Interview|陶山良太(PLOT SCRAPS)美麗なメロディを内包した新世代のオルタナ・ロック Interview|陶山良太(PLOT SCRAPS)美麗なメロディを内包した新世代のオルタナ・ロック

Interview|陶山良太(PLOT SCRAPS)
美麗なメロディを内包した新世代のオルタナ・ロック

 編集部注目の新人アーティストを紹介する本コーナー。今月は東京都出身の3ピース・ロック・バンド、PLOT SCRAPSを紹介していこう。ライブハウスを中心に活動を続け、コロナ禍でありながら毎年ミニ・アルバムを精力的にリリースしてきた彼らが、満を持して1stフル・アルバム『My FRAGMENTS+』をリリースした。

 幾何学的なアレンジや、鋭利かつ透明感を含んだサウンドを武器にしている彼らだが、特筆すべきなのは、陶山良太(vo,g)が紡ぎ出すギター・メロディの“突き抜けたキャッチー性”だろう。非常にキャッチーなリフが楽曲の主軸として機能する一方、技巧派としての“ギターの見せ場”もしっかりと残している。

 ここでは全楽曲の作詞作曲も担い、そのバランス感を自在にコントロールする陶山に登場願い、彼自身の音楽的なバックボーンから語ってもらった。

取材/文:伊藤雅景
※本記事はギター・マガジン2022年5月号にも掲載されています。

L→R:亀山敦史(b)/ 陶山良太(vo,g)/ もぐ(d)

基本を無視した
無茶苦茶なことをやってました。

 ギターを始めたのは、中学生の頃にBUMP OF CHICKENを聴いたのがきっかけでした。テレビで流れていたライブ映像を観た時、藤原(基央/vo,g)さんのレス・ポール ・スペシャルの音があまりにもカッコよくて衝撃を受けたんです。それと同時に、“俺はギターが向いてるかも”ってなんとなく、でもとても強く感じたんですよね。

 その後、高校進学後に軽音楽部に入って、コピバンとかをやってたら自然と上手くなっていきました。初心者は最初はFのコードでつまづくとよく言われますけど、自分はそういった経験もなくて。その頃からBUMPの藤原さんの影響で色んなジャンルを聴くようになって、メタルにハマった時期は高速ブリッジ・ミュートやスウィープを練習してみたり、サザン・ロックが好きだった頃はブルースマンみたいなプレイ・スタイルを真似てみたり……。そんな感じでギターにのめり込んでいきました。

 でもちょっと不思議だったのが、どこから影響されたのかもわからないノイズ的な音を出すのが初めから好きだったんですよ。なぜか最初から、「こんな音を出したらカッコいいんじゃないか」みたいなアイディアが自然と自分の中にあったので、基本を無視した無茶苦茶なこともやっていましたね(笑)。

 そういった感じで、僕はギターとの関わり方が最初から少し変わっていたところがあったんです。今の自分のプレイ・スタイルの根幹は、その時に培われたんだと思いますね。

 若くして独自の角度で演奏技術を体得していたことがわかったところで、ここからは彼のギタリストとしてのサウンドへのこだわりを聞いていこう。

 音色の面で言うと、レンジ感を凄く意識しています。自分は極端にローを削ったり、ギターだからといってミドルを特徴的に押し出したりするのはそんなに好きじゃなくて。あくまで楽器のポテンシャルを引き出したサウンドメイクを心がけています。それと、ゲインを足した時でも、クリーンのまま歪ませたいという矛盾したモットーがあって。強く歪ませていてもクリーンみたいな分離感というか、コード感を出したいというか……。自分の理想としてるサウンドはそんなイメージなんです。

 ギター・プレイの面ではどういった点を重要視しているのだろうか。

 タイム感をかなり大切にしていますね。例えば、アンサンブルのキメの部分で「ズルッ」と先に突っ込んじゃうようなギター・プレイもあるじゃないですか。ジャンルによってはそれがカッコよく聴こえる時もあるんですけど、自分はそういったルーズ感は出さないようにしているんですよ。細かいキメの場所などは特に音を「点」で出すイメージで、タイトに弾くようにしています。

 今作の楽曲で言うと、「Teardrop」や「リブラ」ではそういったプレイを特に意識して単音のフレーズを際立たせていますね。リード・トーンはボーカルのメロディ・ラインと同じくらい大事な要素だと思っているので、第2の歌のように大事に弾いています。

▲陶山のメイン器はESPのSNAPPER-AS。フロント・ピックアップがハムバッカーに換装されているようだ。内部配線もオリジナルの部分は残っておらず、“好みの音になるまで魔改造を繰り返した”とのこと。

ギターの “オリジナリティ”、
それを凄く大事にしています。

 最新作『My FRAGMENTS+』は美しく整頓されたアンサンブルでありながら、有機的な温かさも感じ取れるサウンドに仕上がっている。その音像の要である陶山のギター・オーケストレーションはどのようにして作り上げられたのだろうか。今作の制作秘話を交えて聞かせてもらった。

 実は今作のギターは、すべてZOOMのG3というマルチ・エフェクターのアンプ・シミュレーターでレコーディングしたんです。前作『INVOKE』(2020年)から、そのやり方が主流になりましたね。家でレコーディングと音色やフレーズを自分が納得いくまで作り込めるので、自分には向いてる録り方でした。フレーズ的に気に入っているところは、表題曲「My FRAGMENTS」の中間のツイン・アルペジオですね。シンプルでわかりやすくテンションが上がるフレーズになっていると思います。「ユクスキュル」のギターは全体的にお気に入りですが、こっちは本当に難しかった(笑)。ややこしい独自の手癖が満載のフレーズになっているので、ぜひコピーしてほしいですね。

 それと、自分流の運指や音選びを突き詰めて取り入れるようにもしていて。例えばスラーをスライドでやるのか、ハンマリングを使うのかの違いでもフレーズの印象って全然変わってくるじゃないですか。譜面的な音階は同じでも、風景がまったく別のものになるっていうか。だからこそ、今作はそういったところも今までより意識しながらギター・アレンジを考えていきましたね。PLOT SCRAPSはギターのオリジナリティがサウンドの要になっていると思っているので、ギター・アレンジは特にこだわっています。こだわるべき場所がわかってきたからこそなんですけど。もちろんギター以外のアレンジでも、しっかり「らしさ」が出ていると思いますね。全パートでひたすらに試行錯誤をして、今作を作り上げていきました。

 最後に彼のギタリストとしての展望を聞かせてもらおう。

 バンドのフロントマンとしては、今まで聴いたことのない新鮮な音や技に出会った時に、「これはどうやって生み出したんだろう?」と常に気にするようにしていますね。プレイヤーとしての今後の展望では、これからも常に新しさを追い求めるギタリストであり続けたいと思っています。あと、自分たちの楽曲をライブで再現できないギタリストにはなりたくないっていう考えも強くありますね。音源で難しいフレーズを入れまくってるんだったら、必ずライブでも最高の熱量で演奏できるようでありたいというか。それに、昨今はギターを弾きまくる感じのバンドが減ってきている気がするので、楽曲が求めないことはしませんが、心情的にはこれからもセーブなし、容赦なしで弾きまくるギター・ボーカルでいたいなと思います。

作品データ

『My FRAGMENTS+』
PLOT SCRAPS

No Big Deal Records/NBPC-0095/2022年2月2日リリース

―Track List―

01. My FRAGMENTS
02. リブラ
03. 告白
04. Teardrop
05. レーゾンデートル
06. ユクスキュル
07. やさしさパラドックス
08. PRAY
09. IRREVERSIBLE OK?
10. 月夜に提灯
11. Cover Story
12. ねがいごと
13. 透命花火
14. Telephone Box
15. pinky
16. FLAWLESS YOUTH
17. タイセツナモノ
18. こころ

―Guitarist―

 陶山良太

ギター・マガジン2022年5月号
『もっと恋する歌謡曲』