Interview|崎山蒼志:後編“弾き語り”への愛とこだわり Interview|崎山蒼志:後編“弾き語り”への愛とこだわり

Interview|崎山蒼志:後編
“弾き語り”への愛とこだわり

独創的な歌詞世界で熱い注目を集める気鋭のシンガー/ソングライター、崎山蒼志が新作『Face To Time Case』を完成させた。アルバムのインタビューに続き、後編では“弾き語りへのこだわり”を語ってもらった。

取材:尾藤雅哉(ソウ・スウィート・パブリッシング) Photo by KEIKO TANABE

弾き語りのライブは
ひとりで道を歩いて
ひとりで物語を作っていく感じ

2021年の4月には、大阪で向井秀徳さんとの弾き語りツーマン・ライブ「白昼ノ響嚥」(服部緑地野外音楽堂)にも出演されました。向井さんとの共演はどのような経験になりましたか?

 間違いなく人生のハイライトというか……今思い出しても凄かったですね。僕にとって夢のような経験でした。僕も“向井さんのように長く音楽活動を続けられたらいいな”とか“力強い音楽を奏でていきたいな”って強く感じました。

改めて共演した日を振り返ってみて、どのようなライブでしたか?

 向井さんの出番が先だったんですけど、JCから出るテレキャスターの音を聴くと、すぐに向井秀徳さんだとわかるんですよね。もうギターの音だけで対峙する人の気持ちをグワッと持っていくし、静かに歌っていてもものすごい迫力があって。本当に心に突き刺さるパフォーマンスでした。

 やっぱり向井さんを始め、「告白」でご一緒させていただいた(石崎)ひゅーいさん、10月に対バンさせてもらったクリープハイプさんは、自分にとって欠かせない音楽のルーツであり、尊敬する方々でもあるので、そういった方々との共演を通じて、僕ももっと頑張らなきゃいけないな”って思いました。本当に貴重な経験でした。

向井さんの演奏を観てプレイヤーとして勉強になったことなどは?

 僕はわりと強いタッチでバッキングを弾くんですけど、向井さんのほうがリズムにエッジが効いているというか……どっしりしているように感じましたね。ミュートのバッキングが強くて、しっかりとしたビートを感じられたんです。

それは“タイム感”的なことですか?

 そうですね。観ていてリズムがすごくカッコ良いと感じました。やっぱり向井さんは“リズムの鬼”だなと。あと……やっぱり歌も無茶苦茶うまい。ナンバーガールやZAZEN BOYSで歌う時のような“シャウトする感じ”もカッコ良いんですけど、弾き語りの時に見せる伸びやかな“柔らかい”歌声も素晴らしいなって改めて思いましたね。爪弾くようなギターでも、歌はハッキリしているというか。

弾き語りをするミュージシャンで、崎山さんがうまさや凄さを感じる人は?

 まずパッと思い浮かんだのは竹原ピストルさんです。初めてライブを観た時に、会場が震えるような竹原さんのパフォーマンスを目の当たりにして本当にビックリしました。例えば“ドン!”と足踏みをすると、本当に会場全体が揺れるような感覚があるんですよ。それに加えて、弾き語りならではの独特のタイム感もあって……中でも「Forever Young」は、聴いていて本当にカッコ良いなと思いました。

 あとは曽我部恵一さん。むちゃくちゃパワフルでしたね。「満員電車は走る」という曲では、電車が迫ってくるような切迫感もギター1本で再現している感じがして……観ている自分が“怖さ”も感じるくらいの迫力でした。

 最近だと2020年の『TOKYO GUITAR JAMBOREE』で拝見した田島貴男さんがヤバかったです。指にスライド・バーを付けてドブロで演奏している姿がめっちゃカッコ良かった。フットストンプを入れながら、めちゃくちゃパワフルで自由自在な演奏をしていて、本当に凄かったですね。

改めて、ギター1本で世界観を描き出す“弾き語り”へのこだわりについて話を聞かせて下さい。

 もともと“1人でもバンドみたいな気持ちでやれたらいいな”と思って弾き語りを始めたんですけど、 最近は色んなミュージシャンの方々とご一緒させていただく機会も増えましたし、それこそバンド編成で自分の音楽を表現できるようにもなってきて。

 ただ、その一方で自分がこれまで続けてきた“弾き語り”の魅力を感じる場面も増えてきましたね。やっぱり自分だけのタイム感で演奏ができたり、抑揚をつけたり、歌詞に合わせてリズムを変えてみたり……ギターと歌だけで呼吸するように演奏できるのが弾き語りならではの素晴らしいところだと思います。

 1人で道を歩いて1人で物語を作っていく、みたいな感じがするんです。僕のスタイルとは異なるかもしれないんですけど、ニック・ドレイクの『Pink Moon』(1972年)のような爪弾く感じの演奏にも惹かれますね。これからも自分ならではの弾き語りの表現を追求していきたいです。

作品データ

『Face To Time Case』
崎山蒼志

ソニー/SRCL-11999/2022年2月22日リリース

―Track List―

01. 舟を漕ぐ
02. Helix
03. 嘘じゃない
04. 告白(崎山蒼志×石崎ひゅーい)
05. 幽けき
06. Pale Pink
07. 逆行
08. 水栓
09. 風来 -extended ver.-
10. 通り雨、うつつのナラカ
11. 過剰/異常 with リーガルリリー
12. タイムケース

―Guitarists―

崎山蒼志、石崎ひゅーい、たかはしほのか、akin、サトウカツシロ、江口亮