プロ・ギタリストのLine 6 DL4活用術 美濃隆章(toe)の使い方 プロ・ギタリストのLine 6 DL4活用術 美濃隆章(toe)の使い方

プロ・ギタリストのLine 6 DL4活用術 
美濃隆章(toe)の使い方

プロ・ギタリストたちが培ってきた“DL4活用術”を教えてもらうこの企画。まず1人目はtoeの美濃隆章。クリーン・サウンドを色彩豊かに調理する美濃にとって、DL4での空間的アプローチは超重要なのだ。本機が発売された2000年にバンドを結成し、その当初から22年間愛用し続けるDL4ラヴァーの使い方とは?

取材/文=福崎敬太
*本記事はギター・マガジン2022年5月号の特集『How To Use DL4?~新機種”MkⅡ”でも使えるプロ5人のDL4活用術』を再編集したものです。

美濃隆章のDL4

バンド歴と同じ22年間をともに過ごす無二の相棒

 2000年に発売されてすぐに入手したというDL4は、同年のtoe結成時にはすでにボードに組み込まれていた。足下からその姿が消えることはなく、22年間で6台を買い換えるほど愛用している。

 ルーパーで使用する以外で、3つのプリセットには[A]にAnalog Echo、[B]にSweep Echo、[C]に最も多用するReverseを登録している。[A]はフィードバックが多めで少しずつこもっていく、ディレイ・タイム500msec程度の設定。[B]は“幻想的なタイミングで4秒くらいしか使わない”そう。

INTERVIEW
“DL4の音”がする1つの楽器という認識ですね。

もう“魔法かな”って
当時は衝撃でした

DL4を買った当時のことは覚えていますか?

 それまではBOSSのデジタル・ディレイしか持っていなかったので、フィードバックとミックスとディレイ・タイムくらいしか知らなかったんですよね。で、テープ・ディレイやエレハモのモジュレーション・ディレイみたいな音も入っていて、もう“魔法かな”って。ディレイだけでこれだけ色んな種類があって、全部違うんだっていうのが当時はかなり衝撃でした。

DL4は2000年リリースで、toeの結成と同じなんですよね。

 そう、だから2000年にはもう持ってました。

22年間のDL4生活の中で、どういう使い方が多かったですか?

 “ギターっぽくない感じで表現したい”というのが常にあるので、Reverseが多いですね。好きなフレーズをパッと弾くだけで、良い感じになるじゃないですか。あと、リバースさせた音をループして、さらに生音も弾くっていうこともしていたので、そういう時は2台つないでいたんですよ。

ルーパーで使う時はモジュレーションなどはかけていますか?

 一切かけないですね。弾いている最新の音がしっかり耳に残るようにMIXは8くらいで、ほかのツマミはゼロです。

ボードにはディレイとしてBOSSのDM-2が入っていますが、使い分けは?

 DM-2は発振専用にしていて、1つはフレーズを弾きながらバックグラウンドで“ヒョヒョヒョ〜”って小さく発振している感じで、もう1つは発振音がめちゃくちゃデカい設定です。で、小さい発振音の設定で物足りない時にDL4でさらにディレイをかけて、発振が“ワッ・ワッ・ワッ……”って2段ディレイみたいな感じにするのはよく使いますね。あとは発振しているのにリバースがかかっていたり。単なるリバースじゃなくて、より深みが出るんですよ。

DL4はレコーディングでも使っているんですか?

 使いますね。ただ、レコーディングだとReverseだけです。ProToolsとかで逆再生してもできるんですけど、なんかつまんないんですよ。キレイに掴んだ小節でひっくり返して再生されるので、想像がついちゃう。DL4で適当に弾いて偶然生まれたフレーズのほうが面白かったりするので、そういうのを大事にしたくて使ったりしています。

toeだと「tremolo+delay」(『the book about my idle plot on a vague anxiety』収録/2005年)という曲がありますよね。

 あれはDL4ですね。Analog Echoの音だと思います。

DL4の魅力とは?

 僕がバンドをやっている期間とも一緒ですし(笑)、この音が僕の中でデフォルトになってるんですよね。デジタルやアナログとか関係なく“DL4の音”っていう感じで、1つの楽器っていう認識があるんですよ。なので、魅力というよりは、ないと困るものになっちゃってます。

ヘンテコな音を色々探って遊びたい

DL4 MkIIはさらにリバーブ機能も入ったんですよ。

 リバーブも15種類? それもディケイとかがいじれるんですか……やばいですね、すぐ買う(笑)。いつも日本だとRE-301(テープ・エコー)とDL4を使っているんですけど、海外に行く時はテープ・エコーを持っていくのは壊れるのも嫌だし重いからレキシコンのモデリング・ペダルみたいのを持っていってるんですよ。DL4 MkIIのリバーブがあれば1台で済みますよね。

DL4の愛用者として“MkII”モデルの感想は?

 僕はDL4がないとライブができないんですけど、Legacyモードがあってそのまま引き継げるっていうのは安心ですね。あと、やっぱり“ギターっぽくない音”を出したいので、Glitchとかヘンテコな音になるやつを色々探って遊びたいなって思います。また自分の中で広がるんじゃないかなって思いました。しかも軽くなりましたし、電源も500mAなのは嬉しい。

My Favorite Setting

“ギター的じゃない”音を生むリバース・ディレイ

美濃がDL4で最も使うのがReverseモード。何年か前にプリセットに登録したため詳細な設定は覚えていないが、ツマミは上の写真ぐらい。弾いたフレーズを少しだけくり返す程度に設定しており、ライブやレコーディングで多用している。リバースしたサウンドが前面に出るように、MIXが上げ目なのもポイントだ。

My DL4 Tune

「F_A_R」
(『Our Latest Number』収録/2018年)

2018年リリースの最新EPに収録された「F_A_R」では、DL4のReverseモードを多用したそうだ。ボーカルのうしろで聴ける、トラックに馴染むようなリバース・ディレイがそれだろう。こういった美濃らしい“隙間を彩る”テクスチャーの作り方は、ぜひDL4でその質感を再現してみてほしい。

美濃隆章

神奈川県出身。海外でも評価の高いポスト・ロック・バンド=toeのギタリスト。レコーディング・エンジニアとしても数々の作品に携わっている。愛器はフェンダー・ジャズマスター。最新作は2018年発売のEP『Our Latest Number』。

Line 6
DL4 MkII

【スペック】
ディレイ・エフェクト数:30
リバーブ・エフェクト数:15
ユーザー・プログラマブル・チャンネル数:6(MIDIコントロールで最大128)
ルーパー最長Rec時間(フル/ハーフ):120秒/240秒(microSDで拡張可)
入出力端子:1/4″イン×2、XLRイン×1、1/4″アウト×2、EXPアウト、MIDIイン/アウト/スルー、USB、micro SD
電源:9V DCアダプター(500mA)
サイズ:235(W)×114(D)×51(H)mm
重量:0.92kg

【価格】
希望小売価格:59,400円(税込) ※価格改定により2023年1月27日に記事内の記載を更新

【問い合わせ】
ヤマハミュージックジャパン Line 6インフォメーションセンター TEL:0570-062-808 http://www.line6.jp

ギター・マガジン2022年5月号
『もっと恋する歌謡曲』

本記事はギター・マガジン2022年5月号にも掲載されています。本号の表紙は野口五郎で特集は『もっと恋する歌謡曲』。山口百恵「プレイバックPart2」、中森明菜 「DESIRE -情熱-」 、西城秀樹「ギャランドゥ」などなど、誰もが一度は耳にしたことのある歌謡ヒット・ソングの中から、最高にカッコいいギター・フレーズを紹介していきます!