Interview|沖聡次郎&山田海斗(Novelbright)ツイン・ギターで彩る壮大な景色 Interview|沖聡次郎&山田海斗(Novelbright)ツイン・ギターで彩る壮大な景色

Interview|沖聡次郎&山田海斗(Novelbright)
ツイン・ギターで彩る壮大な景色

圧倒的存在感を放つ歌声を軸に、壮大なロック・サウンドを響かせる5人組、Novelbright。彼らがメジャー2ndフル・アルバムとなる『Assort』を完成させた。作品には、TVドラマ『真犯人フラグ』の主題歌「seeker」を筆頭に、映画『犬部!』の主題歌「ライフスコール」、アニメ『リーマンズクラブ』のオープニング・テーマ「The Warrior」など、様々な映像作品を彩ったナンバーも収録。バンドとして大きな飛躍を果たした新作アルバムについて、ギタリストの沖聡次郎と山田海斗の2人に話を聞いた。

インタビュー=尾藤雅哉(ソウ・スウィート・パブリッシング) ライブ写真=ハヤシマコ

山田海斗
山田海斗

聴き手に景色を思い浮かべさせられるレベルまで作り込まないと、自分の中でボツになっちゃう(山田海斗)

2021年の『開幕宣言』に続くメジャー2ndフル・アルバム『Assort』ですが、作品制作にあたりイメージしていたものは?

 メジャー1stフル・アルバムとなった『開幕宣言』は、デビューするまでの僕らの活動を凝縮したベスト盤のような存在で、“収録されているすべてがリード曲”という気持ちで完成させたんです。でも今回のアルバムは“これまで出していなかったNovelbright”を表現しようと考えていました。なので、今の自分たちの感性から生まれてきた楽曲をパッケージする感じでしたね。

山田 バンド内でも“新しい要素も積極的に取り組んでいこう”という話をしていたので、今回はバンド・サウンドに電子音を採用してみたりして。今の僕らにできる最大限の表現に挑戦したアルバムです。

確かに、4人で鳴らす音に対して、ストリングスや管楽器、シンセサイザーといった様々な要素をプラスしたアレンジが印象的でした。

 僕はフル・オーケストラのアレンジで曲を作ることが多いんですが、そういう壮大な世界観はNovelbrightにすごく合うと思っていて。小さな会場で演奏していたインディーズの頃から、アリーナ規模の会場で鳴り響く音楽を意識して曲を作っていました。常に“自分がなりたい未来の姿”をイメージしているので、今回も自分が見たい景色に合わせて曲作りに取り組んでいましたね。

 あと僕らって、最初に色んな楽器の音をテンコ盛りに入れるだけ入れて、そこから音を抜いてアレンジを完成させていくこともあって。その時に違う楽器の音がぶつかって響きが濁ったり、音楽理論的に破綻しているようなところがあっても聴感上で問題なかったらOKだし、もしも理論的に合っていても聴感上でカッコよくなかったらフレーズを変えることもありますね。

思い描いたイメージを形にする際、どのようなことを考えているのですか?

 おもにイメージは景色や色彩で感じることが多いです。頭の中に流れる旋律を形にするというよりは、頭の中に情景を思い浮かべて“それにはどんな音が必要なんだろう?”って考えながら、曲に一番合った表現方法を選択していくことが多いです。

山田 もともと僕らの曲作りの仕方ってメロディ先行ではないので、まずはバック・トラックだけで聴き手に景色を思い浮かべさせられるレベルまで作り込まないと、自分の中でボツになっちゃうんですね。僕が曲を作る時のイメージとしては、自分で仮タイトルを決めて、“Aメロやったらこういう情景で、Bメロで違うキャラを登場させて、サビで主役が入れ替わって……”みたいなことを想像しながら作っていく感じです。

バンドにデモを持っていく前の段階からこだわっているポイントなんですね。

 そうですね。あと僕が作る曲では、最初に最低限のバッキングを入れたあとはもう、“お任せします”って海斗君に丸投げすることが多いんです(笑)。というのも、ギター以外の楽器をたくさん入れた完成形に近い状態までアレンジを仕上げていることが多いので、味付けには別のインスピレーションが欲しいんですよね。

海斗さんはその要望に対してどのように応えていくのですか?

山田 そうですね……まずは曲を聴いて感じたインスピレーションをもとに情景を思い浮かべながらフレーズを考えていくことが多いかな。

とはいえ、主旋律を担当できる楽器が多いとアンサンブルの中でギターを鳴らせる帯域は限られてきますよね?

 そうなんです。意地悪をしているわけじゃないんですけどね……(苦笑)。バンドで一番大事にしているのはボーカルなんですけど、そのメロディ・ラインへのカウンターとして鍵盤やストリングスが重なっていくような、オーケストラとロックを融合させた王道アレンジに対して、海斗君がギターでさらにカウンター・メロディを突っ込んできてくれる時があって。“まだ別のメロディを重ねられるんだ!”って時は、作曲者としてすごく気持ち良い瞬間なんですよね。それがいつも楽しみで、ついつい無茶振りをしてしまうんです(笑)。

そこで自分の想像を超えたバンド・マジックが起こり、アレンジが完成すると。

 はい。なのでいつもギター録りの前日に“すみません、遅くなりすぎました……”って(苦笑)。でも海斗君は、毎回素晴らしいアイディアで楽曲に彩りを加えてくれるんです。凄く大きな安心感がありますね。

山田 僕としては楽しんでやっていますよ。ただ、音源を渡されるのがレコーディングの直前なので、いつもギリギリまで悩みながらフレーズを作り込んでいます。今回だと、「ファンファーレ」や「seeker」のようにストリングスが入っている曲は大変でしたね。特に「ファンファーレ」では管楽器も鳴っていたので、もう“ギターは何もしなくていいんじゃない?”って思ったくらい(笑)。

「Okey dokey!!」や「ファンファーレ」を聴いた時、歪んだハムバッカー・サウンドは壮大な世界観のアレンジとの相性が良いようにも感じました。

 確にそうかもしれないですね。最近は、音数の少ないタイトなアンサンブルが流行っているなって印象もあるんですけど、このバンドではずっと逆張りをしているというか……。自分の中から自然と出てきちゃうから仕方がないんですけどね。自分の中で鳴っていない音楽を無理矢理アウトプットしても“あんまりよくならないな”って思っていて。それよりも自分の中から素直に生まれてきたものがファンの皆さんに気に入っていただけたり、今という時代に選ばれるといいな、って感覚で作っています。

インストの「Anima」は、ライブでフロアの熱をガツンと上げてくれるアッパーなロック・チューンです。

山田 これは作っていて楽しかったですね。自分たちのやりたいことをやっているだけなので、すぐに完成しました(笑)。

 ほかのメンバーもラウドロックで思春期を過ごしたヤツばかりなので(笑)、この曲のデモが上がってきた時はめちゃくちゃテンション上がりましたね。バンドを始めた16~17歳くらいのキッズの頃、しこたまこすり続けたようなフレーズなんかも弾きましたし、ダウン・チューニングのバッキング・リフといった要素はこれまでのNovelbrightではあまり出せていなくて。こういうハードなロック・ナンバーを令和の時代に鳴らすことができるというのは、なかなか面白いんじゃないかと思います。爆音でギターを鳴らしてレコーディングしたんですけど、ブースが揺れてましたからね。凄く楽しかったです。

バンド・アンサンブルにおけるギター2本の役割について、それぞれどのように考えていますか?

山田 僕たちはそれぞれがリードを弾くし、それぞれがバッキングを弾くし、エレキもアコギも使い分けるんですけど、そういうギタリストが2人いることでアレンジにも幅が出せるし、色んな表現ができると感じています。

 僕の場合、2本のギターに関しては第一バイオリン、第二バイオリンのような考え方をしていて。ユニゾンするし、オクターブで重ねるし、バッキングにも回るし、別メロで絡み合ったりもする。そんなイメージでギター・パートを考えていますね。

山田 あと、“それをあえてギターでやるの?!”みたいなアプローチもたまにやりますね。ギターのフロント・ピックアップを使ってフルートのような音色を作ってみたり、DJのスクラッチ音を表現してみたり。

 “ちょっとハミ出すくらいなら、思い切りハミ出していこう”ってことは多いですね。

トム・モレロ・イズムというか(笑)。

山田 そうそう(笑)。やっぱりギタリストとしての自分は1980~90年代のロックで作られているので、Novelbrightは歌モノ・バンドではあるんだけど、そういった自分のルーツは大切にしたいんですよ。あと、個人的にギターという楽器は、バンドにおいて“ふりかけ要素”だと思っていて。ベースとドラムがお茶碗で、ご飯がボーカル、ギターはふりかけ。別にふりかけがなくても食べれるんだけど、お米をさらにおいしくする役割というか。メインの主食を邪魔するわけにはいかないので、僕はまた“あのふりかけでご飯を美味しく食べたいな”と思わせるような演奏をするようにしていますね。

沖聡次郎
沖聡次郎

強烈な自己顕示欲みたいなものがギターへと置き換わることでものすごくカッコよくなる(沖聡次郎)

つい先日、Twitterで“曲を聴く時、ギター・ソロはスキップする”という話題がトレンド入りしていましたが、お二人にとってギター・ソロとは?

 ギター・ソロには2種類の役割があると考えていて。1つは、曲をつなぐ役割。ラストへ向けて展開を盛り上げていくためのブリッジ・パートとしての重要なセクションだと思います。

 もう1つは“完全にギタリストのエゴ”。楽器を手に自分を表現するうえで、そういったエゴはとても重要だと感じていて。強烈な自己顕示欲みたいなものがギターへと置き換わることで、ものすごくカッコよくなる。やっぱりギター・プレイヤーとしては、自分のカラーを表現できるセクションの1つだと思いますね。

山田 僕も同じ考えですね。ソロの部分を飛ばしてもらってもいいですけど……できれば聴いてほしい(笑)。やっぱりソロも含めて1つの作品なので。

 そうそう。作り手としては、“曲全体を聴いてほしいな”って思います。

山田 RPGで例えるなら、今いる草原から山を越えた先に見える城へ向かう途中にある洞窟みたいな場所というか。なので“ここを飛ばしたら、どうやって目的地に行ったんだろう?”って感じになっちゃう。だからこそ必要だと思いますね。

改めて、レコーディングで使用した機材について教えて下さい。

 僕はサゴ・ニュー・マテリアル・ギターズ(Sago New Material Guitars)で作ってもらったShinra [四季]と百式というシグネチャー・モデルがメインですね。あとはギブソンのES-335、エキゾチック(Xotic)のSTタイプ、ミュージックマンのLUKE III。アコギは、コルドバ(Cordoba)のエレガットです。

 アンプはボグナーのEcstasy、メサ・ブギーのTriple CrownとDual Rectifierなどで、基本的にはギターから直接プラグインして鳴らしています。ライブではマーシャルのJCM900です。音が好きなんですよ。

海斗さんは?

山田 僕は、ジミー・ペイジが使用していたレス・ポールをできるだけ再現したギブソン・カスタムショップ製のレス・ポール・カスタムがメイン。ハムバッカーが3つ搭載されたビグスビー付きのモデルですね。ほかにはナッシュ・ギターズ(Nash Guitars)のSTタイプとRSギターワークスのTeeByrd、71年製のレス・ポール・デラックスなんかをちょこっと使いました。アコギはエピフォンのTexan。

 アンプは、ボグナーのShivaやフリードマン、サー(Shur)のBella。Bellaがクリーン・アンプなので、歪ませたい時にはサーのEclipseを使いました

最後に、アルバム制作を振り返って一言お願いします。

 今のNovelbrightがやりたいことをしっかり落とし込むことができたアルバムになったと思います。

山田 今、聡ちゃんも言ってたように、違う味のNovelbrightを体感できる作品になっていると思います。すでにライブでやっている曲もあるんですけど、ライブはまた違った印象を受けると思いますね。6月23日と24日には、ツアー・ファイナルとなる武道館公演も控えているので、ぜひ観に来てもらえたら嬉しいです。

Novelbright
Novelbright。左からねぎ(d)、圭吾(b)、竹中雄大(vo)、山田海斗(g)、沖聡次郎(g)。

作品データ

『Assort』
Novelbright

ユニバーサル/UMCK-1712/2022年5月18日リリース

―Track List―

01. Okey dokey!!
02. ファンファーレ
03. seeker
04. ワンルーム
05. 愛とか恋とか
06. 戯言
07. ライフスコール
08. Anima
09. The Warrior
10. Kii-Kii Cat
11. 優しさの剣
12. Too Late
13. 流星群

―Guitarists―

沖聡次郎、山田海斗