前作から約2年ぶりとなる最新作アルバム『ACTION!』を8月25日にリリースしたKEYTALK。今作はアップ・テンポな楽曲群の中でスケールを自由自在に動き回るギター・プレイがありながらも、初期衝動的なアプローチの数々に圧倒される。今回は小野武正(g)に登場してもらい、作品についてはもちろん、小野のギタリストとしての姿勢や今後の展望についてじっくりと話を聞いた。
取材・文=髙山廣記 機材写真=星野俊 アーティスト写真=後藤壮太郎
長年の信頼関係があったから
やることは変わらなかった。
『ACTION!』は前作から約2年ぶりのリリースで、コロナ禍でのアルバム制作となりましたが、どのように進めていったんですか?
『ACTION!』は12曲入りなんですけど、そのうちの3曲は2020年にデジタル配信リリースしたんです。新曲の9曲は、2021年からレコーディングを開始して7月の頭にはマスタリングが完了したので、半年ぐらいかけてじっくり作っていった感じですね。
それまでにリリースの話はあったんですか?
アルバム自体は一度“2020年にリリースしよう”って話だったんですけど、コロナの影響で一旦それは見送ることになったんです。去年は配信ライブをやったり、あとは今年に入ってちょっとずつお客さんの前でライブをやれるようになってきて、アルバムを本腰で作ろうっていう流れができたんですよね。
どのようにレコーディングを進めていったんですか?
今回はスタジオの人数制限とかもあったりで、リズム隊が先に録ってからギターを録ってみたいな感じで、バラバラに進めていきました。
そういう状況ですと、レコーディングは大変だったのでは?
いや、そんなことはないですね。もともとデータのやりとりも多かったので、そこまで大差はなかったです。今までだと4人で“せーの”で録ることが多かったんですけど、ずっとライブもレコーディングもやってきてる長年の信頼関係があるので、別にバラバラに録ったとしてもやることは変わらなかったですね。
今回はセルフ・プロデュースの楽曲が多いですが、その理由は?
『ACTION!』の制作期間はいろんな活動が止まってしまって、一度キャリアを振り返るタイミングだったんです。そこで、“自分たちでディスカッションして作り上げるというのもいいんじゃないか”と話し合って、セルフ・プロデュースで進めていきました。KEYTALKは、もともと曲を作った人がイニシアチブをとってレコーディングを進めていくんですけど、今まで以上にフレーズのやりとりを密に行なったりして、現場でのディスカッションは多かったですね。
曲に対してどういうプレイをするのか
確固たる自分が見え隠れしたアルバム。
今作はよりプレイの自由度が増してるというか、衝動的な部分を感じたんですが、ギター・プレイにおいて意識した部分は?
まさに衝動的なところとか、自分が新鮮でいられるようなプレイをしたいっていう気持ちが今回すごく強くあったんです。僕の根底としてはその曲に呼ばれたフレーズを弾いてくスタンスがあるんですが、今回はより如実に出たという感じですね。あと、2020年はライブがほとんどできないというタイミングだったので、自分のプレイを見つめ直したんです。バンドの10年以上の活動を振り返って、スケールとかコードに対してのボイシングだったりっていうのを改めて精査して、瞬発力を高める練習だったりとか、自分の好きなフレーズをちゃんと再確認して。で、それを怖がることなく提案して突き進むっていうのが今回強く出てるのかなと思いますね。
なるほど。それが予想外なフレーズが多い理由なんですね。
やっぱり瞬発力って音楽にとって大事だと思っていて。その瞬間に出てきたものって、やっぱ正解の1個だと思うんですよ。「宴はヨイヨイ恋しぐれ」のAメロとかは、そういうのが詰まってますね。あと、「もういっちょ」という曲はギターを最初から最後まで通しで録ったんです。今回のレコーディングではみんなと同時には演奏していないんですけど、そうやってライブ感を出したりとか、曲ごとに色んなポイントがありますね。ある程度できあがっている曲に対してどういうプレイをするのか、確固たる自分が見え隠れしているアルバムだと思います。
「サンライズ」のようにメロディに絡み合うプレイも魅力的ですが、どのようにしてフレーズを構築していったのですか?
基本的には、まずはその曲のリズムとメロディが頭に入っているのが大事で。今、何度メジャーいるのかとか、どこに自分がいて、メロディはどのへんにいるのかを把握しながら動くと、気持ちよく裏メロが絡んでくる印象です。僕は基本的にコードを全部度数で見ているんで、度数をめちゃくちゃ気にしてプレイしてます。
度数を意識してプレイするためのコツはありますか?
めちゃくちゃ鍛錬が必要で、慣れの部分もあるかと思います。常に頭で考えながら、スケールとコード、ボイシングのコンビネーションを意識する修行ですね。自分の中で“こういったら面白い”みたいなことを研究しておくんです。それをやっておくと、レコーディングやライブでアドリブを弾いたとしても無の境地でプレイできるんですよ。
小野さんは具体的にどんな練習を?
ダイアトニック・スケールを1フレットから最終フレットまで弾いて、それをスケールの縦と横で連結させていく練習をします。あとはコードに対して今どういう景色が見えてるかということも重要ですね。何か音を弾いた時に、そこから何が弾けるかを想像します。そして歌がある中で、自分は何を弾いたらどうなるかっていうことを考えるのは、ボイシング面で効果的な練習ですよ。
なるほど。
あとは、例えばコード進行があったとして、そのコード・フォームにフレットの制限をつけるんです。その中でソロを弾くと、行きたい音に行こうとする手癖とかが制限されて、自分の中で新たなフレーズに達することがあるんですよ。