりたい放題やってくれないかな?”とお願いしたんだよ。それで、彼から送り返されてきたものが中心になるように様々なものをアレンジし直して、ギターも一部録り直した。そして今度は、ドラムを抜いたものをナッシュビルのネイト(スミス)に送って、彼に叩いてもらった。僕のギター・パートはもともとドラム・マシンに対して録音したものだから、ネイトが作り出したビートに合わせて人間らしいフレーズにまたギターを録音し直したよ。そしたらもっとファンキーになったね。ネイトに叩かせると何でもファンキーになるんだよ(笑)。こういう形で進めていって、この曲に関しては全体的に軽く指示しただけで、プレイヤーに任せて自由にやってもらったんだ。

スティーヴ・ルカサーとの共演>