Interview|Miyako(DEZERT)【後編】新作『RAINBOW』の使用機材について Interview|Miyako(DEZERT)【後編】新作『RAINBOW』の使用機材について

Interview|Miyako(DEZERT)【後編】
新作『RAINBOW』の使用機材について

DEZERTのギタリスト、Miyakoのインタビュー後編では、最新作『RAINBOW』のレコーディングで使用した機材について聞いてみた。多彩なサウンドをあえて限られた機材によって生み出そうと工夫を凝らすMiyako。そのこだわりの真意とは?

取材/文=村上隆行 写真=西槇太一

ギターを色々と試した時期もあったけど、結局はライブで自分の首を絞めるんですよ。

ハード・チューンの「カメレオン」と「脳みそが腐る」のヘヴィなサウンドは7弦でしょうか?

Miyako 7弦です。楽曲的に7弦だろうということで、自然な選択でしたね。

7弦ならではのファットなドライブ・トーンで、キレを出していますね。

Miyako 特に「カメレオン」のリフはキレが大事というところがあったので、音作りもそうですけど、ピッキングのニュアンスがなかなか難しかったです。やっぱり音域が下がるに連れて、音程感も含めて見えづらくなっていくんですよね。ローBのファットな低音を鳴らしつつ歯切れよさを出すのは苦労しました。ピックを弦に対してフラットにあてたほうがクリアな音になるけど、弦がピックに引っ張られてピッチが悪くなるんですよ。かといって斜めにあて過ぎるとローが弱くなってしまう。だから、ピックを弦にあてる角度とか、ピッキングの強さとかをいろいろ探りながら弾いていって、ちょうどいいバランスのところを見つけて、ピンポイントの弾き方で録りました。

波形でカットしたりするのではなく、ピッキングで対応するのはさすがです。それにしても『RAINBOW』はギタリストが1人とは思えないような幅広さが発揮されていて、Miyakoさんの引出しの多さをあらためて感じました。

Miyako 色んな楽曲をやるのは、やっぱり大変ですよね。今回は7弦を使った「カメレオン」、「脳みそが腐る」、6弦で弾いた「殺されちゃう」や、アコギを使った「あなたのそばにいる」もある構成になっている。それぞれの楽曲にフィットするアプローチだったり、出したい音だったりが全然違っていて、それをちゃんと形にすることの大切さや難しさを今回のアルバムであらためて気づかされたというのはありますね。

細やかなプロダクトが光る、上質なギターを全編で味わえます。続いて、『RAINBOW』で使用した機材について聞かせて下さい。

Miyako 前作の『black hole』(2019年11月)を作った時はヘッドをキャビネット・シミュレーターで鳴らすシステムで、曲によってアンプもギターもけっこう変えたんです。でも、ライブでは何台もアンプを鳴らせるわけじゃなくて、限られた機材の中で対応することになるんですよね。つまり、前作の音作りはライブで再現しづらいところがあったんです。なので今回は、楽曲達をライブで演奏した時に一番カッコよくなるアルバムを作りたいということで、ギターは何本か使い分けましたけど、バッキングのアンプは自分が使っているマーシャルのスタック・サウンドをメインにしました。

本当ですか? マーシャルだけとは思えない、多彩な音を出されていますよね。

Miyako 俺が使っているのはマーシャルのJVMなんですよ。JVMは歴代マーシャルの音が全部出せるということがコンセプトになっていて、いろんな音が出せるんですよね。うちのバンドは楽曲のバリエーションが幅広いので、対応力の高さでJVMをチョイスしたんです。去年の頭くらいに買ったのかな。“JVMは邪道だ”みたいに言う人もいるけど、俺はそうは思わない。凄く良いアンプだと思っています。

マーシャルは古いものほどいい、シンプルな機種ほどいいと言われがちですが、JVMやJCM-2000なども名器ですよね。JVMということは、基本的に歪みエフェクターは使わずにアンプのナチュラルな歪みを活かしたのでしょうか?

Miyako そうです。歪みを補足する感じでオーバードライブを踏んだパートとかもあるけど、基本的にマーシャルの歪みです。上物はさっき話したように、マッチレスを使ったりした曲もありましたけどね。

アンプ/エフェクター周りが想像以上にシンプルで驚きです。ギターは、どういうものを使われたのでしょう?

Miyako それぞれの曲に合わせて細かく使い分けましたけど、7弦の「カメレオン」と「脳みそが腐る」は同じギターを使いました。今までだったらその2曲も違うギターで録ったと思うけど、ライブで演奏することを想定して音色を近づけることにしたんです。ライブだと7弦はOrmsby Guitarsだけど、レコーディングはテックの方が持ってきてくれたドラゴンフライを使いました。Ormsbyとフジゲンの6弦のロング・スケール、ドラゴンフライ、ビンテージのレス・ポールを試した中で、今回の2曲に関してはドラゴンフライが一番フィットしたんです。ドラゴンフライは今まで弾いたことがなかったけど、すごく良いですね。テックさんはPUもすぐに替えられるようにしてくれていて、使いやすかったし。

初めて手にしたドラゴンフライで、先ほど話したようなシビアなピッキングをされたというのはさすがです。6弦はどうでしょうか?

Miyako わりとハイゲインなクランチは基本的にレス・ポール系です。自分の持っている青いレス・ポールとビンテージのレス・ポールとか。青いレス・ポールは2015年くらいのモデルで、ノーマルのまま使っています。あのギターはもう楽器屋で一目惚れして、すぐに買いました(笑)。ビンテージは正しい年式はわからないけど’60年代のレス・ポールで、ハムバッカーがついているタイプです。

レス・ポールをメインにしつつ「デザートの楽しいマーチ」のシャープなカッティングなどでフェンダーを使うというパターンですね。

Miyako いえ、「デザートの楽しいマーチ」はビンテージのレス・ポールです。

えっ、そうなんですか? レス・ポールで、あんなに立ち上がりが速くて、張りのある音を鳴らしたと?

Miyako はい。シングルコイルのギターで録ったほうがカッティングがきれいに出るし、一番いい方法ではあったんですけど、ライブでそこだけシングルコイルで弾いて、イントロに入ったらレス・ポールというのは無理じゃないですか。やろうと思えばできるのかもしれないけど、そういうのは俺の中では違うんですよ。そうなった時にレス・ポールで一貫して弾こうと思って、レス・ポールでシングルコイルっぽい質感だったり、音の速さだったりが感じられるように弾きました。

自身のトレードマークになっている機種にこだわっていた70年代のギタリストを彷彿させます。

Miyako だとしたら嬉しいです(笑)。さっき話したように、いろいろ試していた時期もあったけど、それは結局ライブになった時に自分の首を絞めるというのがあって。それは気持ちの面にも影響するじゃないですか。たとえば、「デザートの楽しいマーチ」のカッティングを違うギターで弾いていたら、ライブの時に“録音ではシングルで録ったからな”と思ってしまう。それが、ちょっと嫌だったんですよ。ライブでうまく弾けなかった時に、レコーディングもレス・ポールで録っているんだから、うまく弾けないのは自分が原因だよなと現実を直視できますよね。ギターのせいにはできないようにしたかったんです。

男気がありますね。ということは、今回シングルコイルは使っていない?

Miyako シングルコイルは「あなたのそばにいる」で弾いたくらいです。ただ、シングルコイルといってもジャズマスターなんですよ。ジャズマスターはシングルとハムの中間という感じの音ですよね。だから、いわゆる純粋なシングル・トーンとはちょっと違った音になっています。

レス・ポールとマーシャルにこだわって、それぞれの汎用性の高さを引き出したといえますね。さて、『RAINBOW』は良質な楽曲とギターが詰め込まれた必聴といえる一作に仕上がりました。これからのツアーも楽しみですね。

Miyako とにかく『RAINBOW』の楽曲はライブでやりやすいんですよ。今までは新しいアルバムとかを出してツアーに出ると、最初はちょっとやりにくいということが結構多かったんですよね。でも、今回はメンバー全員でライブを意識した曲作りだったり、レコーディングだったりをしただけあって、ライブで初めて演奏したのに初めてじゃないような感覚がある。今まではゼロの状態からライブを重ねることで楽曲が成長していったものが、今回は最初の段階でゼロよりも上のところにいるんですよ。だから、このツアーを通して『RAINBOW』の楽曲達はどんなふうに進化していくんだろうと思う。それが本当に楽しみだし、ライブに来てくれる人も楽しみにしていてほしいですね。ツアーが進むに連れて曲がどんどん成長していくことは間違いないので、期待していてください。

*今回のインタビューでMiyakoが語った機材の一部は、次の記事でご覧いただけます。

Axis’ Gear|千秋 & Miyako(DEZERT)
ライブ映像作品『DEZERT SPECIAL LIVE 2020 “TheToday”』使用機材

◎ライブ情報
【DEZERT LIVE TOUR 2021 / RAINBOW -カメレオンは空を見上げて笑えるか?-】
8月21日(土) 大阪・梅田CLUB QUATTRO
8月22日(日) 岡山・CRAZYMAMA KINGDOM
8月28日(土) 静岡・浜松窓枠 ※SOLD OUT
8月29日(日) 愛知:名古屋ボトムライン
チケットはこちら https://eplus.jp/dezert/21/

作品データ

『RAINBOW』
DEZERT

DANGER CRUE RECORDS/DCCL-241/2021年7月21日リリース

―Track List―

01. デザートの楽しいマーチ
02. Your Song
03. カメレオン
04. あなたのそばにいる
05. 殺されちゃう
06. ミザリィレインボウ
07. 脳みそが腐る

―Guitarist―

Miyako

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