Interview|小鹿雄一朗(Half time Old)結成10周年で開花した“歌を聴かせる”オブリ Interview|小鹿雄一朗(Half time Old)結成10周年で開花した“歌を聴かせる”オブリ

Interview|小鹿雄一朗(Half time Old)
結成10周年で開花した“歌を聴かせる”オブリ

Half time Oldが最新作『ステレオアーモンド』をリリース。結成10周年を飾る1枚であり、お茶の間から注目を集めるきっかけとなったauのCM曲「みんな自由だ」も収録した、記念すべき作品に仕上がった。ギタリストの小鹿雄一朗は今回がギタマガ初登場ということで、音楽的な来歴から最新作でのプレイについてまで、たっぷりと語ってもらった。

インタビュー/文=福崎敬太

“ギターがやりたい”というよりは“バンドがやりたい”っていう衝動。

ギター・マガジンのインタビューは初登場ということで、まずはギタリストとしての来歴から聞かせて下さい。ギターを始めたのはいつ頃なんですか?

 ギターを買ったのが高校1年生の夏くらいなんですけど、中学生くらいまではギターを始めたい欲なんてまったくなかったんです。J-POPをたまに聴くくらいで、音楽にのめり込んでいたわけでもなくて。で、高校に入る直前くらいに、中学の友達にバンドの音楽を紹介されて、CDを買って聴くようになったんです。それでライブも観に行くようになって。その流れで“バンドをやりたいな”って思うようになり、“バンドといえばギターかな”っていうことで買ったんです。だから最初は、“ギターがやりたい”というよりは“バンドがやりたい”っていう衝動からでしたね。

ハマったバンドというのは?

 LUNKHEADです。そこからASIAN KUNG-FU GENERATIONやELLEGARDENあたりも聴くようになって。最初は日本の音楽ばかり聴いていました。で、高校では“軽音部良いなぁ”って思いながらも、僕は剣道部に入っていて。なので、今のバンドのボーカル(鬼頭大晴)と、学校外でスタジオに入ってコピー・バンドをやっていたんです。

ちなみに最初に使ったギターは何でしたか?

 最初はスクワイヤーのジャグマスターでしたね。本当はLUNKHEADの小高(芳太朗/vo,g)さんが使っていたジャズマスターが欲しかったんですけど、高くて。学校はバイトも禁止で、最初は親に頼んで買ってもらったので、そんな高いのは買えないし。そこで、近い感じのジャグマスターにしたんです。

小鹿さんの歌裏でメロディを弾くようなプレイスタイルって、今名前が上がったアーティストたちとは少し違う気がするんですが、どういう風にできあがっていったんですか?

 そうですね……僕自身、何に影響されたかがわかっていないところがあって。コピー・バンドはやったんですけど、実はそこまでたくさんコピーしたわけではなくて、すぐにオリジナルを始めたんですよ。だから最初のほうはどうやってフレーズを作っていくか悩んでいて、長年試行錯誤してスタイルが固まっていった感じですね。もちろんフレーズ単体では、その当時に聴いていた音楽から影響を受けたりはあると思うんですけど、プレイスタイルのルーツとしてはわからない、というのが正直なところです。

“歌を聴かせよう”というコンセプトはあった。

では最新作『ステレオアーモンド』について聞かせて下さい。これまでの作品をとおして聴いてみると、徐々に歌裏のオブリがメロディじゃなくリズムで遊ぶようになってきたのかなと感じました。より歌を聴かせるようになってきたというか。

 そうですね、それは意識しています。

結成10周年を迎えましたが、この10年でギター・アレンジはどう変わってきましたか?

 やっていくうちに、“いや、弾きすぎているな”っていうのは自分の中でもあって。それが良いか悪いかは別ですけど、一番弾きすぎたなって思うのが、2018年の『真夜中の失踪に聡明と音楽』っていうアルバム。それはそれでカッコ良いと思っていて、ギター・アルバムとして自分でも好きではあるんですけど、徐々に“ちょっとギターを引いて歌をたたせるように意識したほうが良いな”って思うようになりました。で、今作が一番それができたと思っています。“歌を聴かせよう”っていうのは自分の中のコンセプトとしてもあって、それがうまくできたアルバムですね。

今作のギター・プレイで意識したことはほかにありますか?

 “歌を聴かせる”っていうことを意識したうえで、その中でもやっぱり“ギターで見せ場が欲しいな”とは考えていました。それはギター・ソロだったり、イントロや間奏のフレーズだったりしますけど、目立つところは目立つように意識しましたね。楽曲として、ギターがカッコ良いと思えるところがないと、個人的には寂しく感じてしまうんですよ。で、今回はギターをあまり弾いていない曲もあって……。

そうですかね(笑)?

 今までに比べるとですよ(笑)。これまでよりほかの楽器で補っている部分が多いんですけど、ギター・ソロだったり目立つ箇所をしっかり作れたと思いますね。

今回はアレンジャーとしてNaoki Itai(ex.EdgePlayer/g)と楠後譲さんが入っていますが、ギター・アレンジについて話をしたりすることはありますか?

 歌に寄り添うようなアレンジにするために、ギターの差し引きみたいなところは相談しましたね。僕自身そういう点については自分でも甘いと感じるところがあって。やっぱり目立とうとしていた部分があったので、歌を引き立たせるためのアレンジについては、勉強になることや発見はたくさんありました。

今作の楽曲で勉強になった部分は?

 「スターチス」はアコギとエレキの絡みをItaiさんにアレンジしてもらったんですが、凄く綺麗で“こういうアレンジの仕方があるんだ”ってめちゃくちゃ勉強になりましたね。難しいことはやっていなくて、シンプルなアルペジオではあるんですが、そのハーモニーが凄く美しくて。「スターチス」は全編ギターが気に入っていますね。静かに綺麗に聴かせるところがあれば、エモーショナルに聴かせるところもあって、楽曲の中で感情が変わるというか。演奏していても気持ちが入る。

個人的に「スターチス」は、サウンドの方向性も少しほかと違う印象があります。艶っぽいエモーショナルな感じというか。

 たしかにそうですね。

あれはJ.W.ブラックのSTタイプなんですか?

 いや、今回はほとんどテックさんに持ってきていただいたギターで(笑)。あれはテレキャスターとストラトキャスターですね。で、楽曲の中でもイナたい雰囲気が出ているのがソロだと思うんですが、そこはES-330で弾いています。