アメリカーナ、カントリー、ルーツ・ロックを代表するシンガー・ソング・ライター、ジェイソン・イズベル。彼のシグネチャー・テレキャスターであるJason Isbell Custom Telecasterがフェンダーから発売された。メロディアスなスライド・ギターからエモーショナルなソロまで多彩なプレイを得意とする彼に、本モデルに込めたこだわりについて話を聞いていこう。
インタビュー/翻訳=トミー・モリー 質問作成=福崎敬太 協力=フェンダー・ミュージック
※上写真でジェイソンが手にしているのは、Jason Isbell Custom Telecasterの元となったカスタムショップ製モデルです。
グッドなテレキャスターには、
ガラスを割ってしまうくらいの迫力がある。
Jason Isbell Custom Telecasterは黒いピック・ガードに白いスイッチ・ノブというルックスが印象的です。デザインに関してのこだわりは?
個人的に、黒いピックガードをサンバースト・フィニッシュと組み合わせるのが好きなんだ。60年代後半の“タキシード”・テレキャスターを彷彿させてくれるようなイメージかな。スイッチ・レバーの白はバインディングとマッチしたカラーリングにしているよ。
ブリッジ・プレートはフチのないモダンな仕様になっています。これによる弾き心地の違いについて聞かせて下さい。
サドル側面に少しだけかかるくらいの金属のフチの部分を残していて、指をそこにかけてプレイする人の為に十分対応できるようにしている。レッド・ヴォルカートみたいな昔のカントリーのテレキャスター・プレイヤーって、まさしくこの部分に指をかけていたよね。僕はスライドを頻繁にプレイするし、その際には右手でミュートを行なっているから、リア・ピックアップの辺りで弦に右手を置きやすくしている。それに、線が細くて脆いサウンドを出すためにサドルの近くでピッキングを行なうこともあるから、そういったプレイもやりやすくなっているよ。
ほかに譲れなかったポイントがあればぜひ教えて下さい。
トラスロッドをヘッド側で調整できるようにしてもらった点かな。調整のたびに毎回ネックを分解するのは大変だからね。
どのようなギタリストにこのモデルをオススメしたいですか?
このギターはブルース、ロック、カントリーと様々な音楽でプレイできるし、フロント・ピックアップならモダンなR&Bやポップスにもバッチリだ。どんな人だって、できることなら多くのギターを買わずに、1本で多彩な使い方ができるギターを求めるものだろう? テレキャスターはシンプルだけど、このデザインには70年近く愛されてきただけの良さがある。あと、テレキャスターって2つの木材がボルトで繋げられたシンプルな構造だから、作りが頑丈なのも魅力的だ。ロード・ウォーン仕様(レリック加工)にしているのにも理由があるよ。僕は11歳と15歳の時に新品のフェンダーのギターを手に入れたのだけど、当時は傷を付けるのが怖くてビクビクしながらプレイしていた。快適に抱えられるようになるまで1ヵ月はかかっていたかもしれない(笑)。だから、“もし傷つけてしまったらどうしよう!”と心配しないでにプレイしてもらいたいね。
人間の声のようにプレイすることを意識して、
あくまでもメロディをプレイするんだ。
あなたは1960年製ストラトキャスターやテレキャスターのほかにも、レス・ポールやES-335、グレッチのJetなど、様々なギターを弾いています。使い分けはどのようにしていますか?
スタジオでは様々なギターを使えるようにしていて、どの曲も同じようなサウンドにならないように気を付けている。単にその時に気が赴いたサウンドのギターを弾いているだけってこともあるけどね。去年リリースした『Reunions』ではストラトキャスターを多用したけど、それは作曲の段階でたくさん使っていてしっくりきたからなんだ。ライブだとテレキャスターを好んで使うことが多いね。チューニングが安定するし、アンサンブルの中でも抜けてくる。それに、なんといってもロックンロールなギターだよね。バンドがどんなにラウドでも、ブリッジ側のピックアップを使えば十分自分のサウンドを届けることができるよ。
フェンダーのYouTube企画“Artist Check-In”では、本器のもととなったカスタム・テレキャスターでスライド・ギターを披露していました。動画では中指にスライド・バーをつけて弾いていますが、プレイのコツなどがあればぜひ教えて下さい。
僕はスライドのほとんどをスタンダード・チューニングでプレイしている。僕の場合はそうすることでよりメロディックにプレイできるからね。人間の声のように弾くことを意識して、あくまでもメロディをプレイするのがポイントだ。特定のポジションでプレイすることを忘れて、自分でフレーズを歌ってみるといい。歌ってみると指板上のボックスを意識するようなことがなくなるだろうし、パターンみたいなリックから離れていくだろう。そしてうまくミュートすることがとても重要だね。僕が中指にバーをはめているのは、ボニー・レイットがそうやってプレイしているのを子供の時に観たからで、このスタイルだとスライド・バーの両側でミュートができるし、スライドと押弦を同時にできるんだ。
テレキャスターに限らずサウンドメイクにおいて気をつけていることを教えて下さい。
耳に痛くない形で抜けてくるサウンドを得るために、アンプのEQを調整する時もいつもミドルを大切にしている。基本的にピックアップが2つ以上あるギターの場合、まずはフロント・ピックアップで“これだ!”と思うサウンドを作り、リア・ピックアップを使う際はギター本体のノブを使ってトレブルを調整していくんだ。テレキャスターに限らずレス・ポールやES-335でもこうやって音を作っていくね。
最後の質問です。COVID-19で今のような状況になる直前(2020年1月)にあなたは来日してくれましたね。またあなたのステージを生で観たいと願っている日本のギタリストたちにメッセージをお願いします。
日本は僕らが足を運んだ最後の海外の国なんだ。それからずっとシャットダウンになってしまったから、しばらくは日本に戻れなさそうで悲しいよ。もともとの計画では2020年の間にもう一度日本に行く予定だったんだ。本当に素晴らしい時間だったから、もっと頻繁に行けるようにしていこうと計画していてね。日本のオーディエンスはかなり集中して聴いてくれていた。自分が書いた歌詞を口ずさんでもらえたり、指先の動きに注目してもらえるのは嬉しいものだよね。次に日本に行く日のことを心から楽しみにしているよ!
Fender
Jason Isbell Custom Telecaster
【スペック】
Series: Artist
Body Material: Alder
Body Finish: Road Worn® Nitrocellulose Lacquer
Neck: Maple, Mid ‘60s “C”
Neck Finish: Road Worn® Nitrocellulose Lacquer
Fingerboard: Rosewood, 7.25” (184.1mm)
Frets: 21, Narrow Tall
Position Inlays: White Dot (Rosewood)
Nut (Material/Width): Synthetic Bone, 1.650” (42mm)
Tuning Machines: Vintage-Style
Scale Length: 25.5” (648mm)
Bridge: 3-Saddle, Strings-Through-Body Tele® with Compensated Brass Saddles, 6 screw mounting with removable modern “Ashtray” Bridge Cover
Pickguard: 3-Ply Black/White/Black
Pickups: Specially Voiced Jason Isbell Telecaster® Single-Coil (Bridge), (Middle), Specially Voiced Jason Isbell Telecaster® Single-Coil (Neck)
Pickup Switching: 3-Position Blade: Position 1. Bridge Pickup, Position 2. Bridge and Neck Pickups, Position 3. Neck Pickup
Controls: Master Volume, Master Tone
Control Knobs: Knurled Flat-Top
Hardware Finish: Nickel/Chrome
Strings: Fender® USA 250R Nickel Plated Steel (.010-.046 Gauges), PN 0730250406
Case/Gig Bag: Deluxe Gig Bag
【価格】
214,500円(税込)
【問い合わせ】
フェンダーミュージック TEL:0120-1946-60 http://fender.co.jp