Interview|マーク・リーボウ鬼才の音楽脳を知る。 Interview|マーク・リーボウ鬼才の音楽脳を知る。

Interview|マーク・リーボウ
鬼才の音楽脳を知る。

それではマーク・リーボウのセラミック・ドッグ最新作『HOPE』について話を聞いていこう! 新型コロナ・ウィルスへの対策も万全に、久しぶりの制作を楽しんだという本作。その制作背景や、セラミック・ドッグならではのアプローチなどの話から、ギタリストとしての今のモードを探っていこう。

インタビュー/翻訳=トミー・モリー 質問作成/文=福崎敬太 Photo by Joseph Branston/Guitarist Magazine/Future via Getty Images

僕たちが楽しんでプレイした2週間の音が収まっている。

今作『HOPE』もセラミック・ドッグらしい鋭いギター・サウンドが聴けます。サウンドやプレイの方向性としては、今作はどういったイメージや感情がもとになっているのでしょうか? 

 たくさんのエモーションがあったよ。でも、制作に際して青写真として思い描いていたものはなかったと思うな。このアルバムを作る前の話からすると、僕らは4ヵ月もの間一緒にプレイすることなく過ごしてきた。というのもCOVID-19ですべてがロックダウン状態になったし、特に僕らのメンバーの1人がもともと肺に病を抱えていたから、けっこうシリアスな状況にいたんだ。もし彼がコロナ・ウィルスに罹患してしまったら大ごとになるのは明確だったからね。で、去年の5月終わりから6月にかけて、安全にレコーディングを行なう方法がなんとなくわかってきた。ベーシストのシャザード・イズマイリーはレコーディング・スタジオを持っていて、そこに別々に入ったりして互いの姿をほぼ見ることもなく作業をしていったんだ。一緒にスタジオにいても、隔離された別々の部屋でプレイしたし、コミュニケーションもブース間をマイクをとおして話していた。屋内に入る時は手を必ず洗うようにしたし、レコーディング中も気を使うところがけっこうあったね。

万全の感染対策ですね。

 それまで何ヵ月もプレイしていなかったけど、急に問題なくレコーディングができる状況を見つけたんだ。そうしたら、それもけっこう楽しいっていうことに気づいたし、僕らは色々な試みもして2週間の録音期間を設けることができた。とはいえスタジオに入った時にプランを持っていたわけじゃなかったんだ。このアルバムからは、とにかく僕らが再びプレイできることを楽しんでいる様子が感じ取れると思う。つまり、何かを意識したわけでもなくて、僕たちが楽しんでプレイした2週間の音がアルバムに収まっているってことさ。

ダビングする時が僕が最もクリエイティブでいられる時でもある。

あなたはこれまでに様々なプロジェクトで演奏してきていますが、ほかの現場とセラミック・ドッグでアレンジの流れなどに違いはありますか?

 それはあるね。特にトリオでのレコーディングともなると、そういった点に関してはこだわりがある。僕は個人的にはもう1つほかの楽器があるカルテットのバンドでプレイするのが最も快適で、それもあるのかセラミック・ドッグでも大抵ダビングを行なっているんだ。だからのちにライブを行なうとなると、どうやってそれを再現するかその手段を探ることにはなるのだけどね(笑)。基本的には、ベーシックなものをレコーディングして、それに対して僕がダビングするという流れになっている。レコーディングにおける僕のお気に入りの作業はダビングで、これって僕のセッション・プレイヤーとしての感覚によるものなんだ。ベーシック・トラックを録る時はミスらないように注意しながらプレイし、心の中ではダビングのパートをプレイすることを楽しみにしている(笑)。ダビングする時って僕が最もクリエイティブでいられる時でもあるんだ。ギタリストやスタジオ・ミュージシャンの多くは、もはや譜面を読んで作業しているわけではないんだよ。30年~50年代みたいにアレンジャーがいるような時代じゃないからね。僕らは自分たちの頭の中で、曲を彩ってくれる新たなパートを聴いているんだ。

「B-Flat Ontology」のアルペジオとワウのソロ、「The Activist」のオクターブ奏法とワウのオブリガートなどが聴けます。ここはあなたの“ダビング好き”が出ているのかなと。トリオのセラミック・ドッグの中で、2本以上のギター・アンサンブルを考える時はどのような流れなのでしょうか?

 レコーディングをしている最中に思い浮かぶことがほとんどだね。もしトリオのままのプレイでグッドなサウンドなら、トリオのままにさせている。しかし多くの場合、やっぱり僕はダビングを楽しんでしまうからね。「The Activist」はそもそも完璧なインプロヴィゼーションとして始まったところがあって、スタジオでインプロヴァイズしながら全体を作っていったんだ。

逆に「Wear Your Love Like Heaven」は1本で弾ききります。このようなスペースを生かすような楽曲でのあなたのプレイは、和音や単音の使い分け、休符の効果的な使い方など非常に勉強になるのですが、純粋なトリオでリード・ギターを弾く際のポイントを教えてもらえますか?

 この曲のアレンジはスタジオに入る前に特にこだわったよ。代理コードをたくさん使っているからね。そもそもこの曲って僕が書いたものじゃなくて、ドノヴァンによるかなり昔の曲なんだ。ただそれを僕がかなり極端に作り変えちゃっていて、オリジナルとはかなりかけ離れたものになっている。コードの使い方についてはかなり注意深くアプローチしているね。君が言っていることは正しくて、スペースの使い方がとても大事なんだ。この曲では最初からスペースを作りたいと考えていて、ダビングをせずにかなりミニマルな状態にしておきたいと思った。それ以外のこととなると“コードをしっかり押さえてインプロヴァイズした”という感じだね。