Interview|沖聡次郎&山田海斗による骨太ツイン・ギターが告げる『開幕宣言』 Interview|沖聡次郎&山田海斗による骨太ツイン・ギターが告げる『開幕宣言』

Interview|沖聡次郎&山田海斗による骨太ツイン・ギターが告げる『開幕宣言』

2013年に大阪で結成した5人組ロック・バンド、Novelbright。テクニカルかつ骨太なツイン・ギターの見事なコンビネーションが導くドラマチックな楽曲の数々はSNSで拡散され、その名を全国に轟かせた。ギター・マガジン2020年8月号ではインディーズ時代の最後のリリースとなった前作『WONDERLAND』(2020年)について2人のギタリスト=沖聡次郎(以下、聡次郎)と山田海斗(以下、海斗)に取材を行ない、バックボーンとバンドのこれからについて迫った。そんな彼らは昨年、メジャー・デビューを果たし、勢いはさらに加速。そしてこのたび、メジャー1st作となる『開幕宣言』をリリースした。トレードマークとも言えるラウドなツイン・ギターをさらに進化させつつも、遊び心に満ちた音色&洗練されたアレンジに満ちた本アルバム。そこに垣間見える彼らの“ギタリストとしての現在地”について話を聞いた。

取材・文=新見圭太 人物・ギター撮影=小原啓樹


求められるフレーズを
楽曲に教えてもらった。
(聡次郎)

さっそくですが、記念すべきメジャー・デビュー作、『開幕宣言』の制作を終えた率直な感想から教えて下さい。

海斗 難しい曲が多かったので“やっと終わった”という気持ちと、聴き返した際の“本当に良いアルバムだな”という気持ちがありますね。でも、全曲聴いた時に飽きないアルバムになったと思います。

聡次郎さんはどうですか?

聡次郎 制作中はガムシャラに作っていましたが、改めて聴くと良い作品になったと思います。あとは作曲していく中で“求められるフレーズやニュアンスを曲に教えてもらった”という感覚が凄く強いですね。曲に成長させられたと言いますか。 

求められる部分が変わったからこそ、海斗さんは難しいと感じることが増えたのでしょうか? 

海斗 そうかもしれません。今回は今まで自分がやらないタイプのプレイが多かったですね

なるほど。楽曲制作についてですが、以前、聡次郎さんは“コンポーザーとして成長していきたい”と言っていましたね。今作にも収録されているメジャー1stシングルの「Sunny drop」では、サウンド・プロデューサーに亀田誠治さんを迎えています。コンポーザーとして、そこで得られたものもたくさんあったのでは?

聡次郎 そうですね。自分たちがやりたいことやプレイの中で譲れないことは、絶対に入れたほうが良いということや、思ったことはすぐチャレンジしたほうが良いということを教えていただいて。ほかにも亀田さんがいうことが絶対ではなく、曲に選ばれたフレーズが正解なんだということをしっかり教えて下さいました。

それを経て、バンドに変化はありましたか?

聡次郎 楽曲の組み立て方は変わりましたね。以前までは自分のやりたいようにやった結果、グシャグシャになってしまうことがあったんですけど、自分のやりたいことをやりつつ、楽曲として成立するフレーズ選びができるようになりました。

海斗さんはどうでしょう?

海斗 亀田さんと曲を作る際に、自分の中にはないような意外性のある提案が多かったんですよ。それがとても新鮮で。それがきっかけで、メンバーの意見を聞くようになったと思いますね。今までは自分のやりたいアレンジを押し通したいという気持ちもあったんですけど、“1回、やってみようか”という気持ちになってきましたね。

バンドとして理想的な状態ですね。

聡次郎 そうですね。このアルバムは今までで一番ディスカッションをした作品だと思います。

具体的にはどういうことを話し合うんですか?

聡次郎 楽曲の構成ですね。曲の根底となる部分から話し合うことは今までになかったと思います。

コンポーザーとして楽曲制作を牽引するのではなく、バンド一丸で作曲をしていったという。

聡次郎 そうですね。作曲のクレジットは僕や海斗になっていますが、Novelbrightの作品だという意識がとても強いですね。

今作は前作にも増して、ギターの音色の幅が豊かで、遊び心すら感じます。1st作はバンドにとって名刺のようなものだから、音色を統一するという選択肢もあったと思うのですが、多くのテクスチャーを入れることにしたのはなぜでしょう?

聡次郎 僕は曲に合うギターを奏でたいというスタンスなんです。なので、曲に見合う音を使うことを最優先で考えた時に、音色を統一することはしたくなかったんですよね。 

海斗 音色を固めてしまえば名刺代わりになるかもしれないですけど、そういうことがやりたいわけじゃないんです。

なるほど。プレイの面で言えば、前作『WONDERLAND』でも聴けた歌裏での細やかなフレージングに加え、今作では「Sunny drop」や「青春旗」に代表されるようなツイン・ギターによるアルペジオが印象的です。これにはどういう理由があるのでしょう?

聡次郎 これも曲にとってベストな選択をした結果ですかね。最近、自分の中でアルペジオがトレンドだということもあるんですけど(笑)。

海斗 (笑)。アルペジオは弦を1本ずつ弾くので、9thやadd9などのコードがグシャッとならないんですよね。コードのキャラクターを生かしたまま、楽曲の世界観を作ることができるんです。そこに気づいたからトレンドになったという部分はありますね。

聡次郎 僕らは片方がリードで、片方がバッキングという考え方をしていないんです。例えば、バイオリンは1stバイオリンと2ndバイオリンは同じ楽器ですが、違う対位法で、異なる主旋律を弾くことがあります。でも、楽曲としてまとまっているなら良いと思うんですよね。今作は細かいフレージングとアルペジオの絡みが美しくなる曲が多かったことがアルペジオが多い理由かもしれません。

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