編集部注目の新人アーティストを紹介する本コーナー。今月は4人組ロック・バンドNEEをピックアップした。
彼らの特徴といえば、プログレッシブ・ロックからブラック・ミュージックまで、複数のジャンルを融合させた予測不可能なサウンドだろう。
メジャー・デビュー作となる『NEE』は、その持ち味を遺憾なく発揮。くぅ(vo,g)の歌う真っすぐなメロディの背後で、終始アグレッシブに鳴り続けるギター・プレイの数々が特に聴きもので、その担い手であるギタリストの夕日は最も気になる存在だ。
では本人に登場願い、まずはギターを手にしたきっかけから教えてもらおう!
取材/文:髙山廣記 ライブ写真:yoshio nakaiso

レッチリとの出会いが
景色を広げてくれた。
父親がミュージシャンで、音楽は常に身近な存在だったんです。幼稚園の頃、初めて好きになったアーティストがレッド・ホット・チリ・ペッパーズやゴリラズでしたね。
で、小学生になってからドラムを始めたんですよ。その頃はマイケル・ジャクソンやパーラメントのようなアーティストにハマっていたんですが、途中でマキシマム ザ ホルモンと出会いました。それからどんどん「バンドをやってみたい」って気持ちが高まっていって、ギターを始めたんです。
中学生の頃はスリップノットとかチルドレン・オブ・ボドムのような、メタル系の激しい音楽をバンドで弾いてましたね。なので、ギターで初めて練習した曲はドロップCチューニングだったんですよ(笑)。
その頃はとにかく「歪んでこそギターだ」と思っていました。それである時、並行してずっと好きだったレッチリで何か歪んでいる曲はないかな、と探し始めたんです。で、自分の記憶で歪んでいると思い込んでいた「Can’t Stop」を流したら、全然歪んでなかったのにカッコ良かったんですよ。それが衝撃的で、そこからレギュラー・チューニングに戻しました(笑)。
以降は、レッチリとメタルを並行して練習していたような感じですね。今でこそ弾くことは少なくなりましたが、自分の引き出しの中にはいまだにあると思います。
幼少期から色んな種類の音楽を嗜好してきたのがわかったところで、次に影響を受けたギタリストについて聞いてみる。
一番影響を受けているのは、レッチリのジョン・フルシアンテですね。最もコピーしたギタリストです。
彼の魅力って、ギター・ソロのエモーショナルな感じとか、プレイ面はもちろんですけど、やっぱり「ギタリストとしての生き様」だと思うんです。この人からギターや音楽を奪ったらなんにも残らないんだなと思わせてしまう。音楽を純粋に追求している姿勢を尊敬していて、今でも僕のヒーローとして存在しています。

自分のルーツにないものを
引き出しに加えていった。
デビュー作『NEE』では、「不革命前夜」などを始め、カッティング〜アルペジオなどのバッキング、単音のテーマ・メロディや間奏のソロといったリードのどちらにおいても緻密に計算されたプレイが多い。どれもキャッチーさにあふれているが、どのようにしてフレーズを作り上げているのだろう?
実は、アドリブも多いんですよ。くぅ(vo,g)が持ってくるデモどおりに弾くこともあるんですが、「因果オウホウ」とかはジャム・セッションでできましたし。「不革命前夜」でも一部アドリブで弾いているところもあったりして。
ただ、プレイする上で僕の中にはルールがあるんです。僕の好きなメタルのアプローチに多いんですが、AメロとBメロは大胆にプレイをして音数を多くするんです。そして、サビではボーカルを引き立たせるために落ち着いて引いたプレイをするんですよ。そうすることで曲のエモーショナルさが増していくんです。
本作では色とりどりのギター・サウンドも特徴的だ。「因果オウホウ」の妖しげモジュレーションの音や、「こたる」での唸りまくるワウ・ギター・ソロなど、音作りの上手さも光っている。そのこだわりについても教えてもらおう。
今作はレコーディングもライブも同じサウンドが出せるように、Line 6のHELIXを使用してライン録りしたものが多いんです。曲ごとにある程度コンセプトを決めて使うように僕は気をつけてますね。
エフェクトを使いすぎたり、セクションごとに音を変えてしまうと、最終的にギターの音がどこにあるのかわかんなくなっちゃうんですよ。だから、メインの歪みなどは変えずに、ピックアップの違いとかピッキングのニュアンスでその差を出すようにしていますね。
今作で言うと、「因果オウホウ」はジャズやボサ・ノヴァのアプローチを盛り込んでいるので、ハムバッカーが載っていて厚みが出るミュージックマンのギターを使っていて、バラード曲の「こたる」はジョン・フルシアンテのようなエモーショナルなプレイをしたかったので、シングルコイルのNash GuitarsのS63を使ってその違いを出しました。
また、新作における夕日のプレイ面で気になるのは、「夜中の風船」や「本当は泣きそうです」などで披露したブラック・ミュージック的なアプローチ。いったいその引き出しはどこからきたのだろう?
今作のブラック・ミュージックのようなアプローチは、覚えたことをすぐ表現したい性格が出ていますね(笑)。
実は、こういったプレイはコロナ禍になった昨年から練習し始めていて、今まで自分のルーツになかったジャンルを勉強して、自分の引き出しに加えていったんです。特にネオソウルは、メロディの難解さとグルーヴを兼ね備えているところが勉強になりましたね。
その影響から、今までペンタトニック・スケール一発で弾いていたものをメロディのように弾くようになったりして。今回のアルバムはコロナがなければ違った印象だったかもしれませんね。
新人とは思えないバラエティ豊かなプレイの数々を披露する夕日だが、今後のギタリストとしての展望とは?
どんな大物とセッションしても、全然ひるまないスタイルでいたいですしフレーズのセンスを磨いていきたいです。色々なところから影響を受けていって、自分なりのギタリストとしての答えを見つけていきたいですね。
ギターってすごく可能性を秘めた楽器で、ギターこそが時代を創ってきたと思っているんですよ。ギター・ヒーローが生まれた時代もあれば、今みたいにサウンド・クリエイトの道具として使うシーンもあったりして。それで僕は、そういう垣根を超えていけるようなギタリストになりたいんです。
最後に、バンドとしての目標も聞いてみた。
僕が理想としているバンドの形って、ビートルズや、レッド・ツェッペリンのように全員がスター性を持っているバンドなんですよ。目標としては、NEEの楽曲が一人歩きするのではなくて、各プレイヤーの個性がちゃんと注目されるようなバンドになっていきたいです。