Interview|マツキタイジロウ(スクービードゥ)20周年に生み出した『Tough Layer』の色彩豊かなギター Interview|マツキタイジロウ(スクービードゥ)20周年に生み出した『Tough Layer』の色彩豊かなギター

Interview|マツキタイジロウ(スクービードゥ)
20周年に生み出した『Tough Layer』の色彩豊かなギター

1995年の結成以来、ファンクとロックを融合させた独自のバンド・サウンドで全国各地に熱狂を巻き起こしている4人組、スクービードゥ。彼らがデビュー20周年を記念した新作アルバム『Tough Layer』を完成させた。グルーヴィなアンサンブルに力強い歌声が映える快作に仕上がっており、中でもジャジィなアプローチで楽曲を華やかに色づけるギター・プレイは要注目! すべての楽曲を手がけるギタリストのマツキタイジロウに作品制作を振り返ってもらった。

取材:尾藤雅哉(ソウ・スウィート・パブリッシング) 写真=石垣星児

レコーディングではピックを弦に当てる回数まで意識しながら弾きました

今回の作品制作にあたって、バンドではどんな作品にしようと考えていましたか?

 基本的に、いつも“次はどういうアルバムを作ろう?”みたいな話は一切しないんです。まずは僕が“こういう曲をやりたい”というデモを作り、それをメンバーに渡すことで作品全体のコンセプトというか、イメージを伝える感じですね。

マツキさんがバンドでやりたいことを、デモを通してバンドで共有するんですね。

 そうですね。とにかく音を聴いてもらって、みんなが“どう感じるか?”ってことがすべてなんです。今回、僕の中のイメージとしては、聴いた人に“一緒に歌ってみたい”と思ってもらえるような、キャッチーなメロディがたくさん入ったアルバムにしたいと考えていました。今の時代、バンド・サウンドでありながらポップな音楽に貫通力があるように感じていて。自分の直感ではあるんですけど、僕らの生々しくて荒々しいガレージ寄りのバンド・サウンドにポップなメロディを乗せたもの……そういう楽曲に突破力がある気がしたんです。

 あと、前回出したアルバム(『Have A Nice Day!』/2019年)では、アフロ・ビートや変拍子を多用していて、それはそれでリスナーにバンドの姿勢を訴えかけていくような作品だったと思うんですけど、今回はもう少し聴く人に寄り添うような楽曲がいいんじゃないかなって。

では、デモを作っている時点で想定していたものを、超えていったようなことはありましたか?

 バンドで“ドン!”と鳴らした時点で、僕の想像以上でした。僕のデモはあくまで設計図のようなもので、メンバーがどんな曲かわかってもらうためのスケッチに近い感じですね。それから時間をかけて念入りにレコーディングしますけど。もちろん“ここは何としてもこうしたい”っていう部分は必ずありますが、基本的には各メンバーにお任せしています。やっぱりみんなで演奏して、(コヤマ)シュウ君(vo)が歌ってくれた瞬間にSCOOBIE DO(以下、スクービー)の音楽になるなってことは毎回思うし、いつも自分の期待よりも絶対に良い作品になりますから。

曲はどのように作り込んでいったのですか?

 最初にシンプルなビートとベース・ラインを作るんですけど、リズム隊だけで楽曲のグルーヴ感を構築してからギターのアプローチを考えていく感じです。

 スクービーはファンク、ソウル、ブルースがルーツにありながらも、やっぱりロック・バンドなんですよね。もし管楽器や鍵盤もいる大所帯のバンドだったら僕も細かいカッティングをすると思うんですけど、これまでの経験上、4人のバンドでカッティング主体のギターにしちゃうと、ノリが小さくなってしまうんですよ。

 そこで今回は、少し大雑把にギターを置いていくことを心がけました。上モノの楽器がギターしかないこともあって、できるだけシンプルにしたくて。なのでレコーディングの時は、ギターで余分なリズムをつけないように、ピックを弦に当てる回数まで意識しながら弾きました。ギターを弾いていて気持ちいいところを求めていくと、どうしても細かくなってしまうので。

かなり自制しないといけないんですね。

 そうなんです。カッティングしようと思ったらいくらでもできるんですよ。例えば別のアーティストのレコーディングやライブに参加する時は別ですけど、スクービーに限っては、ギターという楽器は、“ドラムとベースが作ったリズムを増幅させる役割”だと考えています。それは活動を続けてきた中で気づいたことでもありますね。

複数本ギターが入っていますが、それぞれの役割は?

 基本的には、大きなグルーヴを作るためのバッキング・ギターが僕の中ではメインです。それに対して単音フレーズを重ねることが多いんですけど、そっちはもう完全に自分の好み(笑)。メロディを奏でながらコード感も補強しつつ、曲に華やかさを加えていくのが目的ですね。

 中には管楽器のようなフレーズも入っていて。やっぱりギタリストが聴いた時に“何をやってるんだろう?”って気になるようなフレーズを入れたかったんです。コードのテンション・ノートを追いかけながら、ホーンや鍵盤の代わりになったりメロディの代わりになったり……もう1本のギターが鳴っていることで、すごくカラフルに聴こえるようにしたいと思っていました。

そういう場合、具体的にはどのようにアプローチしていくのですか?

 コードの響きを追いかけながら、バシッとハマるフレーズが見つかるまで弾き続けます。弾き続けると必ず見つかるんですよ。そこにたどり着くまでが大変なんですけど、それが僕の楽しみの1つなんですよね。難しくしようとは思ってないんですけど、ちょっとテクニカルなフレーズを入れて、簡単にはコピーできないようにしたいとも思っていました。

「今日の続きを」では、歌のバックで別のメロディを歌うようなフレーズが耳に残りました。

 そこを聴いてもらえると嬉しいですね。昔だったら隙間を埋めたり、コード感を豊かにしようとしていたと思うのですが、今回は複数のギターを音数少なく1本にまとめて、なおかつ豊かに聴こえる感じを目指しました。「スピード」のメイン・テーマも同じ作り方ですね。少し歪ませたギターでコード・トーンを追いかけているだけなんですけど、緊張感や曲の広がりを出すことができたように思います。

 ジャズ・ギターを学んだことで曲やメロディの作り方が変化してきました

ギターの音作りはどのように?

 メイン・ギターは、ギブソンのES-350Tというフルアコで、ボディが薄いのでフルアコとセミアコの間のような独特の音色が出せるんです。箱モノのギター特有の甘い音と、少しキーンとくる硬質な倍音成分がある。それらをうまいこと使って音を作れないかと日々研究しています。

 さっきも話したように、ファンクやソウルが自分のルーツにはあるんだけれども、やっぱりロック・バンドとしての表現ができるようになりたいと思っていたので、アンプを少しドライブさせたクランチ気味のサウンドで、箱鳴りがしっかり聴こえてくるようなサウンドを考えていました。それが僕の個性だし、スクービーのアンサンブルの個性でもあるので、すべての曲でES-350Tを使っています。

 以前は曲に合わせてどのギターを使おうか考えたりしていましたけど、今回はもうES-350Tが中心ですね。自分の音はこれなんで、ES-350Tのサウンドをどのように楽曲に順応させるか?ってことを考えていました。

ES-350T以外で使用したギターは?

 いくつかのパートでストラトを使いました。個人的にフルアコとストラトの相性は凄く良いと思っていて。フルアコにない部分をストラトが補ってくれるので、その2本を組み合わせて使うことは凄く多かったです。

「悲しい夜も」では、デイヴィッド・T・ウォーカー的なオブリも耳に残りました。

 デイヴィッド・T・ウォーカーが凄い好きで、いつも彼のようなギターを弾きたいなって思っているんです(笑)。ES-350Tで弾いてるんですけど、サウンドが甘くなりすぎないように気をつけました。ドラムがしっかりとビートを刻んで曲を進めてくれるので、ギターは曲を進ませないように“引き止める”イメージで演奏しましたね。

「正解Funk」では、ジャズ・アプローチのギター・ソロが印象的です。

 この曲のソロはちょっと変態的なコンディミ使いというか……ジョン・スコフィールドみたいな感じを意識しました(笑)。僕自身、ジャズの素養があったわけじゃありませんが、ここ数年ずっとジャズ・ギターを独学で学んでいて。学べば学ぶほど、どんどん音楽理論が理解できるようになってきたんです。ジャズの要素をバンドに落とし込もうとは思っていないんですけど、曲作りの時にメロディの運び方やオブリの組み立て方なんかに、もの凄く役に立つんですよね。

ジャズ・ギターを学ぼうと思ったきっかけは?

 6年くらい前にオリジナル・ラブのイベントに誘ってもらって、そこで田島(貴男)さんとセッションしたんですけど、そこで田島さんから“マツキ君はジャズ・ギターを習ったらいいよ”って言われたんです。少し勉強をし始めたタイミングだったんですけど、田島さんに直接言われたからには本気で取り組もうかなと思って……それがきっかけですね。そしたら過去の自分が作ってきた曲の構造や、なぜこのフレーズを弾いたのかってことがどんどん理解できるようになってきて。

感覚でやっていたものがちゃんと説明できるようになる感じでしょうか?

 まさにそうです。そうやって色んなことがつながっていくのがもの凄くおもしろくて、それが自分の曲作りにもどんどん活かされていくんですよ。以前だったら“こっちでいいか”みたいに曖昧に誤魔化してたところが、理論で判断できるので作り出すメロディもけっこう変わってくる。自分が作るメロディが変わってきてるっていうのは、今回凄く実感したところですね。

ボーカルのコヤマさんから、そのような変化について何か指摘されることは?

 そういう話は全然ないですね。でもシュウ君も、ここ数年で自分のボーカルを見直していて……僕が偉そうに言うのもなんですけども、凄く歌がうまくなったと感じています。とにかくピッチが正確になってきたので、以前だったら”こういうラインは歌いづらいかな”って回避していたようなメロディも彼に渡すようになったんですけど、ちゃんとそのメロディを乗りこなしてくれるんです。27年も活動してきて、“まだバンドの伸び代があったのか!”って嬉しくなっちゃいました。

色んなコードの使い方を知っていると、メロディの彩り方にも幅が広がりそうですね。

 そうですね。ひょっとしたらコードの響きを音色のようにとらえているのかもしれません。よくあるコード進行でも、テンション・ノートで着地させる音を変えることでフックをつけることができますからね。そういう部分で、自分も少しずつ成長できてるかなってことを実感しています。

そうなると、これからもずっとギターを楽しみ続けられそうですね。

 そうですね。ジャズ・ギターを学べば学ぶほど、“死ぬまでずっとギターで遊べるじゃん!”って(笑)。“なんて面白い遊び道具を見つけたんだ!”みたいな気持ちになりましたね。そう考えると、42歳で死んじゃったウェス・モンゴメリーに対しても、“短い期間でどうやってあのテクニックを身につけたんだ?”っていうことにも気づいて愕然としました(笑)。ギタリストとしてのキャリアをスタートしたのが26歳くらいなので、20年も経っていないんですよね。

マツキさんの場合は、純粋なジャズ・ギタリストではないからこその視点がプレイヤーとしてのオリジナリティにつながっているんでしょうね。

 もともとジミヘンのようなブルース・ロックやローリング・ストーンズみたいな60年代のブリティッシュ・ビート、ガレージ・ロックが好きでギターを始めたので、ペンタトニック・スケールが弾ければなんとかなるって考え方で何十年も過ごしてきたんですよ。そんな中でもデイヴィッド・T.ウォーカーやブライアン・セッツァーも好きで……ロック・ギタリストでありながら、いろんなルーツを感じさせるようなプリミティブなエレキ・ギター奏者でいたいなってことは強く思っていますね。

改めて、制作で使用した機材について教えて下さい。

 先ほど話したとおり、ギターは1980年製のギブソンES-350Tがメインです。シンラインのTがモデル名のお尻につきます。手に入れてから、かれこれ20年以上使っていますね。

 もう1本は、日本製フェンダーのストラトです。92年くらいのモデルですね。ピックアップを、ジョン・メイヤー・モデルと言われるJazzy Catに交換しています。

アンプは?

 アンプは、PEACE MUSICの中村(宗一郎)さんに借りたフェンダーの改造TWIN REVERBですね。凄く音抜けが良くて、この1台をひたすら使いました。

制作を振り返って一言お願いします。

 凄くキャッチーでポップな作品なんですけども、最近ではあまりない生々しいバンド・サウンドが収録されています。楽器をやってる人、バンドをやっている人には、凄く面白く聴こえる1枚に仕上がったと思います。アルバムを聴いて、ぜひ音を生で体感しにライブにも来てほしいですね。

作品データ

『Tough Layer』
SCOOBIE DO

ビクター/VICL-65726/2022年8月24日リリース

―Track List―

01. 明日は手の中に
02. 今日の続きを
03. その声を
04. GEKIJYO
05. 悲しい夜も
06. 成し遂げざる者のブルース
07. スピード
08. 光の射す道へ
09. 正解FUNK
10. 荒野にて

―Guitarist―

マツキタイジロウ