マンソン・ギター・ワークスについて筆頭株主マシュー・ベラミー(ミューズ)が熱く語る マンソン・ギター・ワークスについて筆頭株主マシュー・ベラミー(ミューズ)が熱く語る

マンソン・ギター・ワークスについて
筆頭株主マシュー・ベラミー(ミューズ)が熱く語る

アンディ&ヒューのマンソン兄弟が立ち上げ、弟ヒューによるエレクトリック・ギター部門が独立して現在の形となった、イギリスの“マンソン・ギター・ワークス”。ミューズのマシュー・ベラミーは、2000年代に自身のアイコンとなるアルミニウム製ギターをヒューに作ってもらったことから、長く彼らのシグネチャー・アーティストとして活動してきた。そして2019年にヒューが引退すると、その意志を引き継ぐためにマシューは同社の筆頭株主にまでなったのだ。ここではマシューにマンソン・ギター・ワークスへの愛を語ってもらった。

Word by Amit Sharma. This article is translated or reproduced from Total Guitar #363, September 2022 and is copyright of or licensed by Future Publishing Limited, a Future plc group company, UK 2022. All rights reserved. 翻訳=トミー・モリー Photo by Angel Marchini/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

マンソン製のギターによって、自身のアイデンティティを作ることができたんだよ。

あなたはマンソン・ギターズのシグネチャー・アーティストとして20年ほど活動してきて、今や筆頭株主となりました。あなたの音楽において、彼らのギターはどのような役割を担ってきましたか?

 僕が育った場所の近所にマンソンのショップがあって、彼らは販売だけじゃなくて製作も行なっていたんだ。当時は両方を同じ場所でやっていたんだよね。あのメインの通りにはいくつかのギター・ショップがあったけど、彼らの店が最も本格的に感じられたんだ。

 店に入っていくと目の前で実際の製作やちょっとした修理が行なわれていた。彼らが作る楽器には精巧さや頑丈さがあって、これが僕にヘヴィな音楽をプレイさせていくこととなったんだ。

 そもそもストラトキャスターを手に取る時、僕はブルージィなものを演奏しがちだった。どうプレイしてもエリック・クラプトンやジミ・ヘンドリックスの系譜にあるものを弾いてしまうんだ。だから、何か新しいものを作り出している感覚にはならないんだよ。ミューズでは、ロック・ミュージックの発明やその後の時代を超越するようなものを作りたいと願っていた。僕らは新しいものとなるために、何か際立ったものを作るためにトライしなければならなかったんだ。

ギブソンのギターはどうでしょう?

 ストラトキャスターと同じように感じるね。やはりレス・ポールを手にすれば、いつだってレッド・ツェッペリンのリフをプレイしてブッ飛んでしまうよ(「Heartbreaker」のリフを口ずさむ)。それに僕はブルースを卑下しているわけじゃないんだけど、ブルージィさって何なのかがわからなくてね。僕がプレイしても“なんとなく昔に聴いたことのあるようなもの”にしかならないから、それが良いことのようには思えなかったんだ。僕はユニークなサウンドを開拓したかったんだよ。

マンソンのギターではそうはならなかった?

 僕はヒュー・マンソンと90年代後半に仲良くなり、彼が作ったギターを手に取る時はいつも、フェンダーやギブソンのギターでプレイしてしまうようなレトロなリフを弾いていないことに気がついた。それに彼は僕が望むどんなギターも作ってくれると約束してくれたから、僕はエフェクト・ペダルの回路やカオスパッドを内蔵することについて考え始めた。シェイプやフィニッシュまで含めて、僕がやりたいことが実現できた。彼が作るギターによって自身のアイデンティティを作ることができたんだよ。

ほとんどすべてのアルバムで使ってきたということが、それを物語っていますね。

 唯一僕がマンソンのギターを使わなかったのって、1stアルバムの『Showbiz』だと思う。当時はお金が払えなかったからね。ただ、十分な金が手元に入るようになり、僕はすぐにマンソンを購入したよ。2ndアルバム(『Origin of Symmetry』/2001年)の「Citizen Erased」で使った7弦ギターを買ったんだ。

 それからさらに稼いで、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出てくるデロリアンをモチーフにした、アルミニウム製のギターをオーダーしたんだよ。あのギターには、フェイザーやトム・モレロみたいなキルスイッチも搭載してもらったね。正直なところ、あのギターがなかったら「Plug In Baby」を僕は作曲していなかっただろう。あのギターを手に取った時にヘンなものが生まれてきたんだ。

新しいアルバム『Will Of The People』(2022年)でももちろん使っていますよね?

 あぁ。「Won’t Stand Down」と「Kill Or Be Killed」では、ファンフレットでマルチ・スケールのマンソンをプレイしているよ。

新しいギターだと思いますが、マルチ・スケールはあなたにとって新しい試みですよね?

 そうなんだよ! こういうギターだとスケール長があることによって、ダウン・チューニングした6弦ギターだとダルダルになってしまうようなリフも、かなりガツンと響かせられるんだ。一方で、それと同時に「Won’t Stand Down」で聴けるような、高いポジションでのレゲエっぽいコードも弾けてしまう。

マンソンのギターから新しい楽曲が生まれてきたんですね。

 僕が望むギターを発明して作れるっていうことに、ミューズが進んでいく方向は大きく影響を受けたよ。少なくともギターという観点においてね。これまで僕らはとても近しい関係を保ってきたし、僕のギターのほとんどがマンソン・ギターズによるものだからさ。その中でも数本はステージ上で投げつけてきたけどね(笑)! 約5年くらい前にヒューは引退することにしたけど、次のステージをどう進めていくか相談するために僕のところにきたのは、自然な流れだったよ。

作品データ

『Will Of The People』
ミューズ

ソニー/SICX-30148/2022年8月26日リリース

―Track List―

01. Will Of The People
02. Compliance
03. Liberation
04. Won’t Stand Down
05. Ghosts (How Can I Move On)
06. You Make Me Feel Like It’s Halloween
07. Kill Or Be Killed
08. Verona
09. Euphoria
10. We Are Fucking Fucke

―Guitarist―

マシュー・ベラミー